2016年11月28日月曜日

「死」と「笑い」の融合 ~かしま病院 平成28年度 院内講演会「Death Education」~

社団医療法人 養生会 かしま病院 平成28年度 院内講演会の第2弾は…
埼玉県秩父郡 国保町立小鹿野中央病院の内田望先生による「Death Education」でした。

おもしろおかしく旅立つ
 ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~

日時:平成28年11月25日(金) 17時30分~18時45分
場所:社団医療法人 養生会 かしま病院 コミュニティーホール

よりよく生き、よりよく逝く ために、終末期医療に携わる医療関係者はもちろん、超高齢社会を生きるすべての皆さんに考えていただきたいテーマですので、最高に“おもしろおかしい”講師をお招きしました。



いきなり内田先生の特技であるマジックで幕を切った講演。
軽妙でユーモアあふれる語り口。
話が進むにつれて、私たちの日常で敬遠されがちな「死」と、対極にある「笑い」が、徐々に一つのものとして融合していくのを感じました。

思えば私は、医師として患者さんの看取りに関わる時、その患者さんにとって重要な役割を担うものと自惚れに近い感覚を持っていたかもしれません。
しかしながら、主役である患者さんの長い人生劇場において、所詮 医療従事者はほんの脇役でしかないことを認識することの重要性を教えていだたきました。

ところで皆さんは、自分の死について考えたことがあるでしょうか?

例えば、どんな病気で死にたいですか?
①癌
②心筋梗塞
③脳卒中
④老衰
⑤その他
⑥私は死なない

⑥を選択された方は、今すぐ病院に行った方が良いそうです。(笑)
賛否両論はあると思いますが、私は①で死にたいです。
最も計画的に人生の最期を迎え易いからです。
苦痛の緩和方法も他の死に方に比べるとある程度確立されつつあります。
お世話になった方々にちゃんとお礼の気持ちを伝えられる可能性も高いでしょう。
④も穏やかで捨てがたいし、内田先生の研究では一般的に一番人気らしいのですが、最期にずっと寝ていたり、多くは認知症をともないやすいため、お世話になった方々に「あんた誰?」ということも…

人は終末期に以下のことを願うようです。
①愛されていることを感じたい
②自分らしく生ききりたい
③希望をつなげたい
④惜しまれて死にたい
⑤苦しまないで死にたい
⑥心癒されて平安に死にたい

私見ですが、病院以外の住み慣れた環境で最期の時を過ごすことは、上記の⑤以外のすべてを叶えやすいように思います。

「Death Education(死の準備教育)」とは
自分に与えられた死までの時間をどう生きるかを考えるための教育
死に対して主体的に考えるための教育
        アルフォンス・デーケン「生と死の教育」岩波書店 2001

死の多くが病院という場所で起きる現代。
死が医療関係者以外の皆さんにとって一般的に身近でなくなった現代。
Death Educationは容易ではないかもしれません。

しかし、ご講演の中で、自宅や介護施設など、病院以外の場所で看取りを経験したり、Death Educationを受けた ご家族や介護スタッフは、看取り後に、人の死について肯定的に考えるようになり、人の死への恐怖心が緩和され、自分の死に方についても積極的に考えるようになるという研究結果が示されました。

「ああ、これでいいんだ!」
これまで通り、バンバン個々のご意向に沿った看取りをサポートし、いい看取りをたくさん経験していくことが、患者さん、ご家族、スタッフ、自分自身にとって、最高のDeath Educationになることを確信しました。
そして、そんな役回りが出来る医療・介護職に身を投じている私たちは最高にやりがいのある職業に就いていることを再認識しました。
勿論、主役ではなく、「笑い」に火を付ける名脇役としてですが…

深い悩みは深い学びの種 ~第 117 回 FaMReF @ 郡山~


月例のレジデント・フォーラム

人事異動による自身の転勤を、担当患者にどう伝えるか?
病状が不明確な中、病状説明に手間取った時どうするか?
独居患者の在宅看取りに必要なものは?
社会的問題に起因する精神的問題へのアプローチは?
地域包括ケアに関わる多職種ワークショップを企画・運営した成果をどう評価・報告するか?

指導医にとってもなかなか悩ましいテーマが続々…
しかし、深い悩みは深い学びの種
いかにも家庭医らしい学びの示唆に富んだ事例をもとに活発な意見交換がなされました。

その他、韓国、英国交換留学の報告と恒例のCinemeducationが行われました。


2016年11月7日月曜日

秘密結社が征服する地域医療 ~2016年度 第6回 いわき志塾「医療」~

2016年11月5日(土)、2016年度 第6回 いわき志塾が開催されました。

震災のあった2011年度から公益財団法人 東日本大震災復興支援財団の「福島こども力プロジェクト」の支援を受けて立ち上げられたいわき生徒会長サミット!
もともと「30年後のいわきのリーダーを育てよう!」ということで始まった企画でしたが、震災直後に大多数の子供たちが一時いわきを離れたという現実に直面した時、いわき市教育委員会の先生方は「これでは未来のいわきはない」と危機感を持ち、もっともっと、「いわきじゃなくちゃダメなんだ!」と、いわきを熱く愛する若者を育てていかなければならないと痛感し、ますます熱意をもってこのプロジェクトを推進しているそうです。
4期目に突入した2014年度から、生徒会役員でなくとも、志さえあれば参加は自由となり、いわきグローバルアカデミー「いわき志塾」と命名されました。
各界で働く大人を講師に招いて、小グループ9班に分かれて、計9名の講師のうち、2名の生き様についてレクチャーを受け、次のセッションでは、インプットされた情報から得た個々の考えを、医療人2名の共通点などを考慮しながらグループ内でアウトプットしていきます。
最後のセッションでは、各グループが参加者全員に向けて、たった7分間という限られた時間内で伝えたいことをプレゼンするという構成です。

今回のテーマは「医療」ということで、一昨年度に引き続き、講師として中学生達と絡ませてもらいました。


9名の講師陣。
日々医療に携わっているという共通点はあるものの、その職種や業務内容・経歴は、あまりにも多様です。


奇人変人の話にも真剣に耳を傾けてくれる、素直な子供たち。


パワーポイントや動画撮影、寸劇などを取り入れて、他の参加者に、自分たちが学んだことを、短時間で分かりやすく伝えるための準備。
当然、講義を終えて油断している講師陣にも容赦なく無茶振り的な協力要請が来ます。


子供たちの突飛な発想には感心させられました。
まさか、地域医療征服をたくらむ秘密結社の幹部として料理してもらえるとは・・・(感涙)



準備したはずのパワーポイントが消えてしまうトラブルにもめげずに、生の演技力だけで熱い想いを伝えきってくれたチームも・・・


セッション後に提出された子供たちのワークシートを見て、あらためて若者の瑞々しい感受性を認識し、わたくしの奇人変人ぶりが伝染しないことを祈るばかりです。
いずれにせよ、子供たちの活力や斬新な発想、エネルギーに毎年勇気をもらっています。


手荒な講師お見送り・・・