2021年11月7日日曜日

セクシャルヘルス/性を考慮したケア ~167回 家庭医療 レジデント・フォーラム~

本日の家庭医療 レジデント・フォーラムの指導医レクチャーのテーマは、セクシュアルヘルス/性を考慮したケア、いわるゆるセクシュアルマイノリティーでした。

しかし、セクシャルマイノリティーと言われるLGBTQ+の方々が、マイノリティーと表現するにはあまりにもコモンな問題であることを再認識しました。

なんせ、11人に1人が抱える問題だからです。

これは、左利きの人の比率に匹敵する多さですので、プライマリ・ケアに従事する私共にとって需要な課題です。

そもそも、LGBTQ+は、性的少数者を表す言葉のひとつとして使われています。

  • L:女性の同性愛者(レズビアン)
  • G:男性の同性愛者(ゲイ)
  • B:同性愛者(バイセクシャル)
  • T:こころとからだの性の不一致(トランスジェンダー)
  • Q:こころの性別、恋愛の方向が定まっていなかったり、その変化している途中であるなどの人々(クエスチョニング)

それらに加えて、それ以外の性を表す「+(プラス)」を付けて LGBTQ+ という言葉が使われるようになってきました。
また、LGBTQ+のことを理解し、応援する人のことを「ALLY(アライ:味方、支援などを意味する英語が語源)」と呼びます。

これだけ多くの LGBTQ+ の方々が’おられるということは、カミングアウトされている方々以外に、それをせず(出来ず)にいる多くの方々が潜在していることを意識したケアが求められることを知ることが出来ました。





複雑な想いに対して柔軟な対応ができる家庭医の存在はとても重要だと再認識しました。






2021年10月17日日曜日

家庭医の予防医療 ~第166回 家庭医療レジデント・フォーラム ~

本日の家庭医療レジデント・フォーラムのテーマは予防医療・健康増進でした。
「家庭医は患者さんとの接触の機会すべてを疾病の予防の機会ととらえる」という格言があります。
それはそうなんですが、実際の診療の現場では、推奨される予防に関する介入すべてを実践するのは、なかなか難しいです。
介入の推奨度から優先度を意識して、院内掲示やパンフレット、問診票の内容などを工夫してスムーズに予防に関する話題に入れるようにしたり、カルテ内で検診や予防接種の実施状況を整理しておいたりするだけで、随分と抜けを防ぐことができそうです。

また、予防医療・健康増進をサポートする上で切っても切り離せないのが、行動変容の促進のアプローチですが、指導医レクチャーでは、分割、前進、利用の3つの手法を用いた解決志向アプローチが紹介されました。

肥満の方へのアプローチに関するロールプレイは、あまり危機感はないけれど、漠然と「痩せたい」という願望を持つ患者さんへの短時間の医療面接の中でどこまで行動変容に迫れるか?という感じで、なかなかチャレンジングなものでしたが、皆さん、あの手この手で奮闘されていました。


2021年9月26日日曜日

マインドフルネスの活用 ~第165回 家庭医療レジデント・フォーラム~

 本日の家庭医療レジデント・フォーラムの指導医レクチャーでは、日頃からプライベートでも仕事でもマインドフルネスを取り入れている若山先生から、ワークを交えたマインドフルネスのお話がありました。


ネガティブな思考の反芻や心配事は、うつ病などの精神疾患を引き起こす要因になりますが、マインドフルネスに基づく介入は、反芻や心配を減らすのに有効であるという複数の報告があります。

Querstret, Dawn; Cropley, Mark (2013). “Assessing treatments used to reduce rumination and/or worry: A systematic review”. Clinical Psychology Review 33 (8): 996-1009. 

Gu, Jenny; Strauss, Clara; Bond, Rod; Cavanagh, Kate (2015). “How do mindfulness-based cognitive therapy and mindfulness-based stress reduction improve mental health and wellbeing? A systematic review and meta-analysis of mediation studies”. Clinical Psychology Review 37: 1-12. 

1970年以来、マインドフルネスの臨床応用が開発され、心の健康に関する問題の予防や治療効果があるようです。

すぐに自身の診療に活用するのはなかなか難しい概念のようにも感じつつ、振り返ると実はすでに無意識のうちに活用している部分もあるような…

自身の日常では、ひたすらランニングしている時が、この状態に当てはまるように思います。

その瞬間 瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれない状態で、ただ観るとという境地を目指していきたいと思います。

2021年7月29日木曜日

家族機能のアセスメント ~第164回 家庭医療レジデント・フォーラム(特別編)~

2021年7月25日開催の家庭医療レジデント・フォーラムは、東京慈恵会医科大学附属病院 家族支援専門看護師の児玉久仁子さんに講師を務めていただき、家族機能のアセスメントについてかなり深いところまで突き詰めて学びました。

児玉さんの講義によると、よく言う家族療法はシステム的家族療法で、システム論1980年代までに発展し、そこに徐々にナラティブアプローチが加わり、以降の世代に広がっていて、家族看護は看護学のアプローチが加わっていったもので、メディカルファミリーセラピーは、身体・精神・社会モデルに準じて行われる家族療法で、これが総合診療医になじみ深い家族志向のプライマリ・ケアという位置づけになるそうです。

家族志向ケアでは、ヘルスケアの主役は家族という背景を持った患者であり、治療者もシステムの一部であると考えるのですが、臨床家もシステムの一部というのは、歴史的に新しい考え方のようです。

今回は特に家族システム論の中の家族機能について掘り下げて学びました。

家族機能には相互作用の連鎖(パターン)があり、一定のルールに則った特徴的な行動パターンが繰り返されます。

そこには原因と結果があり、通常では原因をなくすようにアプローチするわけですが、家族関係に当てはめると上手くいかないようです。例えば、アルコールを飲むので生活習慣病の管理が悪いケースで、本人の立場は「妻が怒るからお酒を飲む」というので、妻が怒らなければ解決するのかと思えば、妻からすれば「夫が朝から飲むから怒る」という具合に、悪循環は、それぞれの相互関係で巻き起こっていて、原因はシンプルではないということです。


家族の相互作用を確認し、やりとりを細かく聴取し、ここでは「何があったか」に焦点し、「誰が悪い」「何が悪い」ではなく、「誰も悪くない」とはっきり伝えることが大事で、アプローチポイントは、ネガティブなフィードバックをせずに、実践の中で出てきているポジティブな部分、家族の良いところを探すことのようです。

問題そのものに切り込むのではなく、その背景にある良い部分にフォーカスすることが、悪循環を好転させるきっかけになるようです。


専攻医が提示した事例は、まさに、自宅退院を希望する患者とそれを頑なに拒む家族に対し、家族の行動の背景に潜む優しさや几帳面さに気づきフォーカスしたところ、八方ふさがりにみえていた事態が、一気に好転するというものでしたので、このアプローチの有用性を実感できるものでした。



2021年7月22日木曜日

指導医のモヤモヤについて気軽に語り合おう!


2021年7月21日、初めて開催された「ふくジェネトレーナーズラウンジ(ジェネトレ)」に参加してみました。ジェネトレは、福島県⽴医科⼤学 医学部 総合診療医センター主催の指導医向けオンライン講習会で、指導医養成が専門領域の及川沙耶佳先生(福島県立医科大学 医療⼈育成・⽀援センター)をアドバイザーに招き、学⽣や研修医の教育にやりがいを感じながらも、教育に対してモヤモヤや不全感を感じる指導医らが、教育について気軽に語り学べる場を提供する目的で企画されました。

栄えある事例提示のトップバッターとして、先ずは私自身の拙い医学教育の実践例を紹介させていただきました。私が医学生の臨床実習教育を担当する際に注力している点は、なるべく多く実際の臨床経験(患者さんを診るということ)をしてもらうことです。座学や机上の自学だけでは定着しなかった記憶や技術が、患者さんやご家族との関りを通して定着し、学習を促進すると信じているからです。実際に多くの学生は、臨床経験を通して高いレベルの気づきを得てくれます。中には指導医の期待をはるかに上回る深い学びを得る学生もいます。一方で、同じように臨床経験を積ませても、その経験の意義をあまり理解してくれない学生もいて、この差はどこから生まれるのか?というモヤモヤがありました。参加者の先生方と賑やかに語り合いながら、私のモヤモヤについても共感していただきました。

その後、アドバイザーの及川先生から私の事例について解説をしていただき、経験的学習理論の理解が重要であることを知ることができました。やみくもにたくさん経験させるだけでなく、学生の過去の経験とリンクして、もともとある知識と関連化し臨床に応用できるように、指導医として、一人ひとり違う学生に関心を持ち、それぞれにとって最適な気づきの促進の仕方を探求していこうと思います。


2021年6月26日土曜日

家庭医療/総合診療 サマー・オンライン・フォーラム 2021

 福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座では、家庭医療/総合診療を学びたいという医学生・研修医向けに、2006年から毎年サマー・フォーラムを開催しています。

 第1部では、在宅医療をテーマに、家庭医とともに訪問診療を疑似体験できるワークショップでした。参加者はこのセッションを通して、患者の病状にフォーカスした視点、家族・社会背景を含めた全体を見渡す視点、流れを読み戦略を練り実行する視点、これら3つの目を駆使して、より良いケアに活かしていく患者中心の医療の方法の有用性や楽しさ・やりがいを体感できたようです。

 第2部では、健康の社会的決定要因をテーマに、患者の現状を整理し、そうなっている原因を探り、実現可能な具体的な支援を導きだすワークをおこないました。健康の社会的決定因子には、収入・教育・住居・医療サービスへのアクセス・幼少期の体験・社会的支援・コミィニティ・仕事・食事や栄養状態などがあります。これらの状況をそれぞれ確認することで、いま起きている問題点が整理しやすくなり、更に、何故そうなっているのかを分析することで、これからの戦略が立てやすくなることを実感することができました。

 このサマー・フォーラムは、昨年からオンラインでの開催となっていますが、今年も医学生・研修医を中心に40名を超える参加があり、大盛会となりました。



2021年6月12日土曜日

情報の鵜呑みにご注意を! ~第163回 家庭医療 レジデント・フォーラム~

 

今回のメインテーマは「論文との上手な付き合い方」でした。
コロナ禍の影響で、休憩時間に医局でくつろいでいる時に、製薬会社のMRさんから予定外の情報提供を受けることは皆無になりましたが、以前は、自社製品の有用性を示す論文を紹介するために、熱心に足しげく病院を訪問されるMRさんが数多くおられました。
そういった場合、研究のスポンサーが製薬メーカーだったり、その他あやしいことこの上なくて、わざわざ時間をかけて目を通す気が失せるわけです。
今回は、一流雑誌に載るような、一見して自身の診療に活用してもよさそうな立派な雰囲気のいくつかの論文を、専攻医3名が紹介・明快な解説をしてくれました。しかし、丁寧に批判的吟味をしていくうちに、やはり鵜呑みにできないものが潜在していることを再確認する結末となりました。
葛西教授によるシネメディケーションでは、ウイルス感染症パンデミックを描いた映画「コンテイジョン」を教材に、映画で描かれている不確かな情報に惑わされパニックに陥る人々と、現在のコロナ禍にある私たちの状況を重ねて、家庭医として、最新で最良の医学情報の活用と、情報の発信をしていくという私たちの役割について議論しました。