2015年8月24日月曜日

ステテコ、フンドシもOK? 「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2015」


 2015822日・23日、夏も終わりに近づいた週末の両日。
2006年から福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の主催で毎年おこなわれている「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2015」が開催されました。
今年は記念すべき10年目の夏!
栄えある開催地となったのは我らがいわき市!
そして会場はかしま病院。
私の記憶が正しければ、いわき開催は2011年以来4年ぶり!
オリンピック並みの待ち遠しさで、ホストとして「おもてなし」の準備してきました。わたくしではなく、主に同僚の専攻医らがですが、、、(笑)
やっぱりサマー・フォーラムは通常のレジデント・フォーラムとは違い「夏祭り気分で参加して欲しい」という思いから、ドレスコードを浴衣もハッピも甚平、アロハやステテコ、フンドシもOK
ということにしました。
さすがにステテコやフンドシ姿の強者は現れませんでしたが、カジュアルな雰囲気で始まりました。
それにしても、今回のアイスブレイクのワークミッションがなかなか難しかったです。
「自己紹介を進めながら、他のチームとかぶらないように、チーム全員の共通点を見つけ出し、チーム名を決定せよ!」
知恵を絞り出してようやくたどり着いた共通点とは…
時間いっぱい使って「iPhone(あいふぉん)」ならぬ「iPone酒(あいぽんしゅ)」というチーム名となりました。
チーム全員が iPhone ユーザーかつ日本酒(ぽんしゅ)好き! ということが判明したのです。


 さあ、初日のメインプログラムは、家庭医が日常診療で持った疑問をどのように解決するかをその場で実体験してもらおうという医大スタッフによる企画「その場で解決! EBMライブ!」
とかく「EBMは質の高いエビデンスを見つけ、目の前の患者さんたちに片っ端から適用していくことである」という風に誤認されがちですが、目の前の患者さんにぴったりあてはまる都合の良い研究は意外に少ないので、エビデンスを患者さんに適用するか否かは、患者さんの背景や価値観や、自身の臨床経験などを考慮して、慎重に判断する必要があります。
EBM5ステップを再確認しながら、各チーム内で挙げられた臨床上の疑問を教材に、限られた時間で問題解決できるように取り組む参加者の真剣なまなざしが印象的でした。
予想通り、患者中心の医療の方法を鑑みるに、既存のエビデンスを無条件に適用できる場合がいかに稀かを、参加者の多くが理解できた様子でした。



そして、初日のお勉強が終わったら、お待ちかねの今回の目玉 特別企画!
2015NHKのど自慢グランドチャンピオンで、いわき市の名誉市民に認定された石井敦子さん、雅子さん姉妹と、そのご家族らが、サマー・フォーラムに来てくださいました。



とは言っても、ただただ民謡を鑑賞するだけでなく、唄って踊って(太鼓を)叩いて、、、
そしてせっかく教わった踊りは、本物のお祭りで実践!!!


というわけで、近所のお祭りに盆踊り要員として集団乱入!!!



みなさん狂喜乱舞し、いわきの夏の夜を存分に楽しんでおられる様子でした。



踊った後は、勿論お酒が旨いですね。


「家庭医は夜つくられる」
というわけで、宴の場を三崎公園の宿舎に移し、熱くて暑くて、ぶ厚い夜は更けていくのでした。


さて、どこからが2日目なのかは定かではありませんが、朝起きると何とか台風直撃を免れた小名浜、、、
荒々しい波を眺めながらちょっとだけジョギング。




 さて、2日目のメインプログラムは 「患者中心の医療の方法」の一部であるEBM(主に診断)を「ドクターG」的に丁寧に考えた後に、それだけでは終わらない「家族志向ケア」の意味するところを深く掘り下げるレジデント企画ワークショップ!
家族会議のVTRを観てからのディスカッションでは、どのチームでも予想通り、いや予想以上の盛り上がりをみせていました。
臨床推論の面白さ、家族と関わることの重要性や家族もケアの対象であること、そして家族志向ケアそのものの楽しさを多くの参加者の皆さんに理解していただけたのではないでしょうか?




最後のセッションは葛西主任教授によるCinemeducation
今回の題材となった映画は「Ivory Tower(学歴の値段)」 2014年
非営利的な高等教育機関である大学を襲うビジネス志向。
学生や受験生を集めるために費やされる学生のユーティリティーを重視した莫大な設備投資が、勉強しないで遊びまくる学生を増やし、学費を高騰させ、学生の学力を低下させていく…
未だ学び続けることができている喜びや感謝の気持ちを忘れずに、日々精進していきたいと強く思うセッションとなりました。






ともあれ、ホストとして頑張った、かしま家庭医チーム(チームかしま)が近所の名店で昼食をいただきながらプチ反省会。
とんこつラーメン ならぬ とんかつラーメン!
珍しいので思わずオーダーし、とてもおいしかったのですが「高知では常識」なんだそうです。
近所の小学校には「チームかしま」にエールをくれる横断幕的なものが…
ほっこりした気持ちになれる日曜の午後となりました。


2015年8月9日日曜日

第24回 福島アドバンスド・コース FACE(Fukushima Advanced Course by Experts)


「キッズ医者かしま2015」からの~FACEということで、初日の昼間のレクチャーには参加できなかったので、駆けつけ源泉かけ流し&生ビール+地酒をお供に深夜(翌朝?)まで熱い討論をしながらの勉強会へ合流。
自身は午前3時でリタイヤも、5時前まで粘った強者もおられたそうな…


気だるい空気が漂いながら、2日目も朝から源泉を掛け流し、張り切ってお勉強!
以下、2日目のレクチャーの健忘録。


「災害救急~はじめの一歩から」
千里救命救急センター 小谷 聡司 先生

災害医療の合言葉「CSCATTT」を解説してくださった。

① Command and control
医療、警察、消防・救急、行政の円滑な連携

② Safety
Self:自分自身 Scene:現場 Survivor:生存者

③ Communication
情報不足、伝達不足、確認不足

<METHANE report>
Major incident:大事故災害
Exact location:正確な場所
Type of incident:災害の種類
Hazard:危険
Access:到達経路
Number of casualties:負傷者数
Emergency services:緊急サービス 例:救急車〇台必要

情報もCommand and control

④ Assessment
自分が医療指揮官であることを宣言する
医療機関への連絡
全体の統率に専念(一人ひとりの要望に振り回されない)

⑤ Triage、Treatment、Transport (Think simple.)
救出救助時に始まり、各ステージにおいて繰り返し行い、効率の良い医療に役立てることが重要で、Triageすることが目的ではない
Triageは、迅速、安全、簡便、再現性が高ければ誰が行ってもよい

でも結局 Think simple.
大事なのは、人と人とが声掛け合ってコミュニケーションをとること
そして、総合力が求められるという意味では、災害医療は決して特別なことではないというメッセージに深く共感した。
日常診療の中で、毎日のように準災害医療を経験しているとも言える「いわき」の勤務医として、自身の診療で CSCATTT できているかを振り返ってみたいところだ。


「もう困らない? 急性腹症」
太田西ノ内病院 津嘉山 博行 先生

豊富な画像を用いて、画像所見確認のコツを伝授していただいた。
腹部CTで、まずは全体像を見渡し、管腔臓器の拡張、脂肪織濃度の上昇、遊離腹腔ガス、造影不良所見の有無を確認してから、次に各臓器チェックに移ることで、病態全体の理解に役立つと思った。
しかし結局は、経過と身体所見が大事!


「熱傷の世界の入り口へようこそ!」
太田西ノ内病院 救命救急センター 石田 時也 先生

熱傷の局所治療の基本的な流れ(①冷却、②洗浄、③被覆、④Follow up)について、理論的治療戦略を明快にしていただいた。

真夏の小さな研修医たち ~キッズ医者かしま 7期生~

2009年に始まった夏休み恒例の“キッズ医者かしま”も、今年で7年目になる。
かの有名なキッ〇ニアさんをパクって、子供たちに白衣を着てその気になってもらおうという魂胆で、毎年30名ほどのキッズ研修医を輩出している企画。
今年で200名を突破!
研修医が増えると、こちらが予想だにしない個性あふれるキッズ医者も登場するもので、遂に今年は「白衣を着たくない」という家庭医っぽい人材も登場した。
始めることよりも、続けることのほうが難しいし、貴重だなぁ~ということをしみじみ感じ、今年も無事キッズ医者かしまを開催できてホッとしつつも、毎回新たな発見があり、キッズ研修医一人ひとり、学習者一人ひとり固有の学びがあるのだということを再認識した。
今日の気づきを、日々の教育活動、診療活動に活かしていきたい。





2015年8月4日火曜日

いわきのプライマリ・ケアが支える磐城共立病院 ~「医・職・住」の清水敏男市長との談話~


2015年8月1日の午後。
いわきの一大イベント「いわき花火大会」の前の貴重な時間をいただき、清水市長さんに、家庭医・総合診療医についてお話を聴いていただきました。
「医・職・住」
医療を最重要課題に挙げて当選された市長さんには、是非ともプライマリ・ケアについてできるだけ正確にご理解いただきたかったので、殺人的スケジュールを縫ってわたくしにお時間をいただけたことに感謝申し上げます。
こういった話をすると、磐城共立病院に総合診療科を創設する準備なのか?と思われる方もおられるかもしれませんが、私は、それは別問題と位置づけています。
むしろ、磐城共立病院が働きたい病院、やりがいのある病院、人の集まる病院、人気の研修施設になるためには、磐城共立病院そのものだけでなく、周辺環境 殊にいわき市全体のプライマリ・ケアの充実が不可欠です。

すでに極限まで不足した医療資源を有効活用するためには、医療、福祉、行政、住民らが一丸となって、同時進行で事を進めない限り動きませんし、2025年問題に間に合わないことだけは間違いありません。
そういう意味で、市長さんが果たすべき役割と責任はとても大きいです。

磐城共立病院に総合診療科を創設するべきかどうかについて私見を述べさせていただけるのであれば、こういった新部門をお金をかけて創設したとしても、磐城共立病院内のスタッフ全員にその役割が充分に理解され、その科へのサポーティブな体制が維持されない限り、単なる掃き溜め科になり、それこそ誰もやりたがらない(人が集まらない)科になります。
かしま病院で総合診療科が存在し機能できているのは、たまたま創設者が、奇跡的にプライマリ・ケアを深く正確に理解し、全職員が、その役割と有益性を実感し、家庭医・総合診療医の育成を応援してくれているからです。
そういうわけで、大学病院で総合診療医を育てるのが難しいのと同じように磐城共立病院でそれをしようとするのは、得策ではないと考えています。

2025年にピークをむかえる超高齢社会、言い換えると多死社会。
どうあがいても充分な数の総合診療専門医の輩出は間に合いません。
せめて、終末期もしくは心肺停止等の急変の際に積極的治療や蘇生処置や延命処置等を望まない場合に、家族や多職種が協力し、自宅や介護施設など病院以外の場所で自然な看取りを実現できる体制をつくることが、限られた医療資源を効率よく活用するために重要です。
それは、磐城共立病院をはじめとする病院の疲弊を防ぎ、機能維持を助けるでしょう。
そのためには、かかりつけ医の役割が大きくなります。
かかりつけ医とは?

何でも相談できる上
最新の医療情報を熟知し
必要な時には専門医
専門医療機関を紹介でき
身近で頼りになる
地域医療、保健、福祉を担う
幅広い能力を有する医師

日本医師会は、このように立派なことを掲げていますが、ここまで実践できている医者はそんんなに多くはありません。

わたしは考えます。
かかりつけ医とは・・・

対象となる患者を自分で看取る
もしくは
責任を持って看取りまでの
道筋を立てることができる医師

せめてこれだけはやってほしい。

病院を守るには?
病院受診を要する患者のみ病院を受診する
つまり、病院受診を要しない患者が病院を受診しないで済む体制づくりが重要。
不要・不急の時間外受診・救急要請の抑制し、軽症は診療所で対応し、病院(入院)での治療に有益性がない場合の自宅・施設での看取り、つまりプライマリ・ケアの充実が、いまのいわきで起きている、そしてこれから日本全国で起きる長期的かつ修復困難な医療需給バランスの不均衡を根本的に解決する切り札となるでしょう。

タイトル通りにしようよ~ ~自民党青年局と若手医師が本音で語り合う会~

2015年7月30日。



七夕ムードのいわきを離れ、平日の昼間でガラガラのひたちに乗り込み「自民党青年局と若手医師が本音で語り合う会」なる会合に参加するために、自民党本部に出張。
若手同士どのように本音で語り合うのか? 興味津々ではありながら、事前のお知らせを見ると、野田毅自民党税制調査会長による社会保障に関する講演のみ・・・
その後、立食形式の懇親会が予定されているものの、本音で語り合った結果を議事録としてきちんと記録に残し、次の政策へ繋げていこうという気概がプログラムを見る限り感じ取れませんでした。

東京に着くと、市民ランナーのメッカである皇居の周りでも、猛暑過ぎて走っている人はほとんどいませんでした。




さて、初潜入の自民党本部。
ただでさえ不審者にしか見えない風貌なので、せめて態度だけでも堂々と門を通過・・・
でも、やっぱり・・・
ちょっと待って棒を持ったオジさんが慌てて駆け寄ってきました。
事情を伝えてドキドキしながら会場の会議室へ!
入ってみれば、そこはただの古いビルであった。


さて、本題にもどります。
第一部の講演会には、全国各都道府県から数名ずつ67名の医師会員と数名の自民党若手議員が参加。
いや~な予感は的中するもので、野田毅氏の講演の内容は、超高齢社会がもたらす、人とカネ不足について・・・
医療政策や社会保障について、すでに問題意識を持って、平日の昼間に全国から足を運んだ医師相手に、はたして今更 時間を割いて話すべきことなのでしょうか?
講演は10~15分ほどで、残り時間を全部ディスカッションにあてて欲しかった。
案の定、第一部の質疑は2件でストップ。
しかも質問する相手は、自民党の最重鎮。
少なくとも第一部は、自民党青年局と若手医師が本音で語り合う会ではありませんでした。


こうなったら第二部の懇親会にかけるしかない!
懇親会には、若手を中心に40名弱の自民党議員が合流し、出身(選出)ブロックごとに語り合いました。

事件です!!!

福島県選出の自民党国会議員に青年局員がいねぇ~!!!!!
地元議員と語れねぇ~!!!!!!!
福島で高齢化しているのは医師だけでなく、議員さんもだったのね(泣)
幸い、隣県の議員さんが、いわきの惨状と、そこから必然的に生まれる死に者狂いのあがき。既成観念をぶっ壊して、限られた医療・福祉資源を有効利用し、窮地を乗り越えるために、医師会、市行政、住民が一丸となって知恵を出し合いはじめている様子に興味をもってくださいました。
結局、国はあてにならないので、現場でアイディアを出して、トライ&エラーを繰り返して、うまくいったら情報発信して、国が取り入れるように仕向けるしかない。
自分にとって、そういう想いを強くする会でしかありませんでした。
ある程度、予測していましたが・・・

折角の おのぼりさん。
ガード下で呑みなおして帰るのでありました。