2019年11月28日木曜日

虎井 何男(とらい なにお)さんは 何をトライすべきか? ~実践家庭医塾~

本日の実践家庭医塾での臨床研修医からのプレゼンの主役は「生活指導を続けてきたが脂質異常症が改善しない」とのことで、とある産業医の先生から紹介受診となった 虎井 何男(仮名)さん。
脂質異常もさることながら、実は虎井さん…バッチリ喫煙者でした。
「そっちは生活指導しとらんのかい!!!」っていうツッコミはごもっともですが、現実的には禁煙の動機づけは一筋縄では行かないことが多いですね。
虎井さんも初診時には禁煙導入が出来なかった患者さんの一人です。
そんな中、虎井さんが ある出来事をきっかけに禁煙の行動変容ステージの関心期→準備期→行動期へと一気に変貌を遂げる様を目の当たりにし、禁煙導入のサポートに関わることができた経験をもとに、禁煙指導・診療についてまとめてくれました。

宣伝になりますが、2020年11月14日(土)・15(日)には、第14回 日本禁煙学会学術総会が、福島県郡山市のビッグパレットふくしまで開催されます。
わたくしも実行委員の一人として大会を盛り上げてまいります。




2019年11月23日土曜日

先生の先生の先生の先生(笑)

 この度、日本で初めて開催された英国Royal College of General Practitioners(RCGP/英国家庭医療学会)主催の指導医養成講習会に参加させていただきました。
 英国における総合診療・家庭医療の歴史は長く、医療制度にしっかりと根ざした形で外来診療・訪問診療・地域包括ケアに多くのGeneral Practitioner(GP/家庭医)が従事し、医学生・研修医の間でもGPは大変人気のある診療科となっています。また、指導医資格の取得には教育に関する学習歴や実地での教育歴などの審査もあり、高いステータスと位置付けられています。
 こうした、総合診療教育の厚い基盤のあるRCGPの指導医養成講習会に参加することができたことは、日本で家庭医療の教育に関わっている私にとって、滅多に得られない機会でしたし、実際に多くの気づきと学びが得られた貴重な日々となりました。
 講習会には英国から教育に熟達した2名のGP指導医と上級指導医を目指す1名の若手GPが来日し、日本全国から集まった熱心な指導医ら約30名が合宿形式で5日間に渡って、総合診療における成人教育、教育手法、評価法、学習環境の整備、生涯学習、困難に直面した学習者の支援、リーダーシップなど数多の興味深いテーマで、参加者も活発に意見を出し合う対話形式の講義と少人数のグループワークが提供されました。
 講習会会場と宿泊施設が一体化していたので、移動や食事などに気を遣わず、まさに缶詰状態の環境で研修に集中することができました。
 特に、小グループに別れたロールプレイでの光景はとても印象的でした。先ず、一人の先生がプレゼンテーションを行い、その内容について別の先生が指導医としてコメントし、更に別の先生が指導医のコメントの内容や伝え方について指導医の指導医としてコメントし、更に更に英国の上級指導医から全体へのコメントが貰えるという、通常では有り得ない贅沢な状況が目の前で展開されていてとても痛快でした。
 質も量も膨大な内容で使用言語も英語でしたので、シャイな私にとってとてもハードルの高いものではありましたが、親切で情熱ある講師陣とフレンドリーな参加者の皆さんのおかげで、最後まで楽しく受講することができました。
 今は脳内が飽和状態で情報の整理が追いついていませんが、今回の講習会で学んだことは、工夫次第では実際の日本の医学教育の現場にも取り入れることができるほど、英知溢れるものでした。講習会に送り出してくれた仲間への感謝の気持ちを忘れず、得たものを現場に還元して教育の質を高めていきます。

2019年10月20日日曜日

被災地の最前線で働く家庭医

 この度の台風19号では、かしま病院職員も30名近く自宅の浸水被害に遭いました。その中には同僚の総合診療科医師2名が含まれます。彼らの居住地域にあるすべての診療所が甚大な被害を受け、通常の診療を再開できる目途が立たない状況となっています。しかし、市内全域の医療機関の約9割が一時機能停止に陥った東日本大震災の発災直後とは状況が異なり、市内の医療機関のほとんどが通常通りの診療を継続出来ている今回は、自力で移動ができる患者さんであれば他院を受診することが可能です。避難所を利用すれば、巡回している医師・薬剤師・保健師等のチームが、適切な医療が受けられるよう支援することもできます。ところが、今回は発災から一週間の時点で、避難所の利用者数が被災地域の居住者数に対して一割にも満たないようです。これは、被災地域近隣が大規模な断水に見舞われ、避難所が比較的遠方に設置されていることに起因していると思われます。自家用車の水没により移動手段を失った方々や、もともと移動が困難な災害時要支援者(災害弱者)は、やむなく自宅の2階に留まっていて、持病の薬が無くなって困っていたり、心身の疲労から体調を崩したりしているかもしれません。


 このような問題点をいち早く認識し、行政や医師会などの関係団体に現場の状況を報告し、救援を求めてくれたのが、1メートルを超える浸水被害を受けて自宅の片づけをしていた当院の家庭医たちでした。彼らの現場からの声はすぐに行政を動かし、対策本部の現地事務所と救護所が設置され、現地に居ながら正確な情報の入手と医療や入浴などの生活基盤を確保することができるようになりました。災害後には急性および慢性の身体的・精神的健康問題が発生し、長期にわたりプライマリ・ケアの利用が増加することが報告されていますが、家庭医は被災者の心身の健康ニーズに対応するために適しています。まだまだ復旧まで多くの時間と労力を要しますが、地域に生き地域のために働くことができる家庭医が最前線で活躍しているのはとても心強いことです。

2019年9月29日日曜日

喜多方で どっぷり家族に浸かる ~第148回 家庭医療レジデント・フォーラム~

本日の家庭医療レジデント・フォーラムは、蔵のまち喜多方での開催。
テーマは家族志向ケアでした。


夫婦のありかた、親の役割、アルコール依存、虐待、家族構成員それぞれの役割、セクシャルマイノリティーを受容し支援する家族…。
困難事例のオンパレードで もう満腹です。


満腹と言えば本日のランチは喜多方ラーメン ツアー!
市内120程あるという数ある名店の中から、主催者が厳選した会場近隣の3店舗に、参加者が3チームに分かれて昼ラーしてくるという新しい企画。
食堂や酒蔵、農業など、家族のつながりが強い家業が多い地域で、ラーメン店も家族経営感満載ですし、日曜ということもあり訪れる客も家族連れも多く、家族について深く考え振り返る絶好のシチュエーションでした。
勿論、美味しゅうございました。他の2チームも同様のようでした。


2019年8月25日日曜日

家庭料理が養い生みだす家庭医療 ~第147回 家庭医療 レジデント・フォーラム~



皆さんは「いつだれkitchen」をご存知ですか?いつだれkitchenは、障がい者や高齢者を支援するNPO法人「布紗」さん が運営し、いわき市平上荒川にある共助拠点「あらたな」内で毎週木曜のお昼にオープンしています。いつでも、だれでも大歓迎の「みんなのお勝手」をコンセプトとしたお母さん食堂です。採れ過ぎて余ってしまい、食べられるのに廃棄される運命の野菜などの食材を募って、それらを有効活用し、ボランティアのお姉さま方が腕に縒りをかけて美味しい家庭料理を提供します。料金は原則無料の投げ銭制ですので、だれでも足を運ぶことができ、お年寄りや障がいを持つ方々を含めた交流の場になっているようです。食品ロス(もったいない)を抑制しながら食材費までも抑えられるなんて、たいへん素晴らしいアイディアですね。
福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の月例勉強会「家庭医療レジデント・フォーラム」は県内各地の教育拠点持ち回りで開催されています。20198月はいわきの順番でした。いつもは病院内の会議室等で開催するのですが、今回は会場としていつだれkitchenを特別に臨時貸切オープンしていただきました。私自身初めて訪問しましたが、元々は焼肉屋さんだった建物を、これまた余った建材等を活用して格安でバリアフリーにリフォームされたそうです。その内装は、光溢れるとても明るい快適空間でした。
家庭医は患者さんやそのご家族だけでなく地域全体を診る医師です。勉強会では、養生会かしま病院総合診療科のメンバーが、医師会活動や学校保健・市民教育活動などの地域への取り組みを紹介し、更に、いつだれkitchenと同様にいつも美味しい家庭料理でいわきの医師の胃袋をガッチリ掴んでいる「いわきの医師を応援するお姉さんの会」代表の宮野由美子さんから特別講演をいただき、課題の多いいわき市の医療を、自治体や医師会・多職種・市民らが一丸となって乗り越えていこうとしていることを参加者に伝えました。
ランチタイムに振る舞われた温かくて美味しい家庭料理の数々は、間違いなく参加者の活力をい、よいパフォーマンスをみだしていました。食を基礎とした地域住民の養生を考えることができる広い視野は、家庭医に求められる大切な能力です。わざわざ病院を飛び出して、いつだれkitchenで勉強会を開いて本当に良かったです。



2019年7月16日火曜日

「キッズ医者かしま2019」開催のお知らせ

かしま病院では、今年も「キッズ医者かしま」を、8月24日(土)に開催します。
医師になりきって研修に挑戦したい小学生を大募集!
夏休みの最後の思い出作りに、夏休みが終わる土壇場での自由研究のネタとしても…


参加ご希望の方は、下記リンクまたは こちら→「キッズ記者かしま2019 参加のしおり」をダウンロードしていただき、必要事項をお書きの上、かしま病院地域医療連携室 0246-76-0352 までFAXでお送りください。

http://www.kashima.jp/images/pdf/kids2019b.pdf

2019年5月20日月曜日

かしま病院の使命 ~病院総合診療専門医の養成~

WONCA Asia Pacific Regional Conference 2019 Kyoto, Japan 第10回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。 合計参加者6467名の大規模な大会でした。
また、数だけではなく質的にも、総合診療というものが日本に正しく定着しつつあることを実感することができました。
日本の家庭医療・総合診療の黎明期を支えてきた多くの人達が、根気強く診療・教育・研究活動を続けてきたことが、じわりじわりと浸透して、そのチルドレンたちが更に精力的に活躍し、更にグランドチルドレン達が創生されていくわけで、熱量はまさに末広がりです。
特筆すべきこととして、日本プライマリ・ケア連合学会から、総合診療を目指す若手医師のための新たなキャリアパスが提唱されました。その背景として、新専門医制度における総合診療領域を選択した専攻医の数が、2018・2019年度で2%程度にとどまり、これまで日本プライマリ・ケア連合学会が取り組んできた実績を下回る厳しい現実があります。その原因として、総合診療専門医制度の不安定さ、専門医を取得後のキャリアパスの不明瞭さ、今後の展開が不透明であることが挙げられます。学会としては、プライマリ・ケアを実践する人材を数多く養成するために、多様で将来性のあるキャリア形成の支援に注力することを表明しました。
具体的には、基本領域としての総合診療専門医をベースとして、以下の3つのタイプの領域が、2階部分の柱として示されました。

① 新・家庭医療専門医(世界標準の高い専門性と学術性を備えた家庭医)
② 病院総合診療専門医(病院で高い総合診療能力を発揮する病院総合医)
③ 在宅・緩和等 他のサブスぺ専門医(高い総合診療能力をベースに特定の領域を深めた医師)


かしま病院は、コミュニティー・ホスピタルとして、これまで通り、基本領域としての総合診療専門医養成のための教育協力機関としての役割を果たすとともに、病院における外来・病棟・救急での幅広い診療能力、他科や多職種と連携しながら、総合診療病棟を管理運営する能力、退院支援や地域連携を担う能力、診療の質改善、教育、研究を推進する能力などについての研修環境の充実に努め、質の高い病院総合診療専門医の養成に貢献する使命を持っていると考えます。