2016年1月21日木曜日

地域医療 ≠ 地域で医療 ~実践家庭医塾~

お待ちかね 実践家庭医塾 恒例の地域医療を学びにいわきに来ている臨床研修医のプレゼン!
ほぼ東京生まれ東京育ちの臨床研修医が今回初めて東京を出て研修して見たものは…




経験した2つの事例を踏まえ、大学病院とかしま病院の違いについて考えてくれた。
もちろん、高度先進医療を提供する大学病院や地域の基幹病院と、中小規模の病院や診療所の役割は違う。
かしま病院やクリニックかしまには、地域医療の中核として、地域住民の疾病予防・診断・治療・リハビリ・在宅医療・福祉までのシームレスかつ継続性を持った医療・福祉サービスの提供が求められている。(と思う)
しかし、研修医の気づきは、医療機関ごとに役割の違いはあっても、患者さんに最良の医療を提供するという目的に変わりはないということ。
患者さんの考えだけでなく、現在に至るまでの物語を深く知ろうとすることで、提供する医療も変わってくることを、経験事例を通して実感してくれたようだ。
これまでの大学での診療でも、患者さんの背景を考慮しようとはしてきたけれど、患者さんの物語を知り、それを診療に活かす具体的なアプローチ法であるNarrative‐Based Medicineの考え方を学び、実践し、慈恵医大の建学の精神である「病気を診ずして病人を診よ!」の真意を、入学から8年目にして ようやく理解できた様子である。

「地域医療とは地域で行う医療のことではない! 地域医療とは地域で必要とされる医療。 患者さんをその物語も含めて診ることは、どの場所、どの病院であっても必要なことだと感じた」

研修医からの最後の力強いメッセージである。

ここまで学べば、東京の大学病院に戻っても、ここでの経験を応用して活かしてくれるものと確信している。

研修開始当初、地域医療=田舎で医療 という感じに混同している様子があった研修医の成長の過程が確認できて、幸せな気持ちになれる宵となった。

2016年1月17日日曜日

ようこそ いわき! 第109回 FaMReF

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の専攻医の教育を主目的とした月例の勉強会
Family Medicine Resident ForumFaMReF
広域な県内持ち回りで開催するので、参加者が集まりやすいように県の中心である中通りを中心に開催されるが、今回は いわき開催。
せっかく 遠路(遠くは只見から)いわき“くんだり”まで足をのばしていただくからには、最大限「お・も・て・な・し」したいところ・・・

そこで、総合診療専門医の6つのコアコンピテンシーをおさらいしてみる。
1.人間中心の医療・ケア Person-centered care
2.包括的統合アプローチ Comprehensive care, Integrated care
3.連携重視のマネジメント Interprofessional work
4.地域志向アプローチ Community orientation
5.公益に資する職業規範 Professionalism
6.診療の場の多様性 System based practice

これらの中で、専攻医のお勉強になりそうで、今回の いわき開催ならではの「おもてなし」を鑑みるに…
4.地域密着行事への参加
6.学習できるシチュエーションの多様性

シメシメ…
この辺が提供できるぜ!

「へへへっ!」

FaMReF開催当日は、小名浜地区一周駅伝大会とかぶっている。
FaMReFが開始となる時間帯に、会場のかしま病院の真ん前を駅伝選手が疾走する。
そんなときに、勉強だけに専念して良いだろうか?

「いや、良くない! 駅伝、みんなで応援しようぜ  いぇ~い!」

超 ローカルな大会なのに、そんな回答がソッコー返ってくる講座だから、わたしは今の仕事を続けている
超 ローカル(超 地域密着)だからこそ萌える変人たちの集まりが無事始まった(笑)


駅伝の応援でアドレナリンを放出したら、ゆる体操でリラックスして ようやく本題へ!



今回の専攻医によるメイン・プレゼンは重くて深かった。
患者本人の意思確認が困難な状況下で、どのように終末期の方針決定をしていくか?
今回は、研修中の砌、病院勤務医としての立場での経験となったため、院内倫理委員会に諮り、委員会の意見を参考にしたり、主治医の負担を低減することができたが、家族と主治医だけで判断していれば、違う経過になっていた可能性がある患者さんの話。
感心したのは、倫理委員会の思考過程と実効機能として、過去のデータに基づくスタンダードな対応(ガイドライン的な推奨)を提示するだけではなく、家族の物語(NBM)を重視しながら、根拠に基づく医療(EBM)とのバランスをとるというプロセスをとっていたということ。
専攻医たちが今後、診療所の“あるじ”たる家庭医として働くかぎり、自身の独断が患者の運命を左右することがあることを自覚しなければならない。
臨床倫理を考えていく上で、医師と医療の利用者間だけで議論するのではなく、医師と多職種間での意見の相違なども参考に、臨床倫理の4分割表などを参考に情報を整理し、慎重に結論を見出していく必要がある。
近道はないかもしれないが、結局は、患者中心の医療の方法を深く理解し、実践していくことが大事であることを再認識した。