2013年2月21日木曜日

キャリア支援・復職支援

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座では、家庭医療専門医の輩出(後期研修プログラムの提供)、医学生・初期研修医への地域・家庭医療の教育はもちろんのこと、それ以外にもプライマリ・ケア領域の診療・教育・研究における様々なキャリア支援・復職支援を行なっています。
いずれも、個々の多様なニーズに対応できる、とても自由度の高いプログラムです。
あなたの“なりたい医師像”の実現のためのキャリア形成を全力でサポートします。


質問・意見・ご見学など、いつでも“今でも”遠慮なくどうぞ!
福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座
960-1295 福島市光が丘1番地
TEL: 024-547-1516  e-mail :  comfam@fmu.ac.jp
URL :  http://www.fmu.ac.jp/home/comfam/

2013年2月16日土曜日

吹雪にも負けず!~第80回 FaMReF@喜多方~

2013216日(土)今日は月例のFaMReF
いつものようにサンシャインないわきを順調に出発。
青すぎるいわき

しかし、郡山の手前から吹雪に・・・
案の定、磐越道の磐梯熱海IC~会津若松IC間が閉鎖されてしまった。
白すぎる猪苗代


会津都市部の融雪システム
(もっと寒い地域だと単なる製氷機になってしまうだろう)


そんなこんなで、交通規制の網の目を掻い潜って喜多方に辿り着いた勇者らによるFaMReFが開幕した。

研究発表「プライマリ・ケアにおける診療科包括性に関する研究()
東京医科歯科大学4年 原萌さん
家庭医の診療の包括性を統計学的に証明しようという面白い試みに対し、活発な議論が取り交わされた。交絡因子が多くて他科診療所との単純な結論付けは難しいが、それでもやっぱり包括的なのね!ということが数字で見れるのはなんか嬉しい。
学生さんのチャレンジに敬意を表したい


Reflection of the Month「私、もう年だから・・・」
後期研修医2 年目 川名瞳先生
「十分長生きして、十分幸せだから・・・」と言いつつも、どこか寂しそうな高齢者との関わりを通した振り返りのプレゼン!
患者背景を深く深く理解することで、患者さんの言葉や雰囲気に共感できる。そんな体験に参加者一同も共感を覚えた様子。
“何かありそう”そんな信号を感知するアンテナを常にはっていたい。


台湾の家庭医療 廖育婉(Liao Yu-Wan)先生
日本同様にプライマリ・ケアの崩壊の危機に瀕している台湾の実情を教えていただいた。同じ様な境遇にある両国が、すでにある高齢社会をどう克服していくべきか?
継続的に方略を議論し、解決策を実践し続けていきたい。

あっちゃんの考える診断学 石井敦
非典型的な訴えや、非典型的経過に遭遇した時、適切なキーワードは何かを再検討することの重要性を学んだ。
特に「突発」には敏感に反応したいところ・・・

Cinemeducation 葛西龍樹教授
「レッドクリフ(2008)」
真のリーダーとは?
学習者中心の教育を取り入れた兵の統率。
問題の原因を意識した再発予防。
家庭医の診療・教育にも応用できそうな示唆に富む映画であった。
そんな議論が展開された! 

頑張った後は懇親ボーリング大会。
ボーリングなんて最後にいつやったか記憶にない。
医者になってから1回もやってなかったような気がする。
みんな似たようなもんで、非常に低レベルな争いで白熱しながら夜が更けていった・・・
それにしても、時速7キロ台でもストライクやスペアはとれるものなのですねぇ~

2013年2月15日金曜日

患者中心の症例検討~家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾~

今宵は、ファカルティーのT先生の経験症例をもとに、家庭医の役割りについて議論した。うまくいったこと。出来なかったことを整理しながら、貴重な経験をこれからの診療に活かしていく・・・そんな建設的な学びの場であった。
そして、疾患の診断・管理を正確に行うのと同時に、常に患者中心のケアを実践していくことの大切さと、奥の深さを再認識した。

勇気ある試みをしたT先生と教授に賛辞を贈りたい。

2013年2月11日月曜日

診療拒否の「正当な理由」とは何か?

最近、当直の度に一晩に救急車5~6台受け入れというのは普通で、10台近いこともまれではなくなっている。
当然、時間外に緊急検査体制を敷く人的余裕はない弱小病院であり、医師・看護師それぞれ1人の軟弱な当直体制で対応している。
いわき市内の救急車出動台数は、大雑把に年間10,000台前後で、当院は年間1,000台前後、つまり、10分の1程度の受け入れで推移してきた。
2次輪番病院が確か17病院ぐらいあることを考えれば、弱小病院の割にはまずまず身の丈程度に頑張っている方だと見積もっていた。
しかしそこで、ある疑問が・・・
最近よく見られる一晩で56台となると、ざっくり計算すれば市内全体の一晩の救急車出動台数の3分の1程度に相当する。
例年よりも救急車出動台数が増加しているのか?
全体に対しての当院での受け入れ比率が上昇しているのか?
それとも、その両者なのか?

救急車受け入れ依頼照会内容は多彩だが、当院が発生場所から直近でないのに依頼が来る場合のほとんどは、当直医師の専門外・入院病床が満床・他の患者の処置中などの理由で現場近くの医療機関から受け入れを断られたケースである。
ところで・・・
そもそも「専門外」「満床」「処置中」で断っていいんだっけ?
医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければこれを拒んではならない」と規定している。
つまり原則断ってはいけないのだが、詳細は「正当な理由」とは何かにかかってくる。
関連通知文として、医発第752 号「病院診療所の診療に関する件」、日医収第755 号「所謂医師の応招義務について」の記載を参考にすると・・・

【正当な理由にならないもの】
・お金を払わない患者の診療拒否
・診療時間外の急を要する患者の診療拒否
・緊急の治療を要する患者であって,その近辺に他の医師がいないのに、特定の場所の人々を診る医師だからと診療拒否
・単なる天候の不良を理由とし往診拒否
・標診療科以外に属する疾患であるが、患者がそれでも診て欲しいと求めているのに診療拒否
・単に軽度の疲労を理由とする診療拒否

【正当な理由に該当するもの】
・診療時間外であって,軽度な患者の診療拒否
・地域で休日夜間診療体制が敷かれており,かつ軽傷である患者の診療拒否
・医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合
・標診療科以外に属する疾患であり,患者が了承した場合

つまり、専門外であっても、患者がそれでも診て欲しいと求めていれば診療拒否できないことになる。
逆に、診療時間外の急を要さない患者さんは診療拒否できる。更に、地域で休日夜間診療体制が敷かれている場合の軽傷患者は診療を拒否してもよい。
処置中というのも、本当に急患がたてこんでいれば、医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合に準じるので正当な理由のように思われる。
ただし、満床に関しては、初期治療を断る正当な理由にはならないかもしれない。
事実、実際に診療してみなければ、入院が必要かも、専門外(専門医でないと対応できない状況)かどうかも判断できないことも多い。

いずれにしても、各医療機関の実情を考慮すると、この法律を遵守することは、困難になってきている。もしも、遵守を強要するような圧力が強まれば、細々と出来る範囲で何とか頑張っている医療機関や職員らが次々に崩れていくに違いない。
こういった地域医療の歪みの多くは、最終的には、やめるにやめれない、断るに断れない地域の基幹病院にシワ寄せがいくことになる。
しかし、そんな中でも、日々必ずどこかで誰かが個人レベルの努力で何とか対応しているということを忘れてはいけないと思う。
そういった使命感に燃え決壊を食い止めている人達の心身が折れてしまう前に、いまの状況を何とか変えなければいけないことも忘れてはいけない。

2013年2月6日水曜日

お知らせ! 第80回 Family Medicine Resident Forum@喜多方

台湾の若手家庭医によるプレゼンやら、ボーリングやらで、盛りだくさんの内容です!


80Family Medicine Resident Forum@喜多方
2013216日(土)14時~18時頃

対象:家庭医療に興味がある方ならどなたでも
内容
①自己紹介
②研究発表 東京医科歯科大学4年 原萌さん
Reflection of the Month 川名瞳先生
④台湾の家庭医療 廖育婉(Liao Yu-Wan)先生
 休憩
⑤患者中心の症例検討 田淵智子先生withいわきチーム
⑥あっちゃんの考える診断学 石井敦
Cinemeducation 葛西龍樹教授
 記念撮影

懇親ボーリング大会:喜多方スターボウル 19時頃~


参加希望の方は、福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座
 comfam@fmu.ac.jp (担当:國分、玉木)までご連絡ください。
交通手段、懇親会についてもご相談ください。

2013年2月5日火曜日

試験対策もどき ~プライマリ・ケア認定医試験~

2012年11月に受験した、日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定医試験の合格通知をいただいた。
そんな大事な知らせなのに、到着してから数日、開封されることもなく自宅で放置されていて、下手すればゴミ箱行きだったかも知れないところが我が家らしいところ・・・

で、自身が合格したということは、私が「こうしてよかった」「これを書いてよかった」と感じたことは、あながち間違いではないということが判明したので、これから受験される方々のために、試験対策もどきを綴りたいと思う。



形式:MEQ(Modified Essay Question)試験
2時間で必須4題+選択2題の6題(1題あたり20分配分)
鉛筆と消しゴムを武器に、無い知恵絞って書きまくる感じで、あっという間の2時間
個人的には、自由記載のため、書いておきたいことが次々に沸いて出てきて、120分あっても案外忙しい印象


<必須分野>
①日常病(急性期・慢性期)
42歳女性。慢性咳嗽のマネージメント!
頻度が高い鑑別疾患として、副鼻腔炎、咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、百日咳、ACE阻害薬の副作用などが挙げられることと、鑑別するために必要な病歴聴取、それぞれの治療薬の選択ができるかどうかが問われた。
「頻度が高い」という縛りがあったので、いきなり、肺がんや肺結核を念頭にした精査という方針を記載した方は、加点が少なかったものと思われる。

過去の出題としては、気管支喘息発作時の対応、胆嚢ポーリープのフォローアップ計画、ヘリコバクターピロリ感染症への除菌療法などがあり、日常診療で頻度の高いシチュエーションや疾患の診断の鑑別・標準的治療に関する基本事項を整理しておくとよいと思う。

②高齢者・在宅医療
91歳男性。老衰の在宅看取りに関する問題
悪性腫瘍、臓器不全、老衰、突然死、それぞれの終末期にたどる経過の有名な図
Patterns of Functional Decline at the End of Life
JAMA. 2003;289(18):2387-2392. doi:10.1001/jama.289.18.2387.
が示され、老衰の時にたどる低空飛行から着地する曲線を選択する問いがあった。

次の問いは、もろにプライマリケアの基本理念“ACCCA”の理解と問うものであった。
ACCCA”を、この高齢者の在宅看取りにおいて、具体的にどのように適用していくのか?
例えば、Accessibilityといっても、単に自宅と診療所が近いというだけでなく、医師が自宅に訪問するフットワークの軽さや心理的近接性を示す。とか、Comprehensivenessといっても、単に患者さん自身の病状を包括的に診るということだけでなく、その心理的・霊的な部分を含み全人的に、更にそれを支える家族や社会を含めて包括的に!とか、ContinuityAccountabilityと言っても、単に患者さんのお看取りまで責任を持って継続的に診るということだけでなく、残された家族への死後のケアも含む。とか、この問題を出されてしまうと、書きたいことが次々に溢れ出て、とてもありがたい半面、時間は足りなくなる。

過去の出題としては、認知症などがあり、認知症の中核症状・周辺症状が問われたり、「確認するべき情報は?」のような問いの時には、高齢者総合的機能評価(CGA)の項目を覚えておくととても役に立つと思う。
家庭医療専門医試験の実技試験では、介護保険申請のための主治医意見書がスラスラ書けることが求められるのは有名な話。

③患者教育・慢性病
50歳男性。禁煙指導の問題
「禁煙指導のための標準手順書第5版」から下記が問われた。
<「ニコチン依存症管理料」の保険給付の要件>
・直ちに禁煙しようと考えている
・ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)による診断(TDS:5点以上)
・ブリンクマン指数:200以上
・禁煙治療への文書による同意
<初回診察時に説明・確認すべき項目>
・評価結果の確認
・呼気CO濃度測定等の客観的評価
・禁煙開始日の設定
・禁煙開始のあたっての問題点の把握とアドバイス
・禁煙補助薬(ニコチン製剤・バレニクリン)の選択と説明

過去の出題では、健診異常を理由に受診した患者さんにおける問題点を抽出し、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの具体的な診断・管理手順はもとより、禁煙指導など予防的介入などにも積極的である姿勢があるかどうかを問われるものが多いようだ。

④EBM
英語の論文
Effects of eicosapentaeonic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients(JELIS): a randomized open-label, blinded endpoint analysis.)
の抄録を読んで、研究デザインやPECOが読み取れるか?研究結果を自身の診療に適用する際に、臨床的意義と統計的意義の相違や、患者背景の違い、アウトカムの相違、バイアス、利益相反の開示の確認、など批判的吟味が出来るか?という感じで、例年英論文を通してEBMの基本的知識が問われている。つまり、抄録にそのものズバリの解答が書いてある。


<選択分野>
以下より2分野を選択
問題を確認してから解けそうなものを選択できるので、一通り学んだ方のほうが有利か
家庭医療専門医試験の場合はすべて必須!

①小児医療
小学1年の男児。咽頭結膜熱の診断(迅速キットを含む)、治療(対症療法)、飛沫感染を考慮した伝染予防の指導、学校保健法で第二種伝染病に分類され、主要症状消退後2日経過するまで出席停止。このあたりが問われた。

過去の出題では、やはりインフルエンザ等の急性発熱や熱性けいれんなど、頻度の高い急性感染症&合併症に対する、診断・治療・患者(保護者)への指導、ワクチンの知識などが試験のヤマになっているようである。

②メンタルヘルス
52歳女性。震災で肉親を失った方のメンタルな病状の解釈とサポートに関する問題。
通常の悲嘆反応に、うつ状態、不安障害、睡眠障害が合併していると思わるケースであったが、そう判断した根拠も含めた記載が求められた。
また、著明な体重減少をともなっていることに対して、身体疾患合併の可能性の評価の必要性を指摘すること、社会・心理的支援の必要性や利用可能な医療・福祉資源の中での具体的な方略が問われた。
最後に、抗うつ薬・抗不安薬による、投与量を含めた具体的な初期治療計画例も問われた。

③緩和ケア
83歳男性。胃癌の終末期のケアに関する問題
ケアを開始するにあたって必要な情報、アセスメントについて問われた。
食欲・食事量、睡眠、排泄、入浴などのADLIADLの把握。介護保険申請の状況、自宅環境、趣味、死生観、癌性疼痛の状況などが求められた。
癌性疼痛に対する薬物療法(具体的な初期投与例も含む)に関して、麻薬の副作用や対策など基本的事項が問われた。

過去の出題でも、WHOの疼痛ラダーなどの疼痛管理の基礎、患者さんの総合的評価、利用できる心理・社会的サポート、グリーフケアを含む家族へのケアなどが問われているようだ。

④ウイメンズヘルス
70歳女性。尿失禁に関する出題!
一般的な尿失禁の分類(腹圧性尿失禁の鑑別病態として 切迫性、溢流性、機能性、反射性など)、既往歴・基礎疾患や常用薬の確認や排尿回数・1回尿量などの詳細な病歴聴取による診断手順、行動療法(骨盤底筋訓練・膀胱訓練など)や薬物療法などによる腹圧性尿失禁の初期治療戦略などについて問われた。

過去の出題では、更年期障害とその併存疾患(うつ状態など)、ホルモン補充療法の適応や禁忌、風疹やHPVなどの各種ワクチンに関する知識などが問われている。




全体を通して思ったことは、回答数が指定されている(それ以上書くと減点対象になる)問題以外は、出題の意図かもしれないと思ったことなら何でも書いておいた方がお得だということ。その内容が妥当であれば、仮に出題の狙いから外れていても、加点対象になる可能性が高い。
プライマリ・ケア領域で用いられている各種診療ガイドラインは、受験時に日本で用いられているもので良いので、最新のものの概要は、ガイドラインの名称と合わせて知っておいた方がいい。加えて、外来管理に影響をあたえるようなトピックス(HbA1cにおけるJDSNGSPへの変更など)や、新規導入薬(ダビガトランなど)に関する知識は、おさえておく必要がありそうだ。
どの設問にも共通して言えることは、常日頃から患者中心の医療の方法や高齢者総合的機能評価など、質の高いプライマリ・ケアの提供を意識した診療をしていれば、たとえ詳しくない疾患が出題されたとしても、何も書けないということはなさそうである。
つまり、質の高いプライマリ・ケアを提供できる能力が、そのまま試験合格につながりやすい。そのように設計された良問であると感じた(私見)。