2021年7月29日木曜日

家族機能のアセスメント ~第164回 家庭医療レジデント・フォーラム(特別編)~

2021年7月25日開催の家庭医療レジデント・フォーラムは、東京慈恵会医科大学附属病院 家族支援専門看護師の児玉久仁子さんに講師を務めていただき、家族機能のアセスメントについてかなり深いところまで突き詰めて学びました。

児玉さんの講義によると、よく言う家族療法はシステム的家族療法で、システム論1980年代までに発展し、そこに徐々にナラティブアプローチが加わり、以降の世代に広がっていて、家族看護は看護学のアプローチが加わっていったもので、メディカルファミリーセラピーは、身体・精神・社会モデルに準じて行われる家族療法で、これが総合診療医になじみ深い家族志向のプライマリ・ケアという位置づけになるそうです。

家族志向ケアでは、ヘルスケアの主役は家族という背景を持った患者であり、治療者もシステムの一部であると考えるのですが、臨床家もシステムの一部というのは、歴史的に新しい考え方のようです。

今回は特に家族システム論の中の家族機能について掘り下げて学びました。

家族機能には相互作用の連鎖(パターン)があり、一定のルールに則った特徴的な行動パターンが繰り返されます。

そこには原因と結果があり、通常では原因をなくすようにアプローチするわけですが、家族関係に当てはめると上手くいかないようです。例えば、アルコールを飲むので生活習慣病の管理が悪いケースで、本人の立場は「妻が怒るからお酒を飲む」というので、妻が怒らなければ解決するのかと思えば、妻からすれば「夫が朝から飲むから怒る」という具合に、悪循環は、それぞれの相互関係で巻き起こっていて、原因はシンプルではないということです。


家族の相互作用を確認し、やりとりを細かく聴取し、ここでは「何があったか」に焦点し、「誰が悪い」「何が悪い」ではなく、「誰も悪くない」とはっきり伝えることが大事で、アプローチポイントは、ネガティブなフィードバックをせずに、実践の中で出てきているポジティブな部分、家族の良いところを探すことのようです。

問題そのものに切り込むのではなく、その背景にある良い部分にフォーカスすることが、悪循環を好転させるきっかけになるようです。


専攻医が提示した事例は、まさに、自宅退院を希望する患者とそれを頑なに拒む家族に対し、家族の行動の背景に潜む優しさや几帳面さに気づきフォーカスしたところ、八方ふさがりにみえていた事態が、一気に好転するというものでしたので、このアプローチの有用性を実感できるものでした。



2021年7月22日木曜日

指導医のモヤモヤについて気軽に語り合おう!


2021年7月21日、初めて開催された「ふくジェネトレーナーズラウンジ(ジェネトレ)」に参加してみました。ジェネトレは、福島県⽴医科⼤学 医学部 総合診療医センター主催の指導医向けオンライン講習会で、指導医養成が専門領域の及川沙耶佳先生(福島県立医科大学 医療⼈育成・⽀援センター)をアドバイザーに招き、学⽣や研修医の教育にやりがいを感じながらも、教育に対してモヤモヤや不全感を感じる指導医らが、教育について気軽に語り学べる場を提供する目的で企画されました。

栄えある事例提示のトップバッターとして、先ずは私自身の拙い医学教育の実践例を紹介させていただきました。私が医学生の臨床実習教育を担当する際に注力している点は、なるべく多く実際の臨床経験(患者さんを診るということ)をしてもらうことです。座学や机上の自学だけでは定着しなかった記憶や技術が、患者さんやご家族との関りを通して定着し、学習を促進すると信じているからです。実際に多くの学生は、臨床経験を通して高いレベルの気づきを得てくれます。中には指導医の期待をはるかに上回る深い学びを得る学生もいます。一方で、同じように臨床経験を積ませても、その経験の意義をあまり理解してくれない学生もいて、この差はどこから生まれるのか?というモヤモヤがありました。参加者の先生方と賑やかに語り合いながら、私のモヤモヤについても共感していただきました。

その後、アドバイザーの及川先生から私の事例について解説をしていただき、経験的学習理論の理解が重要であることを知ることができました。やみくもにたくさん経験させるだけでなく、学生の過去の経験とリンクして、もともとある知識と関連化し臨床に応用できるように、指導医として、一人ひとり違う学生に関心を持ち、それぞれにとって最適な気づきの促進の仕方を探求していこうと思います。