2018年9月21日金曜日

「アンガーマネジメント」 ~後悔するような怒り方をしないために~


2018920日開催の実践家庭医塾において、アンガーマネジメントについて講義をさせていただきました。アンガーマネジメントとは、1970年代に犯罪更生目的に米国で始まった怒りを予防し制御するための心理療法プログラムであり、怒りを上手く分散させることができると評価されています。感情の中でも特にマイナスな結果を引き起こす原因となりがちな「怒り」に正しく対処することで、健全な人間関係をつくり上げる知識・技術を修得することを目的としています。
みなさんは、怒りをもてあましていませんか?キレやすい性格の私は、怒りの感情を抑え切れずに失敗したこと数知れず、日々イラッとして思わず不機嫌な対応をしてしまったり、ムカッときて、つい言わなくても良いことを言ってしまったり、相手の理不尽な言動に、思わず下手な怒り方をしてしまいます。古代ギリシャ哲学の巨人、アリストテレスですら「怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである。しかし、適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない」という言葉を残しています。
アンガーマネジメントは、決して怒らない技術ではありません。そもそも「怒り」はなくせません。アンガーマネジメントは、どうでもいいことで怒ったり、後悔するような怒り方をしない技術であり、ムダに怒らずに「怒り」の感情を上手に受けとめて、マイナスのエネルギーをプラスに転換するものです。
ひとは誰かの言動や出来事に遭遇した時に、それぞれの価値観や当たり前と思っているルールと照らし合わせて、それがどういうことなのかを考え意味づけをします。その結果、それが許せないものであれば怒りが発生します。しかし、各々の価値基準は一人ひとり異なるため、自分の理屈や一般常識は他人には必ずしも通用しません。このギャップが怒りの原因となるわけです。裏を返せば、人は一人ひとり違っていることを当然のこととして受け入れ、自分の価値観や常識を押し付けることなく、相手を思いやりながら、許容範囲を広げることができれば、怒りの多くをマイルドなものに抑えることができるのではないでしょうか?
また、怒りによる衝動的言動をコントロールするための重要なスキルに「6秒ルール」というものがあります。脳内で怒りの感情が発生しても、6秒間我慢できれば理性が介入し、怒りが静まってくるというものです。つまり、呪文でもルーチンな動作でも何でもよいので、個々の性格に合わせて、とにもかくにも6秒間やりすごす術を準備しておけば、衝動的言動で最悪の事態を招くことを回避できるでしょう。
家庭医塾では、参加者の皆さんの怒りの体験をもとに、何が許せなかったのか?どうすればより良い対応ができたのか?などを振り返っていただきました。キレやすい私とは違って、多くの方々が無意識下で既にアンガーマネジメント出来ていたことを知り、とても感心しました。今後は診療の場だけでなく、職場での人間関係や教育、プライベートに至るまで、アンガーマネジメントを意識して日々精進してまいります。


 久しぶりのご褒美の打ち上げ!
 怒りと上手に向き合うことができると何か良いことがあるものです。

2018年9月15日土曜日

ときめきの秋 ~第137回 FaMReF~




「ときめきの秋」
~悩める10代、オレらが診なきゃ誰が診る!?~

こんなタイトルで喜多方市家庭医療センター「ほっときらり」で開催された家庭医療レジデント・フォーラム
自身の青春時代を振り返りながら、思春期の患者さん特有のコミュニケーションにおける困難を感じた時、特に話をしてくれない時に考慮するべきことは何か?
話したくないのか? 話ができる雰囲気を作れていないのか? はたまた親から口止めされていないか? 話したいけどうまく表現できないのでは?
話をしてくれないという場面ひとつとっても、様々な配慮を要します。
心身症においては、身体的因子や心理社会的因子を起点に、症状へのとらわれ、二次的不安(予期不安)を来たし、不安・抑うつ、行動障害へと悪循環を招いていきます。
このことを打開していくためには、非常に多くの時間と労力を要するでしょう。
それゆえに、思春期の患者さんの診療を得意とする臨床家はほとんどいないと思います。
だからこそ、家庭医として小児期からの患者の家族背景、心理特性、個性などを把握し、常日頃から患者-医師関係を築いておくことが重要だと思います。


全体的な印象としては、用意された教育セッションはもとより、青春の甘酸っぱさを意識した喫茶コーナーなど、遊び心もある良く準備された企画だなぁ~と感じました。
準備してくれた喜多方のメンバーに感謝します。