患者中心の医療の方法は、家庭医療の専門性の中でもいわば集大成としての役割があり最も重要なものです。これを理解し実践できることが家庭医の臨床能力として必須であるといえます。
ところで、家庭医療で「患者中心の○○」という場合、それは、単なる「患者様第一主義」、「患者様のことを考えて」といった建前や医療者の道徳のような精神論を言っているのではなく、実は多くの臨床研究の成果によって開発された方法を指します。もちろんそれは家庭医療を学ぶ人に教育することが可能であり、その実践を通じて繰り返し再評価され、絶えず改良されてきました1)。患者中心の医療の起源は、カナダで初めての家庭医療科がウェスタン・オンタリオ大学医学部に創設され、初代主任教授としてイアン・マクウィニー先生が赴任した1968年に遡ります。彼らは患者が受診するときの「本当の理由」を理解することに着手し、「患者-医師関係」をテーマとした研究を発展させていきました。そこへ1981年に南アフリカから客員教授としてジョセフ・レーベンスタイン先生が赴任し、家庭医療の教育方法として「患者中心の医療の方法」を生み出し、それを実践しながら発展させていったのです。マクウィニー先生らのチームの素晴らしい点は、あくまでも家庭医療の臨床現場から生じる疑問に答える研究に価値を置き、研究で得たことをすぐに診療や教育の場に還元して、さらに家庭医療の質を高めていったことです。家庭医療を利用する地域の人々の健康を守ることを目的に研究を続けたのです。
1)Stewart MA, Broun JB, WetonWW, McWhinney IR, McWilliam CL, Freeman TR. Patient-Centered Medicine: Transforming the Clinical Method Oaks: Sage Publications; 1995.
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