2019年3月16日土曜日

第10期 研修修了記念講演 ~第143回 FaMReF~

本日の主役は、間違いなく 晴れて家庭医療学専門医コースを修了する 森薗健太郎 先生です。

その晴れ晴れとした表情から、福島県内各地での後期研修を通して、各地で多くの人たちの支えを得ながら、深く充実した研修ができたことがうかがえます。
彼の研修修了記念講演では、研修を通して出逢った心に残った200程の言葉の中から、厳選6つを紹介してくれました。

① カルテを置く位置を、意識しなさい
  患者さんに向かう 心の位置を意識すること

② 医者を、演じる
  悩みながら、立ち止まりながら、それでも医師として生きていく

③ GPのところに、何しにいくんだい?
 (シドニーのタクシーの運ちゃんの言葉)
  家庭医療先進地では、一般の方にとっても家庭医は当たり前の存在

④ 海の見えない いわき って、なんだって思いますよ
 (いわき市民の言葉)
  スーパー防潮堤が、いわきの景観を一変させている…

⑤ 安心を処方する
  自分は安心を処方できているだろうか? 自問自答していく…

⑥ Be there
  生物学的に何もできなくても、医師として患者に寄り添うことはできる
  普遍的な医療の原点

2019年2月21日木曜日

Clinical Skills Assessment ~実践家庭医塾~

今宵の実践家庭医塾では、F先生から 日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療専門医試験で用いられている臨床技能評価法 Clinical Skills Assessment;CSA の紹介がありました。
CSAは、評価を受ける者(医師役)が模擬患者の診療にあたり、その技能を評価します。
福島県立医科大学の家庭医療学講座でも、CSAを用いていますが、評価基準として、英国 RCGPで専攻医のトレーニング中に利用される、診療所外来のフィードバックツールを用いています。1回の診察ですべての項目を満たさなければならないわけではありません。専攻医がこれらの能力をすべて獲得できていることを、数回のセッションを通して確認するためのツールです。

【Consultation Observation Tool:Detailed Guide to the Performance Criteria】
PC1 患者が診療に積極的に関われるよう促している
 この項目は医師のアクティブリスニングスキルや、オープンクエスチョンの使い方、不要な会話の妨げ、非言語的メッセージの利用についての評価です。ただ、多くの診療では促すことの必要性は低いです。促しが必要なときに適切に対応できるか、という点の評価です。
PC2 患者の問題の深い理解につながるようなサイン(キュー・きっかけ)に反応している
 この項目は、重要なキューに対応できているかどうかの評価です。患者の非言語的なキューに対して反応できているでしょうか。キューに対する医師の反応は、言語的反応(動揺や心配している患者への声掛け)、非言語(沈黙の使用)、動作(体勢を変える、患者に触れる、ティッシュを差し出す)などのいずれもあり得ます。
PC3 主訴をコンテクストを通して理解できるよう、心理社会的情報を適切に利用している
 医師には、健康問題の心理的側面、社会的側面(職業的側面を含む)を考慮することが期待されます。それらの側面は事前に情報が得られているかもしれないし、患者が自発的に話すかもしれないし、医師が尋ねて話すかもしれません。健康問題を検討する際に、これらの情報を利用する能力が備わっているでしょうか。
PC4 患者の健康観を探っている
 この項目には「患者の受診理由を探索する」という目的で「Idea, Concern, Expectation」(考え、気がかり、期待)を探索することが含まれます。患者が実際に考えていることを見つけ出すことができるかどうかです。「あなたはどう考えているのですか?」という質問には答えは何も返ってこないでしょう。「あなたに何が起こったのだと思いますか?」「この症状であなたが最も恐れていることは何ですか?」などの質問は、有用な反応をもたらすでしょう。
PC5 可能性の高い疾病の診断に有用な情報を的確に入手する
 可能性の高い診断仮説(鑑別診断)に関連する質問をしているかどうかで評価できます。この能力は診療中のどの段階でも発現されることがある(身体診察中でも、診察後でも、説明のときでも、診療後でも)。この納涼区において、Closed Questionは効果的な質問方法である。健康問題を定義するための一部分として、十分な症状についての情報と病歴の詳細を得られるかどうかです。患者の安全に配慮しつつ、General Practice における疫学的現実も考慮すする必要があります。
PC6 診断仮説に合致した、または患者の関心に合致した、的確な身体・心理診察を選択する
 この能力は、診察の方法の選択を評価する項目です(実施方法の正誤を評価する方法としては適していないため。議論することは可能)。
PC7 臨床的に的確な診断にたどりつける
 臨床的に適切な診断、または診断仮説が作られているかどうかで評価します。
PC8 適切な表現で問題や診断について説明する
 この項目は、患者が抱えている問題に対する説明を評価します。患者と共有された所見の内容、説明内容の質が要点です。優秀な研修者は患者の「健康信念」(PC4で評価した内容)を取り入れます。この能力はPC4が欠如している状態では達成されないでしょう。場合によっては、促さなくとも患者が自分から健康信念を表明するかもしれませんが。
PC9 診断に関して患者の理解を確認する
 この能力は、説明後にどの程度理解されているかを確認できることです。「わかりましたか?」と訪ねて患者のうなずきを確認するだけでは不十分です。積極的に患者の理解を確認することが必要です。「確認のために、今日ご理解いただいたことを教えてください」など。医師と患者の会話で、理解を確認し説明が理解され受け入れられたかを確認することが必須です。
PC10 診療方針(処方も含む)が診断と合致しており、現代の医学知見と照らし合わせて適切である
 治療計画が診断仮説と合致していることはもちろん、現代で認識されている医学知見と照らし合わせて適切であることは必須です。薬剤の選択も「好み」で選ぶのではなく、安全で理にかなっていることが重要です。
PC11 患者は重大な診療方針の決定において選択に加わる機会がある
 治療の選択肢を共有して、医師と患者が共同で意思決定を行うことが求められます。患者の望み、希望も意思決定において検討され(希望通りにいかないこともあり)、エビデンスを参考にした決断を行います。
PC12 リソースを効果的に利用する
 時間を有効に使えているか、他職種を有効に使えているか、など医師が利用可能な「リソース」を有効に利用できているかどうかを評価します
PC13 再診の間隔および再診が必要な条件を明確にする
 この項目は、受診を効果的に活用できるようにするために必要です。いつ来るべきか、どんな状況であればどうするべきかを患者に伝えられているかを評価します。

これらのことができているかを模擬診察を通して評価されるわけですから、ほとんどの被検者はキンチョーするし、普段の診療の通りにやるのは難しいですが、実際にやってみると、自身の癖や抜けやすいところに気付いたり、とても勉強になるようです。


2019年1月24日木曜日

終末期の肺炎について考える ~実践家庭医塾~


超高齢者が、肺炎で入院してきたら、何を考えてどのようなアプローチをすればよいでしょうか?
臨床研修医が経験事例を通して丁寧にまとめてくれました。
発表者本人が普段あまり考えたことがなかったテーマで、医療人としての視野を拡げるきっかけになったようで、とても意義深いプレゼンテーションとなりました。

    嚥下障害の原因は?
・口腔・咽頭の構造異常
→口腔内・咽頭悪性腫瘍、扁桃腫大、甲状腺腫瘍
・口腔・咽頭の機能異常
→脳血管障害、脳炎、脳腫瘍、MG、筋無力症、
オーラルフレイル
・食道構造異常→食道狭窄、外部からの圧迫(TAAなど)、食道腫瘍、plummer-vinson症候群
・食道機能異常→アカラシア、強皮症、薬剤性

    嚥性肺炎のアプローチは? (抗菌薬以外の肺炎治療を中心に)
ABCDEアプローチ
                                                 大浦誠ら;the journal of therapy, 2018
A Acute problem
B Best positin/Best meal form
C Care of oral
D Drug, Disorder of neuro, Dementia/Derrium
E Energy, Exersice, Ethical

    末期肺炎のAdvance Care Planning(ACP)とは?
なぜACPが必要か?

終末期の患者では患者の意向がわからないことが多い。
→終末期には70.3%が意思決定能力を喪失しているといわれている。
                                                         Silveira MJ et al;N Engl J Med, 2010

終末期がいつからか不明瞭
→認知症、加齢による衰弱の疾患軌跡は全身の機能が低下した時間が長く続き、緩やかに死亡までの間に機能が低下していく。
        Henry C, et al; A Guide for Health and Social Care Staff
→誤嚥性肺炎で入院し初めて終末期肺炎と気が付くといった介入の遅れが生じる。

具体的に何をするか
・経口摂取を継続するか、人工栄養を導入するか、そもそも治療をどこまでするか・・・・

→倫理的問題が強い
Jonsenらの臨床倫理の4分割表を使用。
                                         Jonsen AR, et al;臨床倫理学, 2006

2019年1月18日金曜日

福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座 & CFMD家庭医療/総合診療レジデンシー東京 合同リトリート(第141回 FaMReF)

2019年1月12・13日の両日 開催された第141回 FaMReF…
歴史あるFaMReFの記念すべき第141(石井)回目は、CFMDの皆さんとの合同リトリートという形で賑やかな開催となりました。



初日は
西村真紀先生の 明日から診療所で使えるOC/LEP
葛西龍樹教授の Cinemeducation



2日目は
当講座がガイドする Clinical Skills Assessment
喜瀬守人先生の キャリアに関する考察 

懇親会では、福島までお越しいただCFMDのみなさんと、親交を深めることができ、充実した学び多い2日間となりました。

2018年12月16日日曜日

「大人の学び盛だくさん」 ~140th FaMReF in 大原綜合病院~

学習について学びを深めるユニークな企画!






大人の学びって、経験によって必要に迫られて、問題を解決するために、自ら目標を立てて、取り組むわけで、とても主体的で能動的!
カリキュラムがきっちり決まっている義務教育とは真逆ですね。

冒頭のレクチャーでは、ホスト病院である大原綜合病院の菅藤賢治先生が、Uirich Boser 著の「Learn Better」学びの6つのステップを紹介してくれました。

1. 価値を見いだす
何故それをしようと思うのか? その意味を自ら発見する。

2. 目標を決める
学習の効率を高めるために、目標を設定し思考の質を上げる。

3. 能力を伸ばす
学びの過程をモニタリングし、外部からのフィードバックを受ける。

4. 発展させる
人に教えるつもりで実際にやってみる
不確実性を受け入れ、多様性のある環境をつくる

5. 関係づける
たくさんの具体例を学び、それらの関係性を推論する。

6. 再考する
過信を捨てて、実は自分は分かっていないことを知る
静かな環境で内省する必要性
そして繰り返し学ぶ

ある意味、当たり前のことで、日頃 無意識下でやっていることですが、こうやって言語化してみると、それ自体が格調高くて、アカデミックな感じになりますね。
これを踏まえて参加者らが日頃の学習の経験を語り合いましたが、みんなそれぞれ限られた時間の中で、臨床上の疑問に工夫・模索しながら対応していることが分かりました。

今回の専攻医の振り返りは、Significant Event Analysis:SEA 形式でおこなわれました。
SEAは、事例や症例に関して当事者が深く振り返り、言語化し、今後の改善に対する提言をするという下記の流れで実施します。

1.significant event の記述
2.最初に考えたこと、そのときの感情
3.うまくいったこと
4.うまくいかなかったこと
5.こうしたらよかったと思うこと
6.次のアクションプラン、学びの計画

今回は、現在のかかりつけ医への相談なしに、直接受診(初診)となった患者さんへの対応についての振り返りでした。
こんな時、医師としてどんな気持ちになるでしょうか?
私はどうしても陰性感情を抱きがちです。
しかし、そういう行動に至った患者さんには、必ず何らかのコンテクストが潜んでいます。
このような状況下で、いかに ニュートラルな気持ちで対応できるか?
むしろ、やりがいをもって対応できるか?
わたし自身にとっても深い省察にもなるテーマでした。

2018年12月15日土曜日

家庭医療/総合診療 ウィンター・フォーラム 2018 @福島県立医科大学

「家庭医療/総合診療 ウィンター・フォーラム 2018」@福島県立医科大学
サマー・フォーラムの盛会を受けて、今年は学生・研修医向けに冬にも熱い学びの機会を企画したところ、20名を超える外部参加申し込みがあり、にぎやかなフォーラムとなりました。

家庭医療/総合診療の真髄と醍醐味を、多くの若者に出来るだけ早く深く知って欲しいという講座スタッフらの熱量が結晶となり、いずれのセッションも誰にでも分かりやすく家庭医療/総合診療を体験・イメージできるようによく準備された内容でした。

医学部低学年の学生さんも含め、幾つかのワークを通して皆さんとても積極的にディスカッションしてくれて、家庭医療/総合診療が、ごく当たり前に重要で魅力的でやりがいのあるものとして受け入れられつつあることを肌で感じ、とても感慨深かったです。





2018年12月9日日曜日

学び合い ~いわき志塾~

2018年12月8日。
いわき志塾の講師として所属専攻医を派遣させていただきました。
今回は、医療・法律・スポーツのスペシャリストからインプットされた人生観を中学生が聴き、次に中学生らがそれぞれの感性で咀嚼し、得られた知見やパワー・フレーズをチームごとにまとめていきます。
最後に参加者全員に各チームが5分間に凝縮してプレゼンします。
今回は1・2年生率が高く、初参加の生徒も多かったのですが、中学生たちの、ポイントを捉えサマライズしていく能力の高さに驚愕しました。
また、今回の講師陣はバラエティーに富んでいてとても楽しかったです。
専攻医本人も自身の人生を振り返り、志の高い中学生の熱量に触れて、とても良い刺激になったようです。
おまけに、日常業務では指導医も気付きにくかった彼女の隠れた才能を、志塾を通して開花させていただきました。 数多の学びの機会を与えてくださった現役中学生と教育委員会の皆様に心より感謝申し上げます。