2021年1月24日日曜日

慢性の健康問題こそチームプレーのみせどころ ~第159回 家庭医療レジデント・フォーラム from 保原~

本日の家庭医療レジデント・フォーラムも、今となっては標準となっているオンライン開催でした。

本日のメインテーマは「慢性疾患のケア」

継続的に長期に患者とかかわる家庭医にとって、慢性疾患のケアは、それ自体が腕のみせどころですし、最大のやりがいでもあります。

しかし、実際に家庭医が患者さんと共有できる時間は、患者さんの人生全体からみると、ほんの僅かですし、患者さんを取り巻く環境すべてに直接的に介入することは不可能です。

これらの足りない部分を補うためには、公的な資源や多職種を巻き込んだチームアプローチを駆使して、継続的な支援を提供し、患者さんのセルフケア能力を開拓していくことが、良好なアウトカムにつながることを再認識しました。

フォーラムのために充分な準備をしてくださったホストサイトの保原中央クリニック のチーム力に敬意を表します。




2020年12月19日土曜日

シネメデュケーションも復活 ~第158回 家庭医療レジデント・フォーラム from 郡山(オンライン)~

今回の家庭医療レジデント・フォーラムもオンライン開催でした。
Zoomを用いたオンラインでの勉強会にもだいぶ慣れて、小グループディスカッションもスムーズに進行するようになりました。
今回は、Zoomでは不向きとされる動画の共有を含むセッション「シネメデュケーション」も試行錯誤しながら再開され、学びの幅も現地開催と遜色ないレベルになってきました。
オンライン忘年会も同日開催され、各自が勝手に好きなものを飲食しながら、メンバーそれぞれが公私ともに今年を振り返り、来年への英気を蓄えました。





2020年10月27日火曜日

消えたBPSモデル ~第157回 家庭医療レジデント・フォーラム from 喜多方(オンライン)~

20201025日、今回もオンラインで家庭医療レジデント・フォーラムが開催されました。


専攻医からの提示事例は、EBMの実践を通して、終末期の意思決定、家族志向ケアなど、総合診療医に求められる複数の領域にまたがる多くの能力が鍛えられるものでした。

直属の指導医とのやり取りを通じて成長してゆく学びの過程を垣間見ることができたし、フォーラム当日も、他の指導医らから、また別の視点から多彩なフィードバックがなされました。


指導医レクチャーのテーマは「BPSモデル」でした。

家庭医療専門医取得のために課せられるポートフォリオの花形領域であったBPSモデルが、新・家庭医療専門医では姿を消しました。この事実に対して、レクチャーを担当した豊田先生の解釈は秀逸でした。「本物の家庭医を目指すなら、BPSモデルは標準装備でしょ!」と言わんばかりに、BPSモデルは消えたのではなく、根っ子に潜り込んだわけで、つまり、すべての領域において当然のごとく常に意識しておくべき、本幹をなす基礎中の基礎であり、かつ最重要なアプローチであるとの主張でした。

トリを務めた武田先生の講義では、プラセボ効果とノセボ効果の話がとても楽しく興味深く、時間が許せば、一日中 議論をし尽くしたい感じでした。

全体として、運営側も参加者らも徐々にオンラインセミナーに慣れてきて、小グループに分かれてのディスカッションも、さほど違和感を覚えることなくスムーズに進むようになってきました。ウェブで共有できるホワイトボードを用いると、各グループで出た意見がリアルタイムにアップされるので、その場で他のグループの議論内容も直接確認できるし、そのまま記録にも残せるので、参加できなかったメンバーも後で学べます。

より良い学びの機会になるように取り組んでくださった喜多方の指導医陣に感謝申し上げます。

2020年10月19日月曜日

鬼中心の鬼退治は鬼満足度を高めるのか?

 アニメ「鬼滅の刃」が社会現象レベルの大ブームになっています。家族を鬼に殺された主人公の少年(炭治郎)が、鬼化した妹を人間に戻すために、鬼と戦うというストーリーで、原作は週刊少年ジャンプで連載され、コミックスの累計発行部数は、202010月発売の22巻で1億部を突破したそうです。まだ鬼滅の刃を観ていないけれど、これから楽しみたいという方のご迷惑にならないように、ここではストーリー展開には触れずに、私の個人的な解釈を紹介したいと思います。

物語の設定では、鬼は原則として人間の生き血を喰らわないと生きられないし、食べた人間の数が多ければ多いほど強くなれるので、できるだけ沢山の人間を襲います。当然、人間にとって鬼は悪であり、敵であり、恐怖の対象となりますので、人間は鬼から人間を守るために鬼退治に挑みます。

 しかし、主人公の炭治郎にとって、鬼=敵という単純な方式は成立しません。そもそも、彼にとって鬼となった妹は敵ではなく救うべき対象です。そういった複雑な境遇にある彼だからこそ、単純に悪い鬼をやっつける勧善懲悪の発想ではなく、襲い来る数多の鬼たちと真摯に向き合い、心を突き合わせて丁寧に対話し、それぞれ異なる個々の事情や想いに耳を傾けることができるのかもしれません。そして、鬼が繰り出す術は、それぞれの背景とリンクしていて、そこに攻略のヒントが隠れていたりします。結果としてそれが窮地から彼を救うことにもなるのですが、炭治郎に斬られた鬼もまた「分かってもらえた」安堵からか、穏やかな表情で最期をむかえます。

 医療にあてはめるならば、鬼は「人食病にかかった患者」という共通の疾患カテゴリーに分類されますが、同じ鬼であっても、それぞれの事情や立場、過去や家族・社会背景があり、そこには鬼ごとに異なる固有の苦しみや悲しみの体験、倫理観や人(鬼?)生観があるはずです。そこに焦点を当てて共通の理解基盤を築き、個別のケアに活かしていくアプローチが、患者中心の医療の方法であり、患者満足度や治療成績を高めるという多くの報告があるわけですが、鬼中心の鬼退治の方法を実践する炭治郎は鬼満足度が高いかもしれませんね。



2020年9月27日日曜日

いわき-只見 瞬間移動(オンライン) ~第156回 家庭医療レジデント・フォーラム~

 例年であれば、いわきから移動に片道4時間ほどかけて参加する只見での勉強会も、Zoomでのウェブ開催なので、開始直前まで呑気に自宅近くでランニングしていても間に合いました。

確かに効率は良いのですが、秋の只見へのプチ旅行も素敵なので、ちと寂しくもあります。


本日の専攻医からの提示事例は、総合診療医に求められる能力が、他領域にわたり複雑に絡み合いながら学ぶことができた示唆に富むものでした。単純でない事例では、診療の中で少なからずモヤモヤした感情や、しっくりこないストレスを感じるものです。しかし、その状況に耐えたり、ひたすらもがいたりすること自体が、総合診療医を育てるんだな~ と実感しました。


本日のレクチャーのテーマは「医療者自身のケア」でした。

職場のチームが良好であるとは、どのような状態でしょうか?

講師の若山先生から「心理的安全性」が保たれている状態であることが重要であることが示されました。自分の意見を自由に述べても理不尽に非難されたりせず、互いに信頼感や共通の目的意識、社会的使命に向かって、仲間とともに個々が役割を果たしていくことがとても大切だと思います。



2020年7月17日金曜日

コロナ禍を学びのチャンスに変えるには…

 私こと、実は今年度から市医師会附属いわき准看護学校の副校長に任命されました。言わずもがな、生徒さんたちにとって今年度の幕開けは、新型コロナウイルスの影響で、実習や授業の延期が相次ぎ、思い通りにならないことの連続で、そのことは、私たち教員にとっても同じでした。
 世界的に猛威をふるい続ける新型コロナウイルス。私たちは今、このコロナ禍から「何を学び、どう行動すべきでしょうか?」1学期の終業に際して生徒さんたちに贈ったメッセージの内容の一部を紹介します。



 私は以前から、そして今こそ「医療に携わる者は、医学教育を通して社会に貢献するべき」と考えています。医学教育といっても、それは必ずしも、学校や大学で行われるものだけではなく、医療従事者が、患者さんに行う指導や、一般の方々に行う啓発活動も含みます。つまり、一人ひとりが、医療のプロとして、自覚を持って正しく行動していくこと、それ自体が立派な医学教育になります。
 「教育は未来への贈り物」という言葉があります。1人の医療従事者が直接的に関わることができる社会貢献はほんの僅かですが、教育を受け、巣立った人たち、それぞれが、それぞれの持ち場で社会貢献し、更に次世代の人材を育てていけば、教育のバトンを未来へ繋いでいくことができます。
 いまの私から未来への贈り物があるとすれば、それは「ピンチをチャンスに!」という言葉です。現在、コロナ禍による不安と恐怖 が社会全体を覆っているように感じます。医療の現場でも先行きの見えないことが多く、それ故に、正論を振りかざして他者を厳しく批判したり、感情的になったり、という場面が多くみられます。不確実なことが大変多い状況にありますが、だからこそ、できるだけお互いの立場や状況を想像したり、配慮したりすることに意識を向けて欲しいのです。社会が混乱している今だからこそ経験できる、学びのチャンスが、そこら中に転がっています。患者さんのケアに携わる者にとって、こういった経験の積み重ねが、いつかかけがえのない財産になるはずです。
 夏休み期間中、生徒さんたちが医療人としての自覚を忘れずに行動し、コロナ禍を自身が成長するチャンスととらえ、来学期には人間としても、医療人としても、より成長した姿で登校されることを期待しています。

2020年6月21日日曜日

新人の自己紹介を聴いて指導能力を拓こう! (第155回 FaMReF)

診療・教育を県内各地の拠点施設に分かれて行なっている当講座は、もともと日常のカンファレンスやミーティングをTV会議システムで行っています。
「リモートは元々慣れっ子だい!」
しかしながら、月一回の勉強会(家庭医療レジデント・フォーラム)だけは オフ会的に いずれかの施設で一堂に会してワイワイガヤガヤ語り合えるのを楽しみにしているわけです。
今回は かしま病院が幹事で、テーマは「指導医の発展」でしたが、残念ながら、本日は新型コロナの影響でリモート開催となりました。
本来ならば、いわき観光を兼ねて皆さんに いわきの風土を楽しんでいただきたかったのですが、せめてリモートでも出来る限り楽しく学んでもらうにはどうしたらよいか無い知恵絞って準備しました。
新型コロナの影響で、新人レジデントの歓迎会すら疎かになっている状況を逆手にとって、講座のメンバーへの自己紹介を兼ねて、彼らには自由な形式で、自由な内容(できれば講座のメンバーにとって未知なる世界)を、自己アピールするプレゼンテーションをしてもらいました。
次に、指導医がその内容に対してフィードバック。
自己紹介にフィードバックという状況自体が斬新かもしれませんが、今回のセッションはそれにとどまらず、更に指導医のフィードバックの手法・内容に対して、別の指導医がフィードバックをし、次に その他の参加者や、最上級指導医(主任教授)から自由にコメントをもらう形式で進めました。
新人のプレゼンの内容が、絵画・旅行・グルメと、いずれも参加者の興味を引く内容であったことも手伝ってか?和やかな雰囲気ながら活発な議論が展開する良い学びの機会が創出されたように感じました。
フィードバックを担当した指導陣も、各々次のステップへの具体的な方略を見出だせていたことが何より嬉しかったです。