2022年2月20日日曜日

胸アツを語ろう!「プロフェッショナリズム」 ~169回 家庭医療 レジデント・フォーラム~

 2022年2月20日の家庭医療 レジデント・フォーラムは、我らが浜通りチームがホストでした。最近は、オンライン開催が当たり前になってしまっているものの、やはり開催地の名物などをみんなでつまみながら、開催地の風土に触れて、ワイワイと たわいもないことも重いことも直接語ることができる現地開催を懐かしみながら、渡邉聡子先生が中心になって企画を練ってくれました。


 「視覚と聴覚による情報共有が主体となるオンラインであっても、味覚・嗅覚・触覚・第六感?も共有したい」そんな想いから、県内各拠点への以下2品の「厳選お取り寄せ配送作戦」を決行しました。

①いわきが誇る銘菓「じゃんがら」
 これは、2021年10月に、いわき湯本温泉で開催された竜王戦第3局で、藤井聡太さんが、勝負おやつとして選択したことで話題になった逸品です。これは皮の食感がたまりません。じゃんがらの皮の熱狂的ファンがいて、じゃんがらの皮だけをパックした「じゃんかわ」なる商品もあり、出るとすぐに売り切れるぐらいです。通常サイズだと、おやつではなくて勝負飯レベルのカロリーがあり眠くなるので、最近人気のミニサイズでお届け!

②いわき産トマトを使用した「まるごとトマトスープ」
 フリーズドライですが、お湯を注ぐとトマトの香り、食感と瑞々しい酸味、鮮やかな色がよみがえり、たいへん美味です。本作戦のねらいを果すために良い仕事をしてくれます。

 今回のメインテーマは「プロフェッショナリズム」にしました。
時代とともに変化するプロフェッショナリズムについてどうとらえるか?
堅苦しくない自由で ざっくばらんな「しゃべり場」の提供に重きを置きました。
気取った「カフェ」トークではなく、ぶちゃけた「居酒屋」トークで!
 参加したグループ 居酒屋「あっちゃん」では、参加者から様々なモヤモヤ体験が語られました。しかし「それを単なるモヤモヤに終わらせないで、少し視点を変えることができれば、新しい役割や やりがいの気づきにつながり、胸アツなプロフェッショナリズムを形成する契機になる」というのが、参加者らの経験から得られた共通の知見でした。


2022年2月13日日曜日

地域に生き、地域で働く家庭医

 2022 年 2 月 12 日、第 97 回常磐医学会がオンライン配信とのハイブリッドで開催されま した。医療専門職からは 15 演題の発表がありましたが、そのうち5演題が、新型コロナウ イルス感染症関連の内容であり、多職種がそれぞれの立場で試行錯誤し、それぞれの役割を 果たしながら、感染対策に取り組み続けている現状を知ることが出来ました。

 かしま病院総合診療科からは、家庭医療専門医・指導医の渡邉聡子先生が「家庭医と家庭 人~子育てと家庭医療の実践より~」と題して、医師の仕事について、出産・子育ての体験 を経た前後の働き方について、独自の取り組みを含む報告と省察を発表してくれました。

 男 女共同参画が叫ばれる社会にあっても、出産という特有の役割を担う女性にとって、キャリ ア中断への不安や、その後の子育てと仕事の両立の難しさ、周囲に負担をかけてしまうこと への心苦しさなどに悩まれる方は多いでしょう。 

 しかし、聡子先生は、出産・子育てを経て、医療を利用する側としての貴重な体験をした り、母親としての役割を果たす中で、一住民として地域社会と密につながり、更に、台風に よるご自身・ご家族の被災の経験を経て、家族・地域を丸ごと診ることの重要性を実感し、 医師としての視野を拡げ、ますます深みのある家庭医として成長されました。

 彼女の凄いと ころは、子育て中でも出来ることを探すだけの守りの姿勢にとどまらず、子育て中だからこ そ出来ることを積極的に探す攻めの姿勢で、主体的に提案・創生し、救急・当直・外来・入 院業務などをフルタイムで担う医師らが手薄になってしまいがちな、病棟業務・多職種連 携・医学教育等について、きめ細やかなサポート・コーディネートをしているところです。

 喜ばしいことに、本発表は学会の最高賞を受賞しました。全ての職員が、それぞれの立場 で出来ること、休業が必要となれば、休業中でなければできないことを各々が主体的に見出 して、みんなが活躍できる環境を整えることが私の役目です。



2022年1月23日日曜日

思春期の健康問題 ~168回 家庭医療 レジデント・フォーラム~

本日の家庭医療 レジデント・フォーラムは、明日、思春期事例がきたら、 必要な情報を聴取しアセスメントにつなげられることを目標に掲げ開催されました。


指導医レクチャーで紹介されたHEADSSSスクリーニングはケアの参考になりそうです。

Home(家庭) どこに誰と住んでいるの? 

Education/Enployment(学校/仕事) 学校はどこ?得意科目は?仕事やアルバイト? 

Activities(活動) 趣味や部活?友人やその関係性は? 

Drugs(薬物) タバコや酒(周囲に吸ってる人いる?) 

Sexuality(性の問題) 性交渉(周囲にどれくらいいる?) 

Suicide(自殺) 毎日楽しい?ストレス対処?相談相手? 

Safety(安全) 学校や地域での暴力や事故? 


HEADSSSスクリーニングは、主に問題点を探るツールのようですが、実際の問題解決には、患者さんにとっての強みを活用することも大事だと思います。そこで、HEADSSSにもう一つS:Strengths(強み:特技や特徴、自信があること、褒められること)を加えたSSHADESSスクリーニングというのもあるようです。




2021年12月21日火曜日

他の医師が匙を投げた患者を好んで診たがる ちょっと変態な医師


総合診療医、と聞いて皆さんはどのような診療をおこなう医師なのか?

なんらかのイメージが湧きますでしょうか?

総合、と言うからには、基本的に何でも屋さんなわけなんですが、ただ単にとりあえず何でもかんでも診る、というだけではなくて、患者さんのとらえ方や医療のあり方に関して総合診療医は、共通のある特徴的な考え方に基づいて行動しています。

その方法論が、患者中心の医療の方法です。

言い換えますと、総合診療医というのは、患者中心の医療の方法が上手に実践できるように、生涯をかけて修行し続けるお医者さんということになります。

ところで、患者中心の医療の方法とはどんなものでしょうか?

実は、その概要を解説するだけでも分厚い本一冊が完成するぐらい奥の深いものなのですが、わたくし自身、機会がありリハビリテーションについて学びなおした結果、驚くべき発見がありましたので共有させていただきます。

 実は「リハを学ぶと総合診療医が完成する」と言ったご高名な先生がおられるほど、リハには、患者中心の医療の方法を上手に実践するために必要な考え方が満載であることを、私自身もリハを勉強していく過程で発見しました。これは大きな気づきでしたし、とても驚きました。

しかし、残念ながら、現行の研修プログラムの多くは、系統的にリハを学べるものではないので、総合診療専門医を取得するだけでは、リハについて充分な知識や技術は身につきません。必然的に、総合診療医の多くは、リハに対して苦手意識を持っています。

しかし、総合診療医は 実はリハの考え方への親和性がもともと高いです。

総合診療医にとって多職種協働の視点は基本です。

何とかしたいという想いを共有しケアの改善に活かそうとする習性があります。

また、医学的介入による治癒困難事例であっても、総合診療医の守備範囲ですし、

リハに終了が無いように、お看取りまで、場合によってはその後も、残されたご家族を対象とした継続的ケアも特徴づける能力の1つです。

人生の どのステージにおいても必ずあるできることを見出そうとする習性があります。

総合診療医の幅広い視点は…

リハの深い機能評価と、生活機能向上・支援の視点と、とても融合しやすいと思います。

そして、総合診療医が高めようとする能力は、地域ニーズへの柔軟な対応であって、

自身の専門領域や関心で制限されることはありません。

また、今の日本における地域リハのニーズとして、老年症候群による要介護者の急増や、慢性臓器障害の増加があって、従来の医学的介入では根本的な改善が期待できない場面が多いわけですが、人生の どのステージにおいても、必ずあるできることを見出そうとチャレンジすることは、総合診療医の能力を高めることに直結します。

更に、医療者不足を補うためには、健康増進活動が必要ですし、不要な延命や救命の抑制も求められますが、これはまさに、健康増進と疾病予防、老年医学、終末期ケアを守備範囲にする総合診療医が頑張るべき領域だと思います。

 わたくし自身が学びながら気づいた、総合診療とリハの共通点ですが、とにかく「患者のとらえ方、医療のあり方」における考え方が同じなんです。

まず、身体疾患だけにとらわれることなく、患者・家族の考え方や感じ方への対応や、患者を取り巻く環境への配慮を重んじます。

「疾患の根絶」「病因さがし」だけでなく「健康度向上・社会活動参加→QOL向上」「健康になるための要素やケアに役立つ資源がないか?家族だけでなく、近隣の人々なども含め、とことん探します」

ケアの対象外という概念がありませんので、多くのお医者さんが嫌がりそうな、問題が多岐にわたって複雑であったり、ケアが困難な事例ほど、かえって萌えます。

また、教育・研究、地域ケア・行政への関わりも視野に入れています。

総合診療医ならこんなリハが提供できそうだな?というイメージは湧きましたでしょうか?

総合診療医が心がけていることとしては、患者の意向を引き出し、それを反映したゴール設定をすること、家族の負担に配慮して、家族機能や生活環境の調整や再構築をサポートすること、多職種の専門性を最大限に活かして、分からないことは分かる人に聞き、任せられるところは専門職に任せるということ、家族会議や人生会議を促進すること、慢性臓器障害や老年症候群への対応、特に、エビデンスとコストのバランスをとった方針決定、包括的視点の総合評価が求められていることを認識して行動します。

そして、予防から急性期、看取りまで責任をもって、一貫した継続的ケアを提供します。

結局のところ総合診療医は、なんでもありなので、なんでも気軽に相談していただけるとありがたいです。

特に、複雑な問題を抱える困難な事例ほど、すこしでも良い方向に運ぶためには、みんなで知恵を出しあう必要があります。

そういった事例を数多く経験することが、総合診療医の実力を上げるための筋トレになりますし、そういった事例に好き好んで立ち向かっていく、ちょっと変態なお医者さんが、総合診療医ということでしょうか(笑)


 

2021年11月7日日曜日

セクシャルヘルス/性を考慮したケア ~167回 家庭医療 レジデント・フォーラム~

本日の家庭医療 レジデント・フォーラムの指導医レクチャーのテーマは、セクシュアルヘルス/性を考慮したケア、いわるゆるセクシュアルマイノリティーでした。

しかし、セクシャルマイノリティーと言われるLGBTQ+の方々が、マイノリティーと表現するにはあまりにもコモンな問題であることを再認識しました。

なんせ、11人に1人が抱える問題だからです。

これは、左利きの人の比率に匹敵する多さですので、プライマリ・ケアに従事する私共にとって需要な課題です。

そもそも、LGBTQ+は、性的少数者を表す言葉のひとつとして使われています。

  • L:女性の同性愛者(レズビアン)
  • G:男性の同性愛者(ゲイ)
  • B:同性愛者(バイセクシャル)
  • T:こころとからだの性の不一致(トランスジェンダー)
  • Q:こころの性別、恋愛の方向が定まっていなかったり、その変化している途中であるなどの人々(クエスチョニング)

それらに加えて、それ以外の性を表す「+(プラス)」を付けて LGBTQ+ という言葉が使われるようになってきました。
また、LGBTQ+のことを理解し、応援する人のことを「ALLY(アライ:味方、支援などを意味する英語が語源)」と呼びます。

これだけ多くの LGBTQ+ の方々が’おられるということは、カミングアウトされている方々以外に、それをせず(出来ず)にいる多くの方々が潜在していることを意識したケアが求められることを知ることが出来ました。





複雑な想いに対して柔軟な対応ができる家庭医の存在はとても重要だと再認識しました。






2021年10月17日日曜日

家庭医の予防医療 ~第166回 家庭医療レジデント・フォーラム ~

本日の家庭医療レジデント・フォーラムのテーマは予防医療・健康増進でした。
「家庭医は患者さんとの接触の機会すべてを疾病の予防の機会ととらえる」という格言があります。
それはそうなんですが、実際の診療の現場では、推奨される予防に関する介入すべてを実践するのは、なかなか難しいです。
介入の推奨度から優先度を意識して、院内掲示やパンフレット、問診票の内容などを工夫してスムーズに予防に関する話題に入れるようにしたり、カルテ内で検診や予防接種の実施状況を整理しておいたりするだけで、随分と抜けを防ぐことができそうです。

また、予防医療・健康増進をサポートする上で切っても切り離せないのが、行動変容の促進のアプローチですが、指導医レクチャーでは、分割、前進、利用の3つの手法を用いた解決志向アプローチが紹介されました。

肥満の方へのアプローチに関するロールプレイは、あまり危機感はないけれど、漠然と「痩せたい」という願望を持つ患者さんへの短時間の医療面接の中でどこまで行動変容に迫れるか?という感じで、なかなかチャレンジングなものでしたが、皆さん、あの手この手で奮闘されていました。


2021年9月26日日曜日

マインドフルネスの活用 ~第165回 家庭医療レジデント・フォーラム~

 本日の家庭医療レジデント・フォーラムの指導医レクチャーでは、日頃からプライベートでも仕事でもマインドフルネスを取り入れている若山先生から、ワークを交えたマインドフルネスのお話がありました。


ネガティブな思考の反芻や心配事は、うつ病などの精神疾患を引き起こす要因になりますが、マインドフルネスに基づく介入は、反芻や心配を減らすのに有効であるという複数の報告があります。

Querstret, Dawn; Cropley, Mark (2013). “Assessing treatments used to reduce rumination and/or worry: A systematic review”. Clinical Psychology Review 33 (8): 996-1009. 

Gu, Jenny; Strauss, Clara; Bond, Rod; Cavanagh, Kate (2015). “How do mindfulness-based cognitive therapy and mindfulness-based stress reduction improve mental health and wellbeing? A systematic review and meta-analysis of mediation studies”. Clinical Psychology Review 37: 1-12. 

1970年以来、マインドフルネスの臨床応用が開発され、心の健康に関する問題の予防や治療効果があるようです。

すぐに自身の診療に活用するのはなかなか難しい概念のようにも感じつつ、振り返ると実はすでに無意識のうちに活用している部分もあるような…

自身の日常では、ひたすらランニングしている時が、この状態に当てはまるように思います。

その瞬間 瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれない状態で、ただ観るとという境地を目指していきたいと思います。