2015年2月20日金曜日

超高齢社会(多死社会)における より良い医療連携のために必要な診療情報とは?

2015年2月19日「いわき病院連携カンファランス」で基調講演の講師と特別講演の座長を務めさせてもらった。

私の基調講演の内容は以下

これからの超高齢社会
言い換えると多死社会
もっとはっきり言うと
素敵な看取りが求められる時代
終末期もしくは心肺停止等の急変の際に
積極的治療や蘇生処置、延命処置を望まない場合に
家族や多職種が協力し
自宅や介護施設などの病院以外の場所で
自然な看取りを実現できる体制づくりが
限られた医療資源を効率よく活用するために重要である

かかりつけ医とは?

日本医師会では以下のように定義している

何でも相談できる上
最新の医療情報を熟知し
必要な時には専門医・専門医療機関を紹介でき、
身近で頼りになる
地域医療・保健・福祉を担う
幅広い能力を有する医師

今の医学教育システムでこのような医師をどうやって育てるんだ?
というツッコミはさておき
この内容から素敵な看取りをすることにフォーカスすれば、

多死社会に最も求められる かかりつけ医の機能とは…?

私はこう思う。
対象となる患者を自分で看取る もしくは 責任を持って看取りまでの道筋を立てること

そして、かかりつけ医と呼べる医師を増やすには…
専門医療を要しない場合に、かかりつけ医は看取ることができる体制づくりが重要だと思う。

2015年1月に社団医療法人 養生会の常勤医師を対象(N:18 回答率:94%)に、診療情報を受け取る立場として診療情報・医療連携に関するアンケートを施行した。
病院勤務医が欲しがっているのにも関わらず充分に受け取れていないと感じている(極端な需給解離が示唆される)主な項目は…

①既往歴

②認知症の有無・程度

③家族構成・状況

④介護申請・ケアマネ等

⑤日常生活動作

⑥入院の目的(本音も含む)

⑦終末期・急変時の方針

この結果を見て、病院勤務医は、本来は疾患の治療に専念することを求められている立場でありながら、患者を入院管理する際に、高齢者を総合的に評価しなければ立ち行かないことを、きっと苦い経験を繰り返しながら無意識のうちに理解しているように感じ、とても腑に落ちた。
逆に、かかりつけ医から紹介先の病院勤務医に、高齢者総合評価に必要な情報が入ってこないとなると、スムーズに治療行為に入れないのだが、アンケートの自由記載欄には、「丸投げされていると感じる」という辛辣な意見も散見され、医療連携のおいて病院勤務医が抱えるストレスや不満が感じ取れた。
本来は、疾患の急性期治療に専念すべき病院の医師が、こういった基本的な情報収集や、終末期の基本方針についての患者・家族との相談に時間と労力を費やしているとすれば、いかにも非効率だが、実際はそのような事態に陥っていることが如実に示された結果といえよう。
特に、認知症ケアに関する医療連携・情報共有は不可欠!
互いの必要を理解し、共通認識・情報共有をもって、より良い医療連携を目指していきたいものだ。




さて、今回の特別講演の講師は、群馬大学大学院保健学研究科 リハビリテーション学講座教授の山口晴保先生
1976年に群馬大学医学部をご卒業後、群馬大学大学院博士課程修了(医学博士)。日本認知症学会副理事長。
ご専門はアルツハイマー病の神経病理学やリハビリテーション医学。
アルツハイマー病の病態解明を目指して、脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたって研究を続けておられる。
また、認知症の脳活性化リハビリテーションの普及や認知症サポーターの普及事業に力を注いでいる。
一方、群馬県の地域リハビリテーション協議会委員長として、介護予防サポーター育成などの事業にも注力され、著書「認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント」では、認知症の病態や症状を解りやすく解説し、高齢者の抱える心の問題を共有し、適切な医療・ケア・リハビリテーションを提供するための具体的な方法を示されていて、医学的な知識からリハ、ケア、食生活まで包括的な取り組みをすべて紹介しているので、認知症の全体像を捉えることができる。

ご講演により、適切な初期診断の方法や、病態に合わせた適切な処方の重要性など、認知症のケアにおける医師の役割が明確になったのと同時に、地域全体で楽しく認知症をケアしていこうという新たな視点を与えていただいた。

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