2014年7月16日水曜日

「終末期 とある家族の物語」~家族志向のプライマリ・ケアとともに考える~

先日の第94回いわき緩和医療研究会で、当講座の家庭医療後期研修医(かしま病院 総合診療科 渡邉聡子医師)が「終末期 とある家族の物語」~家族志向のプライマリ・ケアとともに考える~ と題して講演させていただいた。


患者さんが死に直面する時、つまり悪い知らせを伝える必要に迫られる時、患者さんやご家族とのコミュニケーションは難しくなる。そして、患者さんが「否認」や「怒り」の感情を表出した時、家族は勿論のこと、ケアにたずさわる医療スタッフの心をも激しく揺さぶる。こういった困難を克服するための方法論として、各種学会や研究会で様々なコミュニケーション技法が提案され、医療の現場で試行されているが、たとえ同じ終末期の患者さんであっても、その状況への受け止め方、悩みや苦しみ、病気の体験は千差万別で、患者さんの数だけ違った物語が存在し、更に共通の患者さんの家族であっても、その家族の数だけ別々の物語が創られていく。だから、既存のコミュニケーション技法や画一されたマニュアルを用いるだけで全てが上手くいくということはまず有り得ない。
今回の発表では、患者さんが治療不能な状況への怒りを表出されたことで、患者さんとそのご家族がそれぞれの立場で展開されていた個々の物語を深く探るきっかけになり、その中で本人もご家族らも互いに互いを気遣いながらも、絡み合って身動きがとれなくなってしまっていた事実を知り、患者さんとご家族らを結ぶそれら一本一本の糸を手繰り寄せ、ゆっくりと解いていくことで、患者さんへのケアの質を向上させるだけでなく、疎遠だった家族関係の修復という予期せぬ化学反応が生まれたという貴重な経験を参加者の皆さんと共有した。
演者の聡子先生は、スーツの腕をまくり終始熱血戦闘態勢で、力強くも丁寧な語り口で、患者さんとご家族が危機を乗り越えていくために、いかに家族志向のケアが有用で重要であるかを主張してくれた。歴史ある会で貴重な発表の機会を与えていただき、演者本人は勿論、私にとっても終末期のコミュニケーションの難しさと留意点、やりがいを再認識する深い学びの機会となった。



頑張ったらご褒美がお約束!

打ち上げではマグロの中落ちを自分でカリカリこそぎ取る幸せに包まれていた。

時を同じくして この会の当日に目出度くご入籍された別の後期研修医は、日帰りハワイ旅行を強行し、丁寧にお土産まで届けてくれた。


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