2018年12月9日日曜日

学び合い ~いわき志塾~

2018年12月8日。
いわき志塾の講師として所属専攻医を派遣させていただきました。
今回は、医療・法律・スポーツのスペシャリストからインプットされた人生観を中学生が聴き、次に中学生らがそれぞれの感性で咀嚼し、得られた知見やパワー・フレーズをチームごとにまとめていきます。
最後に参加者全員に各チームが5分間に凝縮してプレゼンします。
今回は1・2年生率が高く、初参加の生徒も多かったのですが、中学生たちの、ポイントを捉えサマライズしていく能力の高さに驚愕しました。
また、今回の講師陣はバラエティーに富んでいてとても楽しかったです。
専攻医本人も自身の人生を振り返り、志の高い中学生の熱量に触れて、とても良い刺激になったようです。
おまけに、日常業務では指導医も気付きにくかった彼女の隠れた才能を、志塾を通して開花させていただきました。 数多の学びの機会を与えてくださった現役中学生と教育委員会の皆様に心より感謝申し上げます。




2018年11月29日木曜日

多彩な学びの足跡 ~実践家庭医塾~


今宵の実践家庭医塾では、臨床研修医2名が それぞれの経験事例をもとに学んだことを自由にプレゼンしてくれました。

K先生は、浜通り特有の危機的な救急医療事情に驚きつつ、社会的な問題にまで広げて考察し、一般の方が救急車を適正利用できるように開発された全国版救急受診アプリ「Q助」を紹介してくれました。

T先生は、脳梗塞と思いきや神経梅毒?という若干Dr. G的な変化球事例を紹介してくれました。梅毒の急増が問題視されていることを鑑みると、今後このような事例は必然的に増えてくるかもしれません。脳血管障害を疑う切迫した状況下で、性交渉にかかわるデリケートな質問をどのように進められるか?いろんな意味で示唆に富む事例でした。

閉塾後に、1ヶ月の地域医療研修修了セレモニーが挙行されました。
理事長から修了証書と寄せ書きが授与され、プチ・サプライズといった感じでした。



2018年11月18日日曜日

在宅医療に必要な知識と技術を学ぼう ~139th FaMReF@ほし横塚クリニック ~

まず、在宅医療に関する制度的な内容や郡山市における現状や取り組みについてレクチャーがありました。
訪問診療のニーズがある時に、かかりつけ医が積極的に在宅医療に取り組みやすい社会やシステム、ネットワーク創りの重要性を再認識し、いわきで取り組んでいる在宅医療ネットワークを、更に推進していくことが重要だと思いました。

次に、在宅でのポケットエコーの活用法についての紹介があり、だいぶ注目されるようになってきている肺のエコーについても解説してもらい、いつでも、どこでも、誰のどこにでも使える気軽さで、ますます活用していきたいと思いました。

次に、ほし横塚クリニックにおける訪問診療の現状について報告がありました。
入院治療の限界と考えられ、退院時に予後不良と評価されていた患者さんが、自宅退院・訪問診療導入後に、ご家族の献身的な介護などに支えられ、生き生きと過ごすことができて復活し、結局 元気になったという印象的な事例が紹介されました。関わった人達が、それぞれの役割を果して、きめ細やかな対応をして、すべての歯車がかみ合った結果、在宅療養のメリットが最大限に発揮されたようです。

ホストの ほし横塚クリニック家庭医チームは、なんともアットホームな感じで、日頃の診療もあたたかみに溢れている のだろうな~ というのが連想できました。




2018年11月1日木曜日

「おひとりさま」をケアするということ… ~実践家庭医塾~

今宵は、SDF(超医師〇〇)氏が、天涯孤独な患者さんと関わった経験事例から、健康の社会的要因の影響をダイレクトに受けやすい「おひとりさま」のケアについての省察を発表してくれました。


一般的に健康の社会的決定要因には以下のものがあります。
①社会格差
②ストレス
③幼少期の環境
④社会的排除(少数民族・外国人・身体障害者、避難民・ホームレス等)
⑤労働(裁量権のない環境等)
⑥失業
⑦社会的支援
⑧薬物依存
⑨食事
⑩交通
⑪検診受診率
その他の新たな問題となる可能性がある要因として…
・ジェンダー(LGBTQなど)
・難民・移民・留学生
・思想(SNSを含む)
・雇用の流動性・不安定性
・高齢化

直接的な診療という形でのサポートがしにくい事例では、家庭医だけの力では如何ともし難いところ…
社会を動かす大きな力が必要です。

日本プライマリ・ケア連合学会でも、実は地味に下記の内容の「健康格差に対する学会の行動指針」を示していることが紹介されました。
1) あらゆる人びとが健やかな生活を送れるように社会的な要因への働きかけを行い、健康格差の解消に取り組みます。
2) 社会的要因により健康を脅かされている個人,集団,地域を認識し、それぞれのニーズに応える活動を支援します。
3) 社会的要因に配慮できるプライマリ・ケア従事者を養成し、実践を通して互いに学び合う環境を整えます。
4) 健康格差を生じる要因を明らかにし、効果的なアプローチを見出す研究を推進します。
5) あらゆる人びとが、それぞれに必要なケアを得られる権利を擁護するためのアドボカシー活動を進めます。
6) 上記 1-5 を達成するために、患者・家族および関係者や関係機関(専門職・医療や福祉の専門機関・地域住民・支援ネットワーク・NPO、行政・政策立案者など) とパートナーシップを構築します。
(日本プライマリ・ケア連合学会の健康格差に対する見解と行動指針)

何とも壮大な話ではありますが、生活習慣病などの疾患でも、患者個人のがんばりだけでは解決しにくい、生活背景に潜む隠れた健康リスクを洗い出したり、独居高齢者の生活支援など、社会的サポートが得られるのに 受けていない ということはないかチェックしたり…
こういった部分は家庭医として果たすことができる役割なのではないだろうか?というTake Home Messageで、SDF氏のプレゼンは締めくくられました。

2018年10月28日日曜日

リッツ・カールトンに学ぶ地域医療創生

 2018年10月25日。人とホスピタリティ研究所所長の高野登先生を講師にお迎えして「いのちの現場とおもてなしの心」〜医療従事者における接遇とは〜 と題し、社団医療法人養生会接遇特別講演会がパレスいわやで開催されました。


 高野氏は各ビジネス誌やレジャー誌で常にトップクラスの評価を得ているリッツ・カールトン・ホテルの元日本支社長で、従業員に“おもてなしの極意”を徹底的に叩き込んでこられた人物です。高野氏は、最高のおもてなしとは、設備でもマニュアルでもなく“人の価値”だと言います。たとえ、豪華な建物と完璧なサービスマニュアルがあっても、そこに企業の熱いパッションが根底に流れていなければ、ホテルが単なる宿泊施設の域を超えることはなく、企業の“心”と“魂”が従業員を通してお客様に伝わって初めてホテルはひとつのブランドへと昇華されると言うのです。


 講演の冒頭で高野氏は最高の笑顔で「仕事は一生かけて人格を形成するためのもの」と断言されました。そして、その神々しく揺ぎ無い姿に圧倒され「これまでの自分は仕事を通してきちんと人格を鍛えてきただろうか?」と深く猛省させられる、まさにハッとした瞬間でした。高野氏は続けて“サービス”と“おもてなし”との違いを明確に定義づけしました。サービスとは、いつでも・どこでも・誰にでも提供する、客との契約に基づく商品であり、徹底したマニュアル管理により質を担保することができます。一方、おもてなしは、個々の客の、その時・その場における固有の状況を丁寧に観察し、客がどんなことを望み、何を必要としているかを想像し、マネジメントを創造した者にだけ提供できる、今だけ・ここだけ・あなたにだけの特別なものです。相手の心に自分の心を寄り添わせて、相手の立場になって対話する姿勢そのものであり、一人ひとりの相手が求めているものの違いに気づき、感じ取る“感性”が必要になります。その先に互いの“感動”と“感謝”が生まれ、決して飽きることなく、やりがいをもって何度でも繰り返したくなる善循環へとつながっていきます。


 講演を聴きながら、医療におけるサービスとおもてなしについて考えました。医療におけるサービスはもちろん診療行為です。これは徹底したマニュアル管理により、提供内容の標準化や質の向上、医療ミスの低減が図れるかもしれません。また、手術等の専門的技能は、経験を重ねるごとに技術が習熟されていくでしょう。しかし、こういったマニュアル化しうる領域は、おそらく人工知能(AI)の得意分野でもあり、AIの守備範囲は日進月歩で拡大し、医療従事者の役割は今後縮小していくでしょう。ホテル業界でも接客のほとんどをロボットに任せている「変なホテル」という名のホテルが登場しているぐらいですから…。一方、医療におけるおもてなしとはどのようなものでしょうか? 例えば同じ疾病の患者さんであっても、その病気の体験(苦しみや恐れの程度や内容、置かれている境遇など)は、患者さん一人ひとり異なるし、更に家族をはじめとする患者さんを取り巻く人々や社会環境は千差万別です。これらの固有の事情に配慮して、患者さんがどんなことを望み、何を必要としているかを想像し、マネジメントを創造して、今だけ・ここだけ・あなたにだけの特別なケアを提供することが医療におけるおもてなしであり、これぞまさに患者中心の医療そのものなのではないでしょうか?


 ところで、リッツ・カールトンの従業員は何故ここまで情熱を持って、おもてなしを追究し続けられるのでしょうか?先ずはリッツ・カールトンの公式ホームページに掲載されているクレドと呼ばれるホテルの信条を紹介します。『リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です』一読すれば誰もが一度泊まってみたくなるような魅力的な内容ですね。リッツ・カールトンには、仕事をすることの意味は何か?ということを、組織的に継続的に考えさせる仕組みがあり、高野氏もその答えを追求する中で、人は誰でも本当に人様のお役に立てたときは輝いているということが見えてきたと言います。「お客様に喜んでいただけることが自分にとって生きる力になります」リッツ・カールトンのスタッフは誰もがこう口にするそうです。そして、世の中のお役に立てたと実感できたとき、実はその本人の心が鍛えられ成長するのだそうです。そうやって心の筋トレを繰り返しながら「人の心に寄り添い、思いを感じる力」をつけていき、仕事が楽しくて仕方がなくなっていくようです。
 心の筋トレをしたいなら、いわきは実はメチャメチャやりがいのある場所です。立ち去り型サボタージュによる人材不足の悪循環に陥っているいわきの医療界においても、リッツ・カールトンのおもてなしの精神は適用できると思います。そのためには各医療機関がそれぞれのクレドを再確認し、全職員が一丸となって使命を果たしていくことが必要です。私自身の所属法人であるかしま病院のクレドは一言でいうと“めんどうみのよい病院”です。具体的には、家庭医療を基本とする医療と介護の融合した病院、在宅復帰・在宅医療に取り組む病院、かかりつけ患者や病院周辺地域の救急の受け入れ・増悪時の対応を行う病院です。幸いなことに、このクレドに掲げられた内容は、私が一生かけてでも成し遂げたいことそのものです。今はまだまだ全然できていなくても必ず創りあげます。
 高野氏から発せられる言葉は一言一句すべてが私たちに勇気と活力を与えるものでしたが、講演の終盤で飛び出した「悪循環も善循環も回すのに必要なエネルギーは変わらない」という言葉が胸に刺さりました。「それなら逆回転させればいいじゃん!」と思いました。みんなが力を合わせて悪循環を逆回転させるのはいつか?今でしょ!(古ッ! 苦笑)


時空を超えてミッションを叫ぶ! ~138th FaMReF~

本日の只見開催の家庭医療レジデント・フォーラムは、220 km 余りの道のりを超え、TV会議システムを利用して、いわきから参加させていただきました。
担当患者さんの病状を鑑みると遠出しにくい状況でしたので、光回線のこの武器はとてもありがたいです。


さて、今回は、制度、組織、業務改善、経営など、運営に関する内容がメインテーマとなりました。
とても大きなテーマです。
大きいがゆえに、日々の活動の全体像を振り返り、原点回帰するのにとても良い機会となりました。
あらためて、所属法人のミッションと自身が成し遂げたいことが一致していることを再確認し、そして、それは自分の人生にとってとても幸運なことであると再認識しました。

また、福島県を訪問中のデンマークの家庭医Susanne先生ご夫妻が、デンマークの家庭医療制度について紹介してくださいました。デンマークではリスト・システムによって、かかりつけの家庭医が決められ、家庭医はゲートキーパーとしての役割を担い、高い国民幸福度を支えているようです。

2018年10月24日水曜日

今こそ闘いの時! ~総合診療みちのくプロレス~


 20181013日、みちのく総合診療医学センターを見学させていただきました。



 みちのく総合診療医学センターは、宮城県塩竈市の地域医療支援病院である坂総合病院を中心として、中小の地域病院、診療所も含めた教育フィールドをもち、救急医学、病院総合診療、家庭医療、在宅医療など、東北の総合診療を担う様々な分野を担う医師を育てることを目指し、2012年に以下の目的で設立されました。

    診療所・小規模病院の家庭医療、総合病院の総合診療を担う医師を育成
    ジェネラリスト医師の教育・研究の拠点となり、目指すべき医師像を探究
    理想の地域医療を追求することで、東北の医療に貢献

 みちのく総合診療医学センターは、しばた協同クリニック院長の小幡篤先生をセンター長として、医療福祉生協連家庭医療学開発センター長で日本プライマリ・ケア連合学会理事の藤沼康樹先生をアドバイザーに迎え、活発な診療・教育・研究活動が展開されています。代表的な学習・省察の機会として、総合診療カンファレンス、レジデントデイがあります。

<総合診療カンファレンス>
毎週火曜日の午後、主に総合診療科と救急科に入院中で研修医が担当している症例を中心にカンファレンスを実施しています。研修医が診断や治療、退院に向けて苦労しているケースについて、救急、総合診療、家庭医療、感染症、循環器、脳神経外科を専門とする指導医からアドバイスをもらいながら、医学的な問題はもちろん、患者さんが抱える心理・社会的な背景を含めて包括的に検討していきます。

<レジデントデイ>
 アドバイザーの藤沼康樹先生を招いて月1回レジデントデイを坂総合病院や古川民主病院などで開催し、レジデントの1ヶ月間の振り返りを行っています。毎月の目標と評価、外来・往診・入院症例ログ付け報告、外来・往診診療ビデオ記録での検討、Clinical Jazz、総合診療関係のテキストの読み合わせなどを行います。その他、藤沼先生からのレクチャーやEBM指導なども行っています。外部からの参加もオープンにしています。

今回の視察では、基幹病院である坂総合病院で開催されたレジデントデイに参加させていただきました。参加者は16名(専攻医3名、指導医10名、見学者3名)で、専攻医一人ひとりから、1ヶ月の振り返り(省察)、ポートフォリオ発表、ビデオレビュー等がなされ、それぞれに対し、指導医から丁寧なフィードバックがあり、専攻医らが次へのステップへ向けた具体的な目標を設定できるように配慮されている点に感銘を受けました。

視察を終えて、まず、福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座が提供する福島県立医科大学総合診療専門研修プログラムとの比較検討をしました。
共通点としては、日々の研修を多施設に分かれて行っている専攻医らが、各種通信手段を駆使して情報共有しながら、定期的に一堂に会し、高い水準の学びを享受できるように配慮されているということです。
相違点としては、福島県立医科大学総合診療専門研修プログラムの拠点となる研修施設がすべて中小の医療機関であり、それぞれが広大な福島県内の別々の医療圏に属しているため、各拠点研修施設間の診療上の連携は殆どないのに対し、みちのく総合診療医学センターは、100年以上の歴史を持つ塩竃市の地域密着型の坂総合病院を基幹病院として、3つの小規模病院と2つの診療所が互いに連携し、急性期から慢性期・生活期までの幅広いフィールドでの研修が提供されています。一方、福島県立医大のプログラムでは、県内各地の拠点研修施設を中心として、その地域ごとにその地域の実情に合わせた新たな地域包括ケアシステムの構築に取り組むことができるというチャレンジングな魅力があります。
このことを踏まえ、いわき市で、家庭医・総合診療医を育成するネットワークを構築し、魅力ある研修環境を提供するためには、2008年から家庭医療専攻医の受け入れ実績のある養生会かしま病院が、めんどうみのよい病院を目指して展開する地域包括ケアシステム(いわき地域・家庭医療センター構想:かしまモデル)を存分に活用し、近隣の診療所と連携しながら、予防・診断・治療・リハビリ・在宅医療・福祉・介護についてシームレスに学べる環境を整備するために、多施設が研修の質の向上のためにオールいわきで協力していくことが不可欠であると考えました。

10年かけてようやく蕾が膨らみつつあります。今こそしっかりと花を咲かせ、これからの10年で結実させます。

どうやら、死に者狂いの闘い(みちのくプロレス)の時が来たようです。