2015年6月26日金曜日

予防から看取りまで ~家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾~

昨夜の実践家庭医塾は盛りだくさん。
特盛浜焼き状態!
 
まずは、中山理事長による高知県視察報告。
高知県は、大都会である高知市と、それ以外の地域との格差が激しい。
僻地では、救急と看取りを最低限どう担っていくか?ということが課題のようだが、
それは、全体的に医療過疎化しているいわき市でも同じことがいえる。
行き届かない予防医学が救急患者を増やす一方で、一次医療圏で救急や看取りに積極的な施設が絶対的に不足している。
その分、二次輪番病院や三次医療機関に救急と看取りのニーズを持った非かかりつけ患者が殺到する。
そういった状況にあえぐ東西の太平洋岸同志で知恵を出し合い、励まし合えたらいい。
 


 
引き続き、いわきでの地域医療研修を経験した臨床研修医らの集大成ともいえるプレゼン。
「ユーモア大事だよ!」
「笑いとってね。」 
1ヶ月にもわたる僕のパワハラにも負けずに、2人とも面白い発表をしてくれた。
疾病の予防段階から終末期にいたるまで、高齢患者とのかかわりを通し、これからの超高齢社会に必要なケアについて、広く深く学べた様子がわかり、とてもさわやかな気持ちと、明日への活力をもらえたので、めだたく恒例のご褒美の宴(ものほんの特盛浜焼き)へと移行していくのであった。
 
それにしても、湯本のモツ煮込みの名店「もくべぇ」の鹿島店(しちりんや「もくべぇ」)オープンはめでたいニュース!
 

 
 

2015年6月20日土曜日

土曜の午後はさわやかな快晴! しかしながら・・・ ~第31回 養生会 院内研修発表会~


研修委員長を拝命して3度目の院内研究発表会。
研修委員会最大のイベントである。
さわやか快晴の土曜の昼下がり。
どう考えても海や野山に繰り出すほうが健全な気がするが、80席ある会場は一時立ち見が出るほどの活気!
熱心な職員の皆さんに感心する次第である。

 
超高齢社会を前に、医師・看護師・介護士それぞれの立場から、院外(介護施設・在宅)看取りにまつわる発表があった。
患者・家族の望みに沿ったケアを実現したい、患者・家族ともっともっと関わりたい反面、明らかな人手不足は、それを困難にしている。
発表の中でそんなジレンマが吐露されたりもした。
それでも私たちを支えているものは何か?
それは必要とされる喜びと使命感・やりがいのように思う。
結局わたしたちは“やりたくてやっている”のである。
たとえいま、理想のケアができていなくても、理想を諦めたらそこで試合終了!
理想を追求し続ける限り、不可能が可能になる日は必ず来る。
多職種総動員はもちろんのこと、地域全体を巻き込み、地域に組み込まれていくことが、当院の役割であるという自覚を新たにした爽やかな土曜日の午後のひと時であった。

 

2015年6月16日火曜日

人びとの暮らしを支える医療人の育成(第6回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会)









201561314日に、つくば国際会議場で開催された、第6 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。
今回のメインテーマは「人びとの暮らしを支える医療人の育成」でした。次世代の地域医療を担う人材を育てるために、我々が何を学び、何をなすべきかを共有する機会にしたいという 前野 哲博 大会長(筑波大学医学系 地域医療学 教授)の想い通りに、地域に望まれる総合診療医の教育のあり方について、各シンポジウムや教育講演、発表等で活発な議論が繰り広げられました。
メインシンポジウム「総合診療医のキャリア形成を考える」では、3名のシンポジスト(WONCA元会長Chris van Weel先生、福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座 葛西龍樹 主任教授、シンガポール家庭医学会会長Lee Kheng Hock先生)それぞれが、医療事情や文化・時空の垣根を超えて「総合診療専門医はプライマリ・ケアの専門医であるべき」という共通認識・理解のもと、診療・教育・研究のすべての領域において地域を基盤としたプライマリ・ケア設定の環境での研修が必要であることを強く主張されていた。そして、人びとの暮らしを支えることができる医療人を育成するために、永きにわたって諦めることなく、たゆまぬ努力を続けてこられたこと、そしてこれからも次世代の地域医療を担う人材を育てるための活動を更なる加速度をもって活動し続けていくという決意が感じとれました。
今回の学術大会全体をとおして感じたことは、若手医師・研修医・医学生の活躍が著しいということです。今回学会発表を経験した当院の渡邉聡子医師・藤原学医師・本多由李恵医師のように、プライマリ・ケアに求められる役割を正確に理解した次世代の医療人の活躍が、目前に迫った我が国の超高齢社会におけるヘルスケアシステムの充実のために不可欠です。

これまで当院が取り組んできた家庭医(総合診療医)・病院総合医の育成のための活動、地域に根ざした医療啓発活動は、まさに時代に求められている重要な役割を担っているということを再認識しつつ、今後は、いわき市鹿島地域における当院の役割を、単に医療連携という切り口だけでなく、地域社会全体における公共的資源として組み込んでいく、組み込まれていこうという広い視野をもって、地域のあらゆる分野の方々との協働を続けていこうと思います。

2015年5月31日日曜日

嫉妬するほど楽しそう ~家庭医療に学ぶ3つのカタ~

今回はいわきでお留守番のわたくしですが、今週末は福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の主催で「臨床能力を深める! 家庭医療に学ぶ3つのカタ」なる、主に臨床研修医向けの泊りがけ教育セッションが開催されています。
同じく恒例のFACEとかぶってしまったのも残念ですが、Facebook等で紹介されているセミナーの様子があまりにも楽しそうです。独り嫉妬しているところですが、折角なのでこのブログでも内容を紹介してみます。
初日の会場は、郡山市街の「ほし横塚クリニック」
本セミナーの企画者、豊田喜弘君(専攻医2年目)の司会。アイスブレイクのお題は 「草食系⇔肉食系 情熱的⇔理性的 のマトリックス」を利用していたようですが、自分がどこに当てはまるか分かりません。時に草食、時に肉食、時に情熱的であり理性的でもあるので分類不能、、、やっぱり変人(変態?)なのでしょう。
葛西教授の基調講演
神田祭の話、FRCGP(英国家庭医学会最高名誉正会員・専門医)の話から今回のテーマである「カタ」へ。時代の変化で変わることと変わらないこと。医師としての行動の根本に据えるものとして、変わらない「カタ」をこの勉強会から学んでほしい、というメッセージが贈られたそうです。
 
髙栁先生による1つ目のカタは「身体所見の診カタ」
病歴でおおよその診断をつけた上で身体所見を有効に活用していくことが大切で、日ごろなんとなく儀式的とっている身体所見にも、案外使える・使えないがあること。その一方で認知バイアスを避けるきっかけに身体診察が役立ったりすること。症状のあるところを見て触って診察して、という基本に忠実な診療が大切であること、というメッセージが伝えられたようです。
初日終了後は、三春町にある三春の里田園生活館に移動し、懇親会・バーベキュー。
ビールがメチャメチャ旨そうで、MAX嫉妬します。
鉄人(教授)自ら焼いていただけるのはいつもの光景(笑)


 二次会ではゆる体操を交えて楽しく、更に交流を深めた様子っですね。

心地よい風の吹く三春町さくら湖近くにある会場(自然観察ステーション)での2日目。

菅家先生による2つ目のカタは「患者の訴えの聴きカタ」
患者さんのまとまらない話を「不定愁訴」というラベリングをせずにどう対応するか。患者さんの話を「聴く」ために何ができるのかを学んだようです。

望月先生による3つ目のカタは「悪い知らせの伝えカタ」

SPIKESSHEREモデルを踏まえた基本知識を紹介し、ロールプレイでポイントを踏まえた病状説明に挑戦したようですが、マニアック(上級かつ応用編かつ独創的)な内容が得意な望月氏が本当に初級編をレクチャーしたのか?半分は信じていません(笑)


2015年5月28日木曜日

二次医療圏から見た風景とは? ~家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾~



今年も、東京慈恵会医科大学病院の臨床研修医が、月替わりでいわきに学びに来ています。
今月の彼は武闘派アスリート!
暇を見つけては、車に頼らず自分の脚でいわきの街並みを走りまくり、この地の風土を肌で感じでくれた。
そんな彼が、地方都市の二次医療圏から見た風景は、いささか衝撃的だったようだ。
大学病院など高度先進医療を担う特定機能病院(三次医療圏)では、「○○科の○○先生に○○病の患者さんを診て欲しい」という、いかにもピンポイントな紹介状を持参して受診する患者さんが比較的多い。当然、紹介を受けた医師がなすべき仕事・役割が非常~に分かりやすい。
ところが、当院のような中規模医療機関(二次医療圏)では、むしろ「何科の先生に診てもらえばいいか分からない」という理由で受診する患者さんが かなり多くみられる。

「おやっ?」

「何科の先生に診てもらえばいいか分からない」という患者さんの相談にのる。
それって、診療所(一次医療圏)の役割では?

「何科の先生に診てもらえばいいか分からない」と言って、かかりつけ医がいるのにもかかわらず紹介状を持たずに来院する患者さんがあまりにも多いので、その何人かに聴いてみる。
「かかりつけの先生には相談しましたか?」

A:「相談して薬をもらったけれど良くならないので…」
B:「相談したけれどスルーされたので…」
C:「相談したけれど専門外だから他に行くように言われたから…」
D:「怖くて相談できない…」
E:「相談したら叱られた…」

「一体なにが起きているのか?」

研修初日から衝撃を受けた彼が地域で学び行き着いた結論とは…

「地域医療とは、単に地域で医療を行うことではなく、地域に必要な医療を提供すること」
「地域に必要とされる医療と、実際に地域で提供されている医療とのミスマッチを是正しなければならないし、医師はその能力を身に付ける努力をするべきだ」
彼の力強い訴えに深く共感した。

2015年5月25日月曜日

感動のエンディングから明日への誓い ~家庭医道場 2015 in ごっくん馬路村③~

最終日…
夜遅く(朝早く?)まで頑張ったので、かな~り寝不足だが、探究心の炎は絶やすものか!
今日も気合で乗り切ろう。
前日、馬路村の人々やその生活について五感で体験したことをもとに、その中で必要な医療・福祉について考えてみようというのが最終日の課題。
社会福祉士、保健師、看護師、医師、各専門職の立場から普段の仕事、村での生活、想いなどを語ってもらった後に、学生との活発な質疑応答で、更に理解を深めていく。
最後の仕上げに、各自MYSELFを見つめ、決意表明してワークは修了!
今回の高知訪問全体を通して感じたことは、出会ったすべての人々が、職種や立場を問わず他人や地域の必要に対する深い敬意と愛情を持って真摯に生きているということ。
馬路村民900名余りが、一致団結してそれぞれが歯車になり、幾多の危機を乗り越え、これからの困難をも新しい発想力で切り拓こうとしている。医療・福祉に携わるスタッフもその一員として地域とともに生きている。
勿論、限界集落という逆にまとまりやすいコミュニティーの規模だからできることなのかもしれない。
しかし、やりにくいからやらないというわけにはいかない。
いわき市で起きている問題を、もういちど見つめなおし、地域に必要なことを見極め、地域のためになすべきことを続けつつ、少しずつでもできることを増やしていく。
コミュニティーが大きい分、一度回り始めれば、そのパワーは計り知れない。
「オールいわきをあきらめない」
これが私の決意表明である。



そして、阿波谷教授をはじめ、医学教育に携わる皆さんの根底からジワジワ滲み出てくる情熱と無償の愛に強く感銘を受けた。
今回、高知の皆さんと時間と空間を共有させていただいたことに心から感謝し、いわきへの帰路に着いた。

深く険しい山道の中、突如あらわれるヘリポート。
救急搬送のための最後の砦。




村の基盤となっている柚子加工工場
最高の天気
土佐湾がやさしく見送ってくれた

高知市から馬しか通れない路へ ~家庭医道場 2015 in ごっくん馬路村②~

さあ、今日から2日間。
馬路村を堪能するぞ~!
というわけで、昨夜夜更かしした割には興奮気味のため、きっかり朝5時30分に起床。
高知市を後にする前に、高知城までジョギング。
石段を一気に駆け上ると、眠気も吹っ飛んで準備万端。


高知大学医学部に到着し、実行委員の皆さんのミーティング。
丁寧に準備をされてきただけあって、皆さん気合が入っていて、しかもとても楽しそう。


一気にバスに乗り込んで、定刻に発車!
家庭医道場の旅が定刻通りに出発できたのはとても珍しいそうで、曇りがちの空の行方が更に心配に…(笑)


不安とは裏腹になんとか天気がもちそうで、壮大な土佐湾を拝みながら、ここからはしばし海とお別れし、一路内陸の馬路村へ!
馬路の由来は、馬でしか通れないような悪路でしかアクセスできない秘境だったからだそうだ。



今回は、交互通行が必要な細い道ながら、馬の道ではなく舗装された道を素晴らしいドライビングテクニックのバスで、順調な旅。
とは言え、よく鹿と激突する危険な道とのこと。



 さあ、馬路村へ到着。
まずは、馬路診療所で、村で唯一の医師、中川大輔先生とご対面。
施設の概要を説明していただいた。
900人余りの村民の医療ニーズに日々真摯に向き合いながら日々研鑽を積まれている様子がよく理解できた。


新築したての杉の香りに癒される診療所の中や、村のいたるところに、こんなホンワカするメッセージが散在していて、心を温めてくれる。




空と山と川と田んぼと柚子畑と小さな集落しかない長閑な風景。




今回の会場+宿舎の うまじ温泉に到着!

家庭医道場オープニング!

実行委員の決めた今回のテーマは「知ろうよ!UMAJI、見つめよう!MYSELF

地域で働く医療者を知るには、まず地域を知ること。

また、馬路のことを知っただけで終わらせるのではなく、自分自身がどういう医療者になるのかということも考えるようになってもらいたいという気持ちが込められているそうだ。

この発展性のある企画力と、ただプログラムを与えられて受動的に学ぶのではなく、学生が主体的に企画・運営しているところにまず感心させられた。


阿波谷教授の開会宣言に引き続き、馬路村の上池村長の講演会。

村の窮地をチャンスに変えていくバラエティー溢れる発想力に驚かされるばかり。

さて、お待ちかねの昼食
 

ランチョンセミナーでは、福島・いわきの現状や取り組みについてお話する機会を与えていただいた。遠い東北の地でも、共通の想いを持ってもがいている人たちがいるということを知ってもらえたなら嬉しい。

午後は、馬路クエスト。

つまり、みんなの足と五感で馬路を楽しみ、馬路の人々の生活を知り、医療のことを考える準備としての探求の時間である。

馬路クエストでは、林業、農業、観光、子育て、川、環境、食文化、行政など9つのテーマに分かれて、地元の皆さんに案内していただきながら馬路村を満喫し、のちに夜の意見交換の場で各チーム経験したことを発表。初めてウナギをさばいたりしながら、地域の方々のあたたかさや、地域の課題などを深く感じ取っているようだった。

天然ウナギをさばいたら、すぐに炭火であぶって…


さすが西日本は、日が沈むのが遅いので、夜になってもまだまだ明るい(笑)
そして、高知県安芸郡の地酒は旨い。
ついつい酒がすすんで大盛り上がり!


 

仕上げは肝試し・・・
漆黒の闇には危険がいっぱい。