2020年2月25日火曜日

「雪」「台風」「コロナ」


 「雪、台風の次は感染症か!」これが今の私の心の叫びです。フルマラソン3時間切りを目標に隙間時間を見つけて日々鍛錬し挑んだ昨年の第10回いわきサンシャインマラソンは雪のため中止。昨秋の東北みやぎ復興マラソンは東日本台風により中止。「今度こそは」と連日10km以上走破し、万全の準備で迎えた今年の第11回いわきサンシャインマラソンも新型コロナウイルスの襲来により中止が決定し、まさかのフルマラソン3連続おあずけで涙を飲むこととなりました。とは言え、本番に備えて日々鍛錬してきた この溜まりに溜まった怨念は昇華させておいたほうが良いと思い、大会開催予定であった223日に自主的に いわきサンシャイン フルマラソンを決行しました。勿論、他人と接触しないように留意して…。実際には わたくし以外にも1000人ほどのランナーが当日コースに出て走ったとか。ほぼほぼ本番のコースを辿ったので、終点のアクアマリンパークでは 2年越しの完走感を味わうことができました。3時間20分ほどで完走しましたが、ラスト10㎞でペースを上げる余裕があり、ゴール後もまだまだ走れる感がありました。やはり体力がありまっていたのでしょうか? 悶々としたエナジーを 少しでも放出できたようで良かったです。
ところで、これまでの報道によると、新型コロナウイルスに感染したときの臨床像は、概ね2つのパターンに分けられることが分かってきました。1つ目は、風邪症状が1週間ぐらい続き、そのまま治癒するもので、この経過をとる人が大半のようです。この場合、症状は普通の風邪とほとんど区別がつきませんので、日本国内にも既にある一定数の感染者が潜在しているものと推察されます。2つ目は、1つ目と同様に風邪症状が1週間ぐらい続いた後に肺炎を合併し重症化するものです。高齢者や基礎疾患のある方(ハイリスク者)がこの経過をたどりやすいようです。
これから私たちにできることは、重症化する人を可能な限り少なくするように努めることです。そのために重要なことは以下の3点です。
    新型コロナウイルス感染者を増やさない
発熱や風邪症状(鼻水、喉の痛み、咳など)を発症した人は可能な限り外出せず自宅療養し、他者(特にハイリスク者)との接触を回避しましょう。
    ハイリスク者に感染させない
医療機関や介護施設は、ハイリスク者が多く集まる場です。発熱や風邪症状のある方は、絶対にハイリスク者と面会しないでください。
    ハイリスク者や重症化の兆候がある場合はすみやかな対応を
    上記②の目的で、基礎疾患がなく症状が軽い方は、医療機関への受診を極力ひかえていただきたいのですが、逆にハイリスク者は早目の対応が必要です。受診の要否判断の目安として、本ブログ「How you do not feel even more painful, when you catch a cold 風邪をひいてしまった時、更に辛い思いをしないために…


2020年2月16日日曜日

福島県立医科大学 家庭医療学専門医コース 臨床技能評価 ~第153回 家庭医療レジデント・フォーラム~

本日の家庭医療レジデント・フォーラムは、日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療専門医試験で用いられている臨床技能評価 Clinical Skills Assessment;CSA を行いました。
CSAは、評価を受ける者(医師役)が模擬患者の診療にあたり、その技能を評価します。
評価基準として、英国 RCGPで専攻医のトレーニング中に利用される、診療所外来のフィードバックツールを用いました。

【Consultation Observation Tool:Detailed Guide to the Performance Criteria】
PC1 患者が診療に積極的に関われるよう促している
 この項目は医師のアクティブリスニングスキルや、オープンクエスチョンの使い方、不要な会話の妨げ、非言語的メッセージの利用についての評価です。ただ、多くの診療では促すことの必要性は低いです。促しが必要なときに適切に対応できるか、という点の評価です。
PC2 患者の問題の深い理解につながるようなサイン(キュー・きっかけ)に反応している
 この項目は、重要なキューに対応できているかどうかの評価です。患者の非言語的なキューに対して反応できているでしょうか。キューに対する医師の反応は、言語的反応(動揺や心配している患者への声掛け)、非言語(沈黙の使用)、動作(体勢を変える、患者に触れる、ティッシュを差し出す)などのいずれもあり得ます。
PC3 主訴をコンテクストを通して理解できるよう、心理社会的情報を適切に利用している
 医師には、健康問題の心理的側面、社会的側面(職業的側面を含む)を考慮することが期待されます。それらの側面は事前に情報が得られているかもしれないし、患者が自発的に話すかもしれないし、医師が尋ねて話すかもしれません。健康問題を検討する際に、これらの情報を利用する能力が備わっているでしょうか。
PC4 患者の健康観を探っている
 この項目には「患者の受診理由を探索する」という目的で「Idea, Concern, Expectation」(考え、気がかり、期待)を探索することが含まれます。患者が実際に考えていることを見つけ出すことができるかどうかです。「あなたはどう考えているのですか?」という質問には答えは何も返ってこないでしょう。「あなたに何が起こったのだと思いますか?」「この症状であなたが最も恐れていることは何ですか?」などの質問は、有用な反応をもたらすでしょう。
PC5 可能性の高い疾病の診断に有用な情報を的確に入手する
 可能性の高い診断仮説(鑑別診断)に関連する質問をしているかどうかで評価できます。この能力は診療中のどの段階でも発現されることがある(身体診察中でも、診察後でも、説明のときでも、診療後でも)。この納涼区において、Closed Questionは効果的な質問方法である。健康問題を定義するための一部分として、十分な症状についての情報と病歴の詳細を得られるかどうかです。患者の安全に配慮しつつ、General Practice における疫学的現実も考慮すする必要があります。
PC6 診断仮説に合致した、または患者の関心に合致した、的確な身体・心理診察を選択する
 この能力は、診察の方法の選択を評価する項目です(実施方法の正誤を評価する方法としては適していないため。議論することは可能)。
PC7 臨床的に的確な診断にたどりつける
 臨床的に適切な診断、または診断仮説が作られているかどうかで評価します。
PC8 適切な表現で問題や診断について説明する
 この項目は、患者が抱えている問題に対する説明を評価します。患者と共有された所見の内容、説明内容の質が要点です。優秀な研修者は患者の「健康信念」(PC4で評価した内容)を取り入れます。この能力はPC4が欠如している状態では達成されないでしょう。場合によっては、促さなくとも患者が自分から健康信念を表明するかもしれませんが。
PC9 診断に関して患者の理解を確認する
 この能力は、説明後にどの程度理解されているかを確認できることです。「わかりましたか?」と訪ねて患者のうなずきを確認するだけでは不十分です。積極的に患者の理解を確認することが必要です。「確認のために、今日ご理解いただいたことを教えてください」など。医師と患者の会話で、理解を確認し説明が理解され受け入れられたかを確認することが必須です。
PC10 診療方針(処方も含む)が診断と合致しており、現代の医学知見と照らし合わせて適切である
 治療計画が診断仮説と合致していることはもちろん、現代で認識されている医学知見と照らし合わせて適切であることは必須です。薬剤の選択も「好み」で選ぶのではなく、安全で理にかなっていることが重要です。
PC11 患者は重大な診療方針の決定において選択に加わる機会がある
 治療の選択肢を共有して、医師と患者が共同で意思決定を行うことが求められます。患者の望み、希望も意思決定において検討され(希望通りにいかないこともあり)、エビデンスを参考にした決断を行います。
PC12 リソースを効果的に利用する
 時間を有効に使えているか、他職種を有効に使えているか、など医師が利用可能な「リソース」を有効に利用できているかどうかを評価します
PC13 再診の間隔および再診が必要な条件を明確にする
 この項目は、受診を効果的に活用できるようにするために必要です。いつ来るべきか、どんな状況であればどうするべきかを患者に伝えられているかを評価します。

これらのことができているかを模擬診察を通して評価されるわけですから、ほとんどの被検者は緊張しますし、実際の診療現場とは勝手が違うため、普段の診療の通りにやるのは難しいですが、実際にやってみると、自身の癖や抜けやすいところに気付いたり、限られた時間の中で優先度を考慮して対応するトレーニングにもなり、とても勉強になるようです。

2020年1月19日日曜日

ACPについて じっくり学んでみた ~第152回 家庭医療レジデント・フォーラム~


本日は保原に移動して月例の勉強会。
いわきに長く住んでいるので、雪山を観るだけでワクワク興奮してしまうわたくしです。

今回のFaMReFのメインテーマは「ACP」でした。
人生会議などと堅苦しい感じに和訳されたACPですが、日頃あらためて「ACPしましょう!」と言って、あらかじめ「いざ」という時のことを話し合っても、本人・家族ともにピンとこない(実感がなくイメージがわかない)状況をよく経験します。
とかく、終末期の栄養管理や急変時の蘇生処置の希望の有無にフォーカスされがちなACPですが、ACPの本質は「本人が どのような人生を歩んできて、どのような価値観を持っているか」を、ケアに関わるすべての人たちが共有し、以後に起こりうる種々の状況に応じて、本人の価値観にかなう柔軟な判断・意思決定ができるようにするプロセスなんだと思います。
医師としてどのようにACPにサポートができるか? 日々の診療を通じて追究していきます。


2020年1月17日金曜日

「生きる」を支援する作戦会議 〜地域リハビリ研修会〜

リハビリをすること、リハビリを続けること、リハビリをオーダーすること、リハビリをケアプランに組み込むこと etc. リハビリが目的になっていませんか?
そんな皆さんには是非参加していただきたい!

 

2020年1月5日日曜日

How you do not feel even more painful, when you catch a cold 風邪をひいてしまった時、更に辛い思いをしないために…

If you think is it a cold? First, check for the three main symptoms of a cold: runny nose, sore throat, and cough. If two or more of these symptoms occur at the same time, the likelihood of a cold is high, and it can be expected that the patient will naturally relieve in a few days. On the other hand, if these three symptoms are absent or only one, and the symptoms worsen, the possibility of other diseases for which natural healing cannot be expected increases, so an early consultation is necessary.
In addition, if you fall under any of the following ① to ⑦, you should have a consultation.
① Symptoms worsen  or do not decrease after 3 days
② If you have chronic disease such as COPD (chronic obstructive pulmonary disease)
③ Once recovered, it returns
④ You can not stop shivering yourself
⑤ Strong pain never experienced in the past (head, throat, chest, etc.)
⑥ Cough lasts more than 3 weeks
With breathlessness

Symptoms and situations where influenza is highly suspected, we diagnose it as flu, because it cannot be ruled out even if the result of a rapid test is negative.
But even if you have influenza, if you are a low-risk patient, rest and hydration and the minimum necessary symptomatic treatment are basically the same as for a cold.



2020年1月3日は当院が休日当番医でした。発熱で受診される方が殺到し トータルで100名を超えました。そうなると、入院や転送が必要など中等症以上の患者さんへの対応が優先されますので、結果 軽症患者さんの中には何時間もお待ちいただいた方もおられます。
内心「自分だったら絶対家で寝てるだろう」と思う病状の患者さんがほとんどでした。
たまたま 1月4日の朝刊折り込み「La ・暮らす」で小生の駄文を掲載していただきましたので、ご参照頂ければ幸いです。
以下、投稿内容の引用

風邪をひいてしまった時、更に辛い思いをしないために…
皆さんは、風邪をひいてしまった時どうしていますか?慌てて寒い中ブルブル震えながら医療機関を受診したものの、何時間も待たされた挙げ句、医師から「風邪を治す薬はないので自宅で安静にしていた方が良かった」などと冷たく扱われ、受診したことを後悔したという経験はありませんか?しかし、確かにこの医師の発言内容自体は正しくて、本当に風邪であれば、医療機関を受診するメリットはほとんどありません。なぜなら、風邪は自然に治る上に特効薬がないからです。そう言われても「風邪かどうか分からないから心配で受診するしかない」という方もおられるでしょう。そこで今回は、本当に風邪かどうかをご自身で判断するためのコツをお示しします。
風邪かな?と思ったら、まずは風邪の主な3つの症状「鼻水」「のどの痛み」「咳」の有無をチェックしましょう。これらの症状がほぼ同時発症で2つ以上そろっていれば風邪の可能性が高く、数日で自然に快方に向かうことが期待できます。この場合、よほど症状が強くない限り、医療機関を受診するよりも安静の確保を優先する方が賢明です。症状の緩和が必要であれば市販薬を服用しても良いでしょう。一方、逆にこれらの3つの症状が全くないか1つしかなく、その症状が悪化していく場合は、自然治癒が期待できない他の疾患の可能性が高まりますので、早目の受診が必要です。
その他、以下の①~⑦に該当する場合は、風邪をこじらせて合併症を起こしているか、放置してはいけない風邪以外の疾患が疑われますので、医療機関を受診しましょう。
    3日経っても症状が軽減しない、悪化する
    COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、肺に持病がある
    一旦よくなったのにぶり返す
    寒くてガクガク震え、自力では止められない
    過去に経験したことのない強い痛み(頭、のど、胸など)
    咳が3週間以上続く
    息が荒い、息が苦しい

紙面の都合で、インフルエンザについては大胆にも一切触れていませんが、仮にインフルエンザであっても、低リスクの患者さんであれば、風邪と同様に安静と水分補給と必要最小限の対症療法が基本ですので、迅速検査や抗ウイルス薬の処方を受けるために休日や夜間に慌てて受診することはお勧めできません。
インフルエンザが強く疑われる症状や状況であれば、迅速検査で陰性であっても除外はできませんので、インフルエンザとして業務休止や他者との隔離等の対応をしておけば良いわけです。



2019年11月28日木曜日

虎井 何男(とらい なにお)さんは 何をトライすべきか? ~実践家庭医塾~

本日の実践家庭医塾での臨床研修医からのプレゼンの主役は「生活指導を続けてきたが脂質異常症が改善しない」とのことで、とある産業医の先生から紹介受診となった 虎井 何男(仮名)さん。
脂質異常もさることながら、実は虎井さん…バッチリ喫煙者でした。
「そっちは生活指導しとらんのかい!!!」っていうツッコミはごもっともですが、現実的には禁煙の動機づけは一筋縄では行かないことが多いですね。
虎井さんも初診時には禁煙導入が出来なかった患者さんの一人です。
そんな中、虎井さんが ある出来事をきっかけに禁煙の行動変容ステージの関心期→準備期→行動期へと一気に変貌を遂げる様を目の当たりにし、禁煙導入のサポートに関わることができた経験をもとに、禁煙指導・診療についてまとめてくれました。

宣伝になりますが、2020年11月14日(土)・15(日)には、第14回 日本禁煙学会学術総会が、福島県郡山市のビッグパレットふくしまで開催されます。
わたくしも実行委員の一人として大会を盛り上げてまいります。




2019年11月23日土曜日

先生の先生の先生の先生(笑)

 この度、日本で初めて開催された英国Royal College of General Practitioners(RCGP/英国家庭医療学会)主催の指導医養成講習会に参加させていただきました。
 英国における総合診療・家庭医療の歴史は長く、医療制度にしっかりと根ざした形で外来診療・訪問診療・地域包括ケアに多くのGeneral Practitioner(GP/家庭医)が従事し、医学生・研修医の間でもGPは大変人気のある診療科となっています。また、指導医資格の取得には教育に関する学習歴や実地での教育歴などの審査もあり、高いステータスと位置付けられています。
 こうした、総合診療教育の厚い基盤のあるRCGPの指導医養成講習会に参加することができたことは、日本で家庭医療の教育に関わっている私にとって、滅多に得られない機会でしたし、実際に多くの気づきと学びが得られた貴重な日々となりました。
 講習会には英国から教育に熟達した2名のGP指導医と上級指導医を目指す1名の若手GPが来日し、日本全国から集まった熱心な指導医ら約30名が合宿形式で5日間に渡って、総合診療における成人教育、教育手法、評価法、学習環境の整備、生涯学習、困難に直面した学習者の支援、リーダーシップなど数多の興味深いテーマで、参加者も活発に意見を出し合う対話形式の講義と少人数のグループワークが提供されました。
 講習会会場と宿泊施設が一体化していたので、移動や食事などに気を遣わず、まさに缶詰状態の環境で研修に集中することができました。
 特に、小グループに別れたロールプレイでの光景はとても印象的でした。先ず、一人の先生がプレゼンテーションを行い、その内容について別の先生が指導医としてコメントし、更に別の先生が指導医のコメントの内容や伝え方について指導医の指導医としてコメントし、更に更に英国の上級指導医から全体へのコメントが貰えるという、通常では有り得ない贅沢な状況が目の前で展開されていてとても痛快でした。
 質も量も膨大な内容で使用言語も英語でしたので、シャイな私にとってとてもハードルの高いものではありましたが、親切で情熱ある講師陣とフレンドリーな参加者の皆さんのおかげで、最後まで楽しく受講することができました。
 今は脳内が飽和状態で情報の整理が追いついていませんが、今回の講習会で学んだことは、工夫次第では実際の日本の医学教育の現場にも取り入れることができるほど、英知溢れるものでした。講習会に送り出してくれた仲間への感謝の気持ちを忘れず、得たものを現場に還元して教育の質を高めていきます。