2014年2月23日日曜日

女性の健康問題における家庭医の役割 第91回 Family Medicine Resident Forum @ Iwaki


今回は、ホストとして 講座のメンバーをいわきのかしま病院に迎えての開催となった。

テーマは「女性の健康問題」

かしま病院婦人科の鈴木庸介先生を、ゲスト講師・アドバイザーとしてお迎えして、私たち家庭医に役立つ、女性の急性腹症や更年期障害などの産婦人科の知識のおさらいや、ウィメンズ・ヘルスにおける家庭医の役割について考える機会となった。


レクチャー担当指導医の若山隆先生からは、ピルのメリットとリスク、そして処方に関する基礎知識・注意点が示された。

産婦人科医が極端に不足している当地で、私たち家庭医が社会貢献できるためには、やはり、正しい知識のもと、専門医の先生方のアドバイスをを得たり、緊密に連携・協力していくことが大事である。


レジデントからの振り返りでは、院内に産婦人科がある場合、家庭医はどのように関わっていけばよいか?という疑問から、女性のケアにおける家庭医の役割について掘り下げて考えた。
単に疾患に対する管理ができるというだけでなく、女性のライフステージを考慮したアプローチに努めることが大事だ。
婦人科検診の推進などの予防医療もそうだし、心理・社会的問題などへの介入においても、家庭医が役に立てる場面は多いということを再認識した。

Cinemeducation 「白い恋人たち(1968)」
今回は、ソチオリンピック期間中にちなんで、グルノーブル冬季オリンピックの記録映画を教材に、ディスカッションした。
題材が自由すぎて、個々の議論の内容も多彩であったが、多くの人が関わって、長い時間をかけて準備して、鍛え抜いた技を競い合う。そんな舞台は、表舞台に立つ側にも、裏方の人間にも、遠くの地でTVで観戦するだけの者にとっても、強く心に訴えかけてくるものがある。
東京オリンピックの誘致への賛否両論があり、どちらの言い分も分かる。
しかし、オリンピックには理屈のない感動があることだけは間違いないし、それが日本で行われるのであれば、日本人として最高のおもてなしで、世界中の人たちをお迎えしたいと思う。

2014年2月21日金曜日

フジテレビの取材クルーが来る~(じゃなくて、もう来た~)

先日、密着取材らしきものを受けてしまいました。ご担当の方の話によると、3月初旬に、フジテレビのニュース・ジャパンで、いわき市が抱える医療の問題点についての特集を組むそうです。常日頃、このブログで、このテーマに関連する数多くの投稿をしていたため、取材対象としてわたくしがヒットしたようです。

40歳過ぎてから体力的にキツイのではないですか?」「いいえ、30代より増々元気で・・・」慣れない仕事のため、インタビュアーの意図を酌めずに噛み合わない会話をしながらも、出来る限りいわきの現状を理解していただけるよう努めました。
しかし、「どうしたら若い医師がこの地に居付くでしょうか?」という質問に、「厳しいですね~」と、言葉を濁すだけで、その時はうまく答えられず悔いを残したりもしました。
なんだか“もや~ん”というスッキリしない感覚が残ったので、もう一度この質問の答えを考え直してみました。
「どうしたら若い医師がこの地に居付くか?」というよりも、むしろ「なぜ私たちがこの地で案外楽しく仕事をしているか?」という考えに立ち戻った時に、やはり、必要とされる仕事だからなんだということを再認識しました。
「必要とされている」ということを自覚して仕事を続けられたら、医療人としても人としても、これほど幸せなことはありません。
必要とされることの単純な喜びや醍醐味を、ひとりでも多くの若い医療人に伝え、新しい仲間を増やし、手と手を取り合っていくことが、今ここに生きる私たちに科せられた使命なんだと思います。
わたくしの映像が全国に放映されることは、公序良俗に反するので、恐らくずべてカットされると思いますが、万が一少しでも映ることがあれば、奇人変人か珍獣でも眺める気持ちで堪えてください。
最後に取材担当の方からの感想を共有します。
「かしま病院の取材を通して感じたのは、石井先生のブログに漂う強い危機感、何とかしなければという焦燥感、とは別の優しい病院スタッフの空気です。」

2014年2月13日木曜日

「今、取り組む・見直す・在宅医療」 ~顔の見える多職種連携~

今夜は、「今、取り組む・見直す・在宅医療」と題して、平成25年度 いわき市医師会「主治医意見書説明会」医師と多職種の連携のつどい が行われた。
今回は、「栄養管理」と「看取り」に焦点を当て、在宅医療の現場でご活躍されている医師・訪問看護師・管理栄養士・ケアマネージャ・市の行政の方々のご経験を踏まえて、現状での課題も含めて活発な議論がなされた。


在宅医療の現場でも使いやすい簡易栄養アセスメントツール Mini Nutritional Assessment-Short Form : MNA などの活用により、一見元気そうな高齢者に早期に栄養介入し、健康年齢を伸ばすことが出来たらいいと思う。栄養介入は極めて重要ながら、十分な知識を持ったスタッフが、特に我々医師において不足していると思う。回避可能な低栄養が予防できる体制づくりが必要である。まだまだ在宅で栄養士さんが十分に活躍しにくい現状であることを理解した。

次に、在宅看取りについてだが、その良さを身を持って体験しているスタッフも、利用者も不足していると思う。
加えて、終末期や死=異常なことという認識が根強い社会における、死生観などの教育が、これからの多死社会に適応していくために求められている。
在宅死が良い。在院死が悪い。ということではなくて、なぜ在宅なのか?という医療、介護を提供する側と、それらを利用する患者、家族の共通のテーマを練りに練って議論した結論が在宅であれば、家族を含むケアに関わる全てのメンバーが、そして患者さん本人にとって満足度の高い時間を提供できるのではないか?

いずれにしても、限られた医療資源の中、円滑に在宅医療を提供していくためには、ご家族を含めケアに関わる全てのメンバー間の強固な協力関係が重要である。
こういった顔の見える集まりが、自分が頼るべき人を知り、できれば頼られる人として認識してもらえるような機会になればいい。

2014年2月9日日曜日

集中治療における患者の見方 第18回 FACE (Fukushima Advanced Course by Experts) ⑤

日立総合病院 救命救急センターの中村謙介先生による、集中治療における患者の見方のお話

心肺はもちろん、脳や消化管・筋にいたるまで、すべての臓器・組織をバランスよく包括的に管理する必要がある集中治療の現場では、治療方針決定には、常に刻々と変わる状況に対して非常に複雑で高度な意思決定能力が求められる。

これらをなんとなく、方法論として言語化やマニュアル化しにくい職人技としてこなしていくというだけでなく、各臓器の状態の評価と対策、problem sheet を用いた管理法などを紹介していただいた。


私たち家庭医も、非常に複雑で高度な意思決定能力が求められるし、方法論として言語化やマニュアル化しにくい職人技としてこなしていく事が求められるという意味では、共通する部分があるなぁ~と思ったりした。患者中心の医療の方法などの既存のものを正しく深く理解しつつ、より利用しやすいツールの開発を試みたりすることが、診療能力や・専門性の標準化のためにもっともっと必要だと思う。

わかりすぎて困る! 脳神経の診察入門 第18回 FACE (Fukushima Advanced Course by Experts) ④


朝遅くまで勉強するという奇怪な日本語を生んだFACE
今回も頑張ったものの、完走ならず午前4時前に入眠。
完走した猛者は、午前5時30分頃まで頑張ったそうな・・・いと恐ろしや!


それでも何事もなかったかのように、爽やかに朝からお勉強

朝一の講義は・・・
FACE参加者常連から今回、講師デビューとなった矢野徹宏先生による
「わかりすぎて困る! 脳神経の診察入門」


複雑で苦手意識を持つ人が多い脳神経の解剖・生理を大胆にスリム化して解説!
誰よりも参加者の気持ちが分かる“やのっち”らしい、愉快・痛快・明快な素晴らしい講義であった。

分かりすぎて困りたい方はこちらもご参照あれ!

2014年2月8日土曜日

集中治療にも役立つ精神科の知識 第18回 FACE (Fukushima Advanced Course by Experts) ③

「集中治療にも役立つ精神科の知識」
会津医療センター心身医療科 久村正樹 先生


印象的だったのは、「性格や環境から考えることは禁忌!」というメッセージ!

これは、治療可能な他の身体的疾患を見逃さないためにも非常に重要なことだと思う。

例えば、入院した途端に夜間不穏になった患者さんに

「入院した(環境が変わったから)から認知症が進んだんでしょう」という評価は“ナシ”でしょう!

「せん妄が起きた時に、必ず器質的原因があるという目でアプローチすべし!」

という視点を示していただいたことは、今後の診療に大変役立つことだろう。

集中治療に必要な循環についての基礎知識 第18回 FACE (Fukushima Advanced Course by Experts) ②

日立総合病院 救命救急センターの中村謙介先生による集中治療の講義

初日は集中治療の生理学のはなし


怒涛の講義の連続・・・
各臓器、各組織における循環:酸素運搬能(Oxygen Delivery)と組織潅流(Perfusion)を丁寧に評価して管理していくことの重要性を学ぶことができた。
そして、集中治療に対する診療・教育・研究への中村先生の情熱がビシビシと伝わってくる。

普段、診療の質を明確にパラメーター化しにくい分野で働いている私たちであり、同じ医師であっても中村先生とは随分違う内容の仕事をしていることを再認識しつつも、目の前に与えられた自身の役割に対して真摯に地道に取り組んでいくことが、いずれにも共通して最も尊いことであることも改めて確信した。

雪道の移動は慎重にね! 第18回 FACE (Fukushima Advanced Course by Experts) ①

年に4回の何でもありの医学系勉強会「FACE」
FACEのためなら何としてでも磐梯熱海に駆けつける。
っていっても、よりによって関東で20年に1度レベルの大雪の予報が出ている日じゃなくてもいいのにね。
めったに雪の降らないいわきでも朝からシンシンと雪が降り続け、会場への移動の途中、実に8件もの自動車事故の処理現場を目撃することになった。
いわきからの内陸移動時はいつも、晴れのち雪のパターンなのだが、今日ばかりは一貫して雪国であった。


今回のメインゲスト講師は、日立総合病院 救命救急センターの中村謙介先生。
集中治療のエッセンスを集中的に学べる企画になっている。


循環とは?
あらためて問われると戸惑ってしまう。
中村先生は、循環は酸素運搬能(Oxygen Delivery)と組織潅流(Perfusion)の2つの要素により成り立ち、これら両者をキッチリ維持することが、集中治療において最優先すべきことであり、これらを評価するパラメーターの目標値を初期に達成し、維持することが救命率を上げるということを強調されていた。