2021年12月21日火曜日

他の医師が匙を投げた患者を好んで診たがる ちょっと変態な医師


総合診療医、と聞いて皆さんはどのような診療をおこなう医師なのか?

なんらかのイメージが湧きますでしょうか?

総合、と言うからには、基本的に何でも屋さんなわけなんですが、ただ単にとりあえず何でもかんでも診る、というだけではなくて、患者さんのとらえ方や医療のあり方に関して総合診療医は、共通のある特徴的な考え方に基づいて行動しています。

その方法論が、患者中心の医療の方法です。

言い換えますと、総合診療医というのは、患者中心の医療の方法が上手に実践できるように、生涯をかけて修行し続けるお医者さんということになります。

ところで、患者中心の医療の方法とはどんなものでしょうか?

実は、その概要を解説するだけでも分厚い本一冊が完成するぐらい奥の深いものなのですが、わたくし自身、機会がありリハビリテーションについて学びなおした結果、驚くべき発見がありましたので共有させていただきます。

 実は「リハを学ぶと総合診療医が完成する」と言ったご高名な先生がおられるほど、リハには、患者中心の医療の方法を上手に実践するために必要な考え方が満載であることを、私自身もリハを勉強していく過程で発見しました。これは大きな気づきでしたし、とても驚きました。

しかし、残念ながら、現行の研修プログラムの多くは、系統的にリハを学べるものではないので、総合診療専門医を取得するだけでは、リハについて充分な知識や技術は身につきません。必然的に、総合診療医の多くは、リハに対して苦手意識を持っています。

しかし、総合診療医は 実はリハの考え方への親和性がもともと高いです。

総合診療医にとって多職種協働の視点は基本です。

何とかしたいという想いを共有しケアの改善に活かそうとする習性があります。

また、医学的介入による治癒困難事例であっても、総合診療医の守備範囲ですし、

リハに終了が無いように、お看取りまで、場合によってはその後も、残されたご家族を対象とした継続的ケアも特徴づける能力の1つです。

人生の どのステージにおいても必ずあるできることを見出そうとする習性があります。

総合診療医の幅広い視点は…

リハの深い機能評価と、生活機能向上・支援の視点と、とても融合しやすいと思います。

そして、総合診療医が高めようとする能力は、地域ニーズへの柔軟な対応であって、

自身の専門領域や関心で制限されることはありません。

また、今の日本における地域リハのニーズとして、老年症候群による要介護者の急増や、慢性臓器障害の増加があって、従来の医学的介入では根本的な改善が期待できない場面が多いわけですが、人生の どのステージにおいても、必ずあるできることを見出そうとチャレンジすることは、総合診療医の能力を高めることに直結します。

更に、医療者不足を補うためには、健康増進活動が必要ですし、不要な延命や救命の抑制も求められますが、これはまさに、健康増進と疾病予防、老年医学、終末期ケアを守備範囲にする総合診療医が頑張るべき領域だと思います。

 わたくし自身が学びながら気づいた、総合診療とリハの共通点ですが、とにかく「患者のとらえ方、医療のあり方」における考え方が同じなんです。

まず、身体疾患だけにとらわれることなく、患者・家族の考え方や感じ方への対応や、患者を取り巻く環境への配慮を重んじます。

「疾患の根絶」「病因さがし」だけでなく「健康度向上・社会活動参加→QOL向上」「健康になるための要素やケアに役立つ資源がないか?家族だけでなく、近隣の人々なども含め、とことん探します」

ケアの対象外という概念がありませんので、多くのお医者さんが嫌がりそうな、問題が多岐にわたって複雑であったり、ケアが困難な事例ほど、かえって萌えます。

また、教育・研究、地域ケア・行政への関わりも視野に入れています。

総合診療医ならこんなリハが提供できそうだな?というイメージは湧きましたでしょうか?

総合診療医が心がけていることとしては、患者の意向を引き出し、それを反映したゴール設定をすること、家族の負担に配慮して、家族機能や生活環境の調整や再構築をサポートすること、多職種の専門性を最大限に活かして、分からないことは分かる人に聞き、任せられるところは専門職に任せるということ、家族会議や人生会議を促進すること、慢性臓器障害や老年症候群への対応、特に、エビデンスとコストのバランスをとった方針決定、包括的視点の総合評価が求められていることを認識して行動します。

そして、予防から急性期、看取りまで責任をもって、一貫した継続的ケアを提供します。

結局のところ総合診療医は、なんでもありなので、なんでも気軽に相談していただけるとありがたいです。

特に、複雑な問題を抱える困難な事例ほど、すこしでも良い方向に運ぶためには、みんなで知恵を出しあう必要があります。

そういった事例を数多く経験することが、総合診療医の実力を上げるための筋トレになりますし、そういった事例に好き好んで立ち向かっていく、ちょっと変態なお医者さんが、総合診療医ということでしょうか(笑)


 

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