2018年10月13日、みちのく総合診療医学センターを見学させていただきました。
みちのく総合診療医学センターは、宮城県塩竈市の地域医療支援病院である坂総合病院を中心として、中小の地域病院、診療所も含めた教育フィールドをもち、救急医学、病院総合診療、家庭医療、在宅医療など、東北の総合診療を担う様々な分野を担う医師を育てることを目指し、2012年に以下の目的で設立されました。
①
診療所・小規模病院の家庭医療、総合病院の総合診療を担う医師を育成
②
ジェネラリスト医師の教育・研究の拠点となり、目指すべき医師像を探究
③
理想の地域医療を追求することで、東北の医療に貢献
みちのく総合診療医学センターは、しばた協同クリニック院長の小幡篤先生をセンター長として、医療福祉生協連家庭医療学開発センター長で日本プライマリ・ケア連合学会理事の藤沼康樹先生をアドバイザーに迎え、活発な診療・教育・研究活動が展開されています。代表的な学習・省察の機会として、総合診療カンファレンス、レジデントデイがあります。
<総合診療カンファレンス>
毎週火曜日の午後、主に総合診療科と救急科に入院中で研修医が担当している症例を中心にカンファレンスを実施しています。研修医が診断や治療、退院に向けて苦労しているケースについて、救急、総合診療、家庭医療、感染症、循環器、脳神経外科を専門とする指導医からアドバイスをもらいながら、医学的な問題はもちろん、患者さんが抱える心理・社会的な背景を含めて包括的に検討していきます。
<レジデントデイ>
アドバイザーの藤沼康樹先生を招いて月1回レジデントデイを坂総合病院や古川民主病院などで開催し、レジデントの1ヶ月間の振り返りを行っています。毎月の目標と評価、外来・往診・入院症例ログ付け報告、外来・往診診療ビデオ記録での検討、Clinical Jazz、総合診療関係のテキストの読み合わせなどを行います。その他、藤沼先生からのレクチャーやEBM指導なども行っています。外部からの参加もオープンにしています。
今回の視察では、基幹病院である坂総合病院で開催されたレジデントデイに参加させていただきました。参加者は16名(専攻医3名、指導医10名、見学者3名)で、専攻医一人ひとりから、1ヶ月の振り返り(省察)、ポートフォリオ発表、ビデオレビュー等がなされ、それぞれに対し、指導医から丁寧なフィードバックがあり、専攻医らが次へのステップへ向けた具体的な目標を設定できるように配慮されている点に感銘を受けました。
視察を終えて、まず、福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座が提供する福島県立医科大学総合診療専門研修プログラムとの比較検討をしました。
共通点としては、日々の研修を多施設に分かれて行っている専攻医らが、各種通信手段を駆使して情報共有しながら、定期的に一堂に会し、高い水準の学びを享受できるように配慮されているということです。
相違点としては、福島県立医科大学総合診療専門研修プログラムの拠点となる研修施設がすべて中小の医療機関であり、それぞれが広大な福島県内の別々の医療圏に属しているため、各拠点研修施設間の診療上の連携は殆どないのに対し、みちのく総合診療医学センターは、100年以上の歴史を持つ塩竃市の地域密着型の坂総合病院を基幹病院として、3つの小規模病院と2つの診療所が互いに連携し、急性期から慢性期・生活期までの幅広いフィールドでの研修が提供されています。一方、福島県立医大のプログラムでは、県内各地の拠点研修施設を中心として、その地域ごとにその地域の実情に合わせた新たな地域包括ケアシステムの構築に取り組むことができるというチャレンジングな魅力があります。
このことを踏まえ、いわき市で、家庭医・総合診療医を育成するネットワークを構築し、魅力ある研修環境を提供するためには、2008年から家庭医療専攻医の受け入れ実績のある養生会かしま病院が、めんどうみのよい病院を目指して展開する地域包括ケアシステム(いわき地域・家庭医療センター構想:かしまモデル)を存分に活用し、近隣の診療所と連携しながら、予防・診断・治療・リハビリ・在宅医療・福祉・介護についてシームレスに学べる環境を整備するために、多施設が研修の質の向上のためにオールいわきで協力していくことが不可欠であると考えました。
10年かけてようやく蕾が膨らみつつあります。今こそしっかりと花を咲かせ、これからの10年で結実させます。
どうやら、死に者狂いの闘い(みちのくプロレス)の時が来たようです。
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