2010年10月14日木曜日
「家族志向型ケア ③」
今回は、前回お示しした「家族志向型ケア」のコンポーネントの1番目「 病気を心理社会的な広がりでとらえる」についてご説明していきます。これは、病気を単なる病理学的な変化という視点からみるのではなく、心理社会的な側面からもとらえるということです。以前「患者中心の医療の方法」の中でご説明したように、家庭医療は、患者さんのもつ「疾患」と「病気」の両方の経験を探るアプローチ法をとって発展してきました。「疾患」とは、病名のラベルのようなもので、「病気」とは、人が個々に持つ解釈、期待、感情、影響を含めた心理社会的な苦しみのことです。同じ「疾患」を持つ患者さんであっても、患者さんの数だけ、個々に固有の苦しみ「病気」が存在します。家庭医療では、健康問題を持つ人の「疾患」と「病気」の両方のケアをバランス良くしかも深く掘り下げていきます。中でも家族志向型ケアでは、患者さん本人の心理社会的な側面だけでなく、患者さんの家族1人1人の持つ解釈、期待、感情、影響を含めた心理社会的な側面にまで探っていきます。そして、病気が家族に及ぼす影響と、家族が病気に及ぼす影響との両方を見極めたうえで、患者さん本人と、ご家族それぞれに対する適切なアプローチ方法を検討し、実際のケアプランを見出していきます。次回は、「 病気を心理社会的な広がりでとらえる」ことについて、具体例をお示ししながら更に解説を加えていきます。きっとその重要性を実感していただけると思います。
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