2013年3月6日水曜日

「最後の授業」の妄想

あっちゃん先生はアメル先生になれるのか?

来年度から、大学教員職を退き、いわきに腰を据えて診療・教育活動を行なうことになったわたくし。
家具らしきものはすでに運び出し、すっかり小物だけになった教員公舎で、洗濯かごをひっくり返した仮設テーブルとキャンプ用品の器でウィスキ―を傾けながら、明日の最後の授業(医学部4年生の講義)の準備をしている。

フランスの誇りを伝えきったアメル先生のように、家庭医の魅力と家庭医療に関わる者としての誇りを伝えきり、これから臨床実習を始める彼らが、新しい医療人として高い志を持って旅立てるように努めたい。

ご興味がおありの方ならご聴講(というよりご参加)も大歓迎!


<内容>
医療入門1「プライマリ・ケアと地域医療」特別講義

家庭医が地域で実践しているプライマリ・ケアについて、より多くの皆さんに深く掘り下げて学んでいただきたいと考え、下記のとおり特別講義を準備しました。

実際の患者さんのストーリーを追いながら、臨床推論スキルや包括的かつ効率的なアプローチ、家族志向ケアなどを駆使して、家庭医が“患者中心の医療の方法”を適用していく過程を模擬体験することができます。

ぜひこの機会に“家庭医の醍醐味”を体験してみませんか?

「患者さんが教えてくれた家庭医の役割」
日時:平成25年3月7日(木) 8:40~11:50 (1・2時限)
場所:福島医大 6号館 第4講義室
対象:医学生、看護学生、研修医その他
   家庭医療に興味のある方ならどなたでも大歓迎です!

暑苦しい指導医の重い思い・・・

 東日本大震災、および福島第一原子力発電所の事故により甚大な被害を受けた当地、福島県では、かねてからの懸案であった医師不足・医師偏在の構図が加速し、医療崩壊が社会問題として顕在化している。医療従事者が減少した地域の医療現場では、更に過酷な勤務体制が強いられ、まさに今の福島は県全体がこのような医療提供スタッフ減少の負のスパイラルに陥っている。そしてこのままでは、これは間もなく福島だけの問題ではなくなるであろう。
この崩壊した地域医療を再生するためには、既存のプライマリ・ケアのシステムを抜本的に改革する必要がある。医療システムは、電気・ガス・水道などのライフラインと同じく、日常生活の安定のために欠かせない、非常に公共性の高いものである。国民の生活がある限り、それは網の目のように隅々まで通っていなければならない。私は、医療が国民のライフラインとしての役割を果たすためには、この国においても家庭医の役割が最も重要であると確信している。そして、いまこの場で、この時を過ごし、この厳しい現実を目の当たりにしている私達が、このことを強く発信し、死に者狂いで日本のプライマリ・ケアを変えていかなければ、他に誰がやる?そんな熱い感情を抱いている。
私は生涯、福島において医療のライフラインとして生きていきたい。そして未来の日本のどこかで、医療のライフラインとして生き、その地で新たに家庭医療の種を蒔いてくれるであろう新しい家庭医、真の医療人を、情熱と使命感をもって数多く育てていきたいと強く願っている。そして、国民の誰もが家庭医が提供する質の高いプライマリ・ケアを享受できる日が来ることを信じている。

現職を拝命して以来、多くの医学生や研修医の教育に関わってきた。そして、医学生や研修医が自ら学び、家庭医の専門性や役割を正しく理解し、実践してくれた時、私は至極の喜びを感じることができることを知った。また、その体験を繰り返すことにより、私自身が家庭医療の専門性を再認識したり、新しい発想を得ることができたり、家庭医を育成することへの情熱を維持することができることも実感した。実際の教育を通して、学習者の学びが指導者の学びにもなるような「共に学ぶ文化」を経験することができた。
来年度からは、いわきに腰を据えて診療をしながら、いわき常駐の指導医として、学生・研修医を受け入れることになるが、これからも、学習者と共通の理解基盤を築き、「学習者中心の教育」を実践しながら、これまで以上に、私自身も共に学び、成長していきたい。

2013年2月21日木曜日

キャリア支援・復職支援

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座では、家庭医療専門医の輩出(後期研修プログラムの提供)、医学生・初期研修医への地域・家庭医療の教育はもちろんのこと、それ以外にもプライマリ・ケア領域の診療・教育・研究における様々なキャリア支援・復職支援を行なっています。
いずれも、個々の多様なニーズに対応できる、とても自由度の高いプログラムです。
あなたの“なりたい医師像”の実現のためのキャリア形成を全力でサポートします。


質問・意見・ご見学など、いつでも“今でも”遠慮なくどうぞ!
福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座
960-1295 福島市光が丘1番地
TEL: 024-547-1516  e-mail :  comfam@fmu.ac.jp
URL :  http://www.fmu.ac.jp/home/comfam/

2013年2月16日土曜日

吹雪にも負けず!~第80回 FaMReF@喜多方~

2013216日(土)今日は月例のFaMReF
いつものようにサンシャインないわきを順調に出発。
青すぎるいわき

しかし、郡山の手前から吹雪に・・・
案の定、磐越道の磐梯熱海IC~会津若松IC間が閉鎖されてしまった。
白すぎる猪苗代


会津都市部の融雪システム
(もっと寒い地域だと単なる製氷機になってしまうだろう)


そんなこんなで、交通規制の網の目を掻い潜って喜多方に辿り着いた勇者らによるFaMReFが開幕した。

研究発表「プライマリ・ケアにおける診療科包括性に関する研究()
東京医科歯科大学4年 原萌さん
家庭医の診療の包括性を統計学的に証明しようという面白い試みに対し、活発な議論が取り交わされた。交絡因子が多くて他科診療所との単純な結論付けは難しいが、それでもやっぱり包括的なのね!ということが数字で見れるのはなんか嬉しい。
学生さんのチャレンジに敬意を表したい


Reflection of the Month「私、もう年だから・・・」
後期研修医2 年目 川名瞳先生
「十分長生きして、十分幸せだから・・・」と言いつつも、どこか寂しそうな高齢者との関わりを通した振り返りのプレゼン!
患者背景を深く深く理解することで、患者さんの言葉や雰囲気に共感できる。そんな体験に参加者一同も共感を覚えた様子。
“何かありそう”そんな信号を感知するアンテナを常にはっていたい。


台湾の家庭医療 廖育婉(Liao Yu-Wan)先生
日本同様にプライマリ・ケアの崩壊の危機に瀕している台湾の実情を教えていただいた。同じ様な境遇にある両国が、すでにある高齢社会をどう克服していくべきか?
継続的に方略を議論し、解決策を実践し続けていきたい。

あっちゃんの考える診断学 石井敦
非典型的な訴えや、非典型的経過に遭遇した時、適切なキーワードは何かを再検討することの重要性を学んだ。
特に「突発」には敏感に反応したいところ・・・

Cinemeducation 葛西龍樹教授
「レッドクリフ(2008)」
真のリーダーとは?
学習者中心の教育を取り入れた兵の統率。
問題の原因を意識した再発予防。
家庭医の診療・教育にも応用できそうな示唆に富む映画であった。
そんな議論が展開された! 

頑張った後は懇親ボーリング大会。
ボーリングなんて最後にいつやったか記憶にない。
医者になってから1回もやってなかったような気がする。
みんな似たようなもんで、非常に低レベルな争いで白熱しながら夜が更けていった・・・
それにしても、時速7キロ台でもストライクやスペアはとれるものなのですねぇ~

2013年2月15日金曜日

患者中心の症例検討~家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾~

今宵は、ファカルティーのT先生の経験症例をもとに、家庭医の役割りについて議論した。うまくいったこと。出来なかったことを整理しながら、貴重な経験をこれからの診療に活かしていく・・・そんな建設的な学びの場であった。
そして、疾患の診断・管理を正確に行うのと同時に、常に患者中心のケアを実践していくことの大切さと、奥の深さを再認識した。

勇気ある試みをしたT先生と教授に賛辞を贈りたい。

2013年2月11日月曜日

診療拒否の「正当な理由」とは何か?

最近、当直の度に一晩に救急車5~6台受け入れというのは普通で、10台近いこともまれではなくなっている。
当然、時間外に緊急検査体制を敷く人的余裕はない弱小病院であり、医師・看護師それぞれ1人の軟弱な当直体制で対応している。
いわき市内の救急車出動台数は、大雑把に年間10,000台前後で、当院は年間1,000台前後、つまり、10分の1程度の受け入れで推移してきた。
2次輪番病院が確か17病院ぐらいあることを考えれば、弱小病院の割にはまずまず身の丈程度に頑張っている方だと見積もっていた。
しかしそこで、ある疑問が・・・
最近よく見られる一晩で56台となると、ざっくり計算すれば市内全体の一晩の救急車出動台数の3分の1程度に相当する。
例年よりも救急車出動台数が増加しているのか?
全体に対しての当院での受け入れ比率が上昇しているのか?
それとも、その両者なのか?

救急車受け入れ依頼照会内容は多彩だが、当院が発生場所から直近でないのに依頼が来る場合のほとんどは、当直医師の専門外・入院病床が満床・他の患者の処置中などの理由で現場近くの医療機関から受け入れを断られたケースである。
ところで・・・
そもそも「専門外」「満床」「処置中」で断っていいんだっけ?
医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければこれを拒んではならない」と規定している。
つまり原則断ってはいけないのだが、詳細は「正当な理由」とは何かにかかってくる。
関連通知文として、医発第752 号「病院診療所の診療に関する件」、日医収第755 号「所謂医師の応招義務について」の記載を参考にすると・・・

【正当な理由にならないもの】
・お金を払わない患者の診療拒否
・診療時間外の急を要する患者の診療拒否
・緊急の治療を要する患者であって,その近辺に他の医師がいないのに、特定の場所の人々を診る医師だからと診療拒否
・単なる天候の不良を理由とし往診拒否
・標診療科以外に属する疾患であるが、患者がそれでも診て欲しいと求めているのに診療拒否
・単に軽度の疲労を理由とする診療拒否

【正当な理由に該当するもの】
・診療時間外であって,軽度な患者の診療拒否
・地域で休日夜間診療体制が敷かれており,かつ軽傷である患者の診療拒否
・医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合
・標診療科以外に属する疾患であり,患者が了承した場合

つまり、専門外であっても、患者がそれでも診て欲しいと求めていれば診療拒否できないことになる。
逆に、診療時間外の急を要さない患者さんは診療拒否できる。更に、地域で休日夜間診療体制が敷かれている場合の軽傷患者は診療を拒否してもよい。
処置中というのも、本当に急患がたてこんでいれば、医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合に準じるので正当な理由のように思われる。
ただし、満床に関しては、初期治療を断る正当な理由にはならないかもしれない。
事実、実際に診療してみなければ、入院が必要かも、専門外(専門医でないと対応できない状況)かどうかも判断できないことも多い。

いずれにしても、各医療機関の実情を考慮すると、この法律を遵守することは、困難になってきている。もしも、遵守を強要するような圧力が強まれば、細々と出来る範囲で何とか頑張っている医療機関や職員らが次々に崩れていくに違いない。
こういった地域医療の歪みの多くは、最終的には、やめるにやめれない、断るに断れない地域の基幹病院にシワ寄せがいくことになる。
しかし、そんな中でも、日々必ずどこかで誰かが個人レベルの努力で何とか対応しているということを忘れてはいけないと思う。
そういった使命感に燃え決壊を食い止めている人達の心身が折れてしまう前に、いまの状況を何とか変えなければいけないことも忘れてはいけない。

2013年2月6日水曜日

お知らせ! 第80回 Family Medicine Resident Forum@喜多方

台湾の若手家庭医によるプレゼンやら、ボーリングやらで、盛りだくさんの内容です!


80Family Medicine Resident Forum@喜多方
2013216日(土)14時~18時頃

対象:家庭医療に興味がある方ならどなたでも
内容
①自己紹介
②研究発表 東京医科歯科大学4年 原萌さん
Reflection of the Month 川名瞳先生
④台湾の家庭医療 廖育婉(Liao Yu-Wan)先生
 休憩
⑤患者中心の症例検討 田淵智子先生withいわきチーム
⑥あっちゃんの考える診断学 石井敦
Cinemeducation 葛西龍樹教授
 記念撮影

懇親ボーリング大会:喜多方スターボウル 19時頃~


参加希望の方は、福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座
 comfam@fmu.ac.jp (担当:國分、玉木)までご連絡ください。
交通手段、懇親会についてもご相談ください。