2012年2月25日土曜日

何をしているかというと・・・ ビデオレビュー

何をしているかというと・・・
これは、ビデオレビューの様子。

医師の外来診療の教育は、案外自己流に傾きがち!
なぜなら、そもそも外来診療自体が伝統的に(悪い意味で)ぶっつけ本番で修得するものという風潮があったからだ。
「コンピュータばかり見ていて」とか「話を聞いてくれない」とか「横柄な態度」とか「専門用語ばかりで話が理解できない」とか、逆に「医者が小声で暗くて・・・」とか“コミュニケーション能力に難あり”と指摘される医師が存在することはよく耳にするが、そもそも元来、医師に対するコミュニケーション能力向上ための教育の機会は皆無に近かったので、これはある程度無理からぬことなのかもしれない。

それにしても、医療コミュニケーションや診断における窓口にあたる外来診療のノウハウの教育がオザナリとは、利用者である患者さんやご家族にとってなんとも不幸なことである。
現在は、医学部の卒前教育の段階から、医療面接の方法や基本的診察技術が重要視されつつあるが、実際の医療の現場では、外来診療の教育はなかなか容易ではない。
理想を言えば、マンツーマンで先輩の技を盗むのが、短時間で適切なマネジメントを要求されるアートの担い手。つまり外来職人を育てるのには良いのかもしれないが、地域医療を担う医師が不足している現状では、贅沢に指導医を配置できる施設は限られる。
これらを補うために、診察の合間に指導医と短時間相談できる体制を敷いたり、外来診療で得られた貴重な経験を外来カンファランスで同僚と共有したりして、より効率よく学べるように工夫している。
そういった教育ツールのひとつとして地域・家庭医療学講座が取り入れているものにビデオレビューがある。
方法はいたってシンプルで、患者さんに同意を得た上で、診察の様子をビデオ撮影する。
あとは、医師はいつも通りに診察し、患者さんはいつも通りに診察を受けるだけ・・・
そうは言っても実際は、医師はいつもより素敵にやろうと努力する(かっこつける)し、患者さんも少し緊張する。
そうして撮影したものを、あとでみんなで鑑賞し、あれこれ教育的に議論するわけである。
他の教育方法にないビデオレビューの良い点は、担当医師本人が自分の診療を見ることができること、普段見ることのできない同僚の診療風景を見ることがてきること、そして参加者が感想を言葉として表現することで自分一人では気付かない他者の考えを共有することができること。
「へえ~・・・こんな風にしてるんだ~」
と本人も同僚も興味深く見ることが多い。
撮影時にどうしてもかっこつけてしまうこと自体にも意味がある。
理想の診療に近付けようと努力(背伸び)することは、成長に欠かせないからだ。
たとえその時はうまく行かなくとも、背伸び(努力)し続ければいつか必ず本当に伸びるからだ。
理想の家庭医を目指し、修行の日々である。

0 件のコメント:

コメントを投稿