2016年10月30日日曜日

アレックスから学ぶ いわきの地域医療のあるべき姿

 2016年10月20日から11月11まで、メキシコからの交換留学医学生のJosé Alejandro Guerra(通称:アレックス)が福島に滞在し、県内各地に点在する地域・家庭医療学講座の教育拠点を見学・実習しています。勿論、かしま病院にも 10月25日から29日まで滞在し、私たちから多くのことを学び、私たちに多くのことを残して行ってくれました。
 彼の話によると、メキシコの医療システムは、日本と異なり、一次・二次・三次医療圏が明確に区分されているようです。一次医療圏では、予防医学を含む高頻度な状況に対する基本的な医療サービスが提供されます。扱われる健康問題は全体の80%程度に及び、国内全域の一次医療をカバーするべく、家庭医のみならず、アレックスのような医学生たちも、一次医療圏の戦力として第一線で活躍しているようです。二次医療圏は、一次医療を経て、循環器科、神経内科、腎臓内科、消化器科などのように、より専門的な診断・治療・ハビリテーションを必要とする患者に対し、総合病院や地域完結型の病院、小児専門病院や周産期医療センターなどで提供されます。三次医療圏は、国立医療センターや国立衛生研究所などに代表される先進技術を提供する特別に専門的な病院のネットワークです。 ここでは、二次医療圏の病院から紹介された、ごく稀な疾患の患者やハイリスク患者、より重症の患者の治療が行われます。メキシコでは学生も総動員で一次医療を支えているという事実と、アレックスの医学知識と医療技術の高さに驚かされました。
 しかし、アレックスとのやりとりの中で、私はあることに気づきました。私は学生であれ医師であれ見学(のみ)は認めない主義です。この地を訪れた以上、ただ見るだけでなく、いわきの地域医療に何らかの形で参加してもらっています。その考え方は、メキシコの医学教育や一次医療の現場に通じるものがあるように思いますし、「このまま続けていけばよい」と後押しされた気持ちになりました。
 よく呑み、家庭医療への熱い想いを語るアレックスに自分と同じ匂いを感じつつ、自分とは全く違い小顔でイケメンの彼の輝かしい前途を確信しました。
 




2016年10月16日日曜日

只見―いわき 往復6時間の距離を超えて… (第116回 FaMReF)



講座月例の Family Medicine Resident Forum(FaMReF)
本来は、月に一度 講座の指導医や研修医らが一堂に会して学ぶ機会です。
とはいえ、広大な福島県内ですから、西端に位置する只見と東端に位置するいわき間の移動は困難を極めます。
半日の勉強会への移動に半日かかるという状況を補うために、今回は通常の教育や打ち合わせ等に活用しているTV会議システムを活用して、只見開催のFaMReFに いわきから参加しました。
当日、かしま病院は電源システム点検のために停電という状況だったので、急遽バタバタと自家発電からTV会議システムに電源を引いて、なんとかフォーラム開始に間に合わせることができました。
協力してくださったシステム管理の皆さんに感謝!

直接参加が原則のFaMReFですが、県内各地の拠点では、留守番部隊も要るわけで、本来参加できなかったメンバーも、リアルタイムでフォーラムの内容を確認できて、ディスカッションに参加できることは、とても有用で、今後、この方法も積極的に取り入れていきたいと思いました。

2016年10月15日土曜日

超高速! 参勤交代 リターンズ ~東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修 2017年度地域医療研修説明会~

2016年10月14日の午後、臨床研修医の地域医療研修先として いわきを採用してくださっている東京慈恵会医科大学に、研修内容説明のために半日 日帰りの超高速 参勤交代を実行して参りました。
毎年恒例になりつつあるので、リターンズって感じです。
それにしても、同期の医師だけで40名以上って…
一堂に会すると壮観です。
「やはり都会は人口も医師数も半端ねぇ~な~」
でも、だからこそ、そうでない環境に身を置いて学んで欲しい!
そんな想いを熱く語りましたが、都会の若手医師から見ると、田舎のキモイおっさんですから、生温かいというか冷ややかな目線が痛いこと痛いこと…
それでも、いわきを選択してくれた先生方には、責任をもって濃厚な教育を提供します。
う~ん、やっぱキモイ…


2016年10月13日木曜日

おもしろおかしく旅立つ ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~ (院内講演会「Death Education」のお知らせ)


社団医療法人 養生会 かしま病院 平成28年度 院内講演会の第2弾は…
大好評を博した齊藤道也先生による第1回「禁煙のすすめ」に引き続き、
内田望先生による「Death Education」です。

おもしろおかしく旅立つ
 ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~

日時:平成28年11月25日(金) 17時30分~18時45分
場所:社団医療法人 養生会 かしま病院 コミュニティーホール

よりよく生き、よりよく逝く ために、終末期医療に携わる医療関係者はもちろん、超高齢社会を生きるすべての皆さんに考えていただきたいテーマですので、最高に“おもしろおかしい”講師をお招きします。ご興味のある方はどなたでもお越しください。



2016年9月29日木曜日

複数の健康問題にどう対応するか? ~実践家庭医塾~

本日の実践家庭医塾のテーマは、「複数の健康問題」入院を契機に受診医療機関を整理した事例
専攻医の経験事例をもとに、参加者全員で家庭医の専門性や役割について省察した。
多種の既往疾患があり、日常生活動作能力の低下のある患者で、中心となるケアの担い手が不在である方が緊急入院した際に、入院を契機にケアの窓口を一本化した事例を通して、家庭医が介入することにより、医療過誤リスクの低減、医療費・ポリファーマシーの減少、入院リスクの低減、入院となった際の必要十分な情報提供、不要な検査や入院期間の短縮などの可能性が示唆された。
また、原因はともあれ、既に経口摂取困難、意思疎通困難、寝たきり状態と、日常生活動作のほとんどに介護を要する状態である場合、個々の疾患の診断・治療に関して、どこまでの医学的介入をするべきか?
こういった場合、多くの医学的問題が複雑に絡みあい、悪性疾患の有無に関わらず、臨床的に予後が悪い、つまり終末期にさしかかっていることがほとんどである。
ご本人・ご家族のご意向を鑑みて『患者にとって最善』と思われる終末期の意思決定をサポートしつつ、家族が肉親を看取ることを受容できるように支援していくことも私たちの重要な役割である。

2016年9月26日月曜日

ポートフォリオを用いた医学教育 (第115回FaMReF)

 2016924日 伊達市の保原中央クリニックで、第115回 家庭医療レジデント・フォーラムが開催されました。
 日本プライマリ・ケア連合学会では、家庭医育成のための医学教育の手法として、ポートフォリオを導入し、家庭医療専門医コースの専門医試験にも活用しています。
 ところで、ポートフォリオとは何でしょうか?
 ポートフォリオの本来の意味は「書類を運ぶ平らなケース」です。現在では、特に美術系の分野で「自分の能力を周囲に伝えるための自己作品集」という意味合いで使われ、これまでの仕事や活動の成果を自らの意志で1冊にファイルしたものを指します。
 福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座でもポートフォリオを用いた医学教育を実践しています。今回のフォーラムでも、家庭医療専攻医(家庭医療を学ぶ後期研修医)が作成したポートフォリオを題材に深い議論が加えられました。
 ポートフォリオを用いた学習とは、学習者が診療における断片的な経験を積み重ねていくという偶発的経験の蓄積のみに依存するのではなく、学習者が自らの意思に基づいて、あらかじめ研修すべき内容の全体(家庭医に必要なスキルとマインドなど)をおさえ、「何のために何をやりとげたいか?」「この研修で何を獲得したいのか?」という自らの目標を定め、自らの意思で前向きに学ぶことを援助する学習方法です。つまり、研修期間の終了間際に、研修経験を振り返りながら各項目の診療経験をまとめていく症例報告とは本質的に異なり、研修開始当初から、目標を設定し、エントリーできる事例を意識しながら研修を行います。したがって、学習者は「今のこの経験が、自分が目標とする家庭医になるために必要なスキルのうちの、この領域を学んでいる」ということを常に意識して診療にあたることになります。

 ポートフォリオを創る際に学習者は、その領域で自らが学んだことや獲得した臨床能力を明示し、自らの能力を周囲に理解してもらえるよう配慮します。ポートフォリオを通して、自身の思考過程や、診療において独自に工夫したこと、そして、今後も継続的に成長していくための方略が備わったことが他者に伝わるように記載・作成します。

2016年8月28日日曜日

いわき開催 「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2016」 (第114回 FaMReF)


2016年8月27日・28日、夏も終わりに近づいた週末の両日。
2006年から福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の主催で毎年おこなわれている「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2016」が開催されました。
栄えある開催地となったのは、昨年に引き続き2年連続で我らがいわき市!
しかも会場はかしま病院。
遠くは長崎県からの訪問に、ホスト&ホステス一同 歓迎の舞で「おもてなし」
 
さあ、初日のメインプログラムの企画を任されたのは何を隠そう わたくし!
「どれだけチャレンジャーな主催者なの?」とぼやきつつ、無い知恵絞って考えたのが、

「プロフェッショナル 総合診療の流儀」

NHKの人気番組「プロフェッショナルの流儀」を参考に(決してパクってはいません 笑)、患者中心の医療の方法の実践など総合診療の流儀を貫いた結果、困難な局面から光が差し(明確なターニングポイントの実感)、その瞬間から未来への継続的成長を確信することが出来た 現指導医陣が経験した幾つかの事例を共有し、参加者に総合診療の専門性を深く学んでもらおうと目論みました。

「本当にケアするべきなのは母親だった」 (家族もケアの対象)

「本当の受診理由を見つめる」

ワン・フレーズにしてしまうと、総合診療医のピアコンピテンシーを学ぶ わたくしたちにとって見慣れた感じの教訓ではありますが、プレゼンに協力してくれた指導医らによる実体験を目の当たりにする臨場感と、もがきあがいた結果 たどり着いた省察が深過ぎて、結果として上級編に仕上がったかな~? と思い、今回参加してくださった医学生を含む初学者に どこまで伝わったかは不安が残るところではあります。

更に…

「診断は単なる手段の一つ、目的は何?」

などと、医師の仕事の核心を爆破しかねない過激な内容で締めてしまったわたくし。
益々わけの分からない内容になりました。
しかしながら、診断にはじまり診断に終わる医師の仕事を見つめ続けてきたからこそ見い出せた小生の「診断」というものへの気づき、そして「診断」の意味合いと深さと重さと、しかも「診断」には柔軟な軽やかさも求められることが、少しでも参加された皆さんに伝わったなら嬉しいです。




「家庭医は夜つくられる」
というわけで、会場を勿来海水浴場至近の宿舎に移し懇親夕食会。


二次会は「土曜だから夜更かし💋」と題して、司会に「マ〇〇デラックス」が登場!
熱くて暑くて、ぶ厚い夜は更けていくのでした。



さて、どこからが2日目なのかは定かではありませんが、朝起きると週明けに台風が接近予定の勿来海水浴場の荒々しい波を眺めながら ちょっとだけ砂浜を全力疾走。
しかし、このぐらいの波は それほどでもないことを後に思い知ることになるのでした。


さて、2日目のメインプログラムは 「家庭医の頭のナカ」
家庭医の頭のナカ つまり思考回路を丁寧に深みまで解剖し、理解を深めるレジデント渾身企画のワークショップ!
それぞれの役割に気合が入り、参加者のレベルの高さ故、鋭い意見の連発に深酒による眠気も吹っ飛びます。




最後のセッションは葛西主任教授によるCinemeducation
今回の題材となった映画は「マーヴェリックス/波に魅せられた男たち」
今朝の勿来の波とは比較にならないぐらいの巨大な波に挑む主人公の姿に、息を飲んで純粋に観入ってしまいました。
「人は何故、挑み続けるのか?」
「自分は何故、ずっとテキトーなのか?」
それでいて 「つらい! 死ぬほど つらい!」と文句を言いながらも「何故 走り続けるのか?」
あらためて考えながら、サマー・フォーラムのエンディングを迎えるのでありました。


全国から足を運んでくださった参加者の皆さんの目に「いわき」がどのように映ったのか?
少しでも楽しんで、学んでいただけたのであれば本望です。