2015年1月29日木曜日

いわきに来て、家庭医療に出逢った… ~実践家庭医塾~


地域医療を学びにいわきに滞在している初期研修医の学びの足跡をもとにみんなで学ぼう!シリーズも今年度最後の回となった。

本日の主役の研修医は、示唆に富む症例に恵まれた感じがする。
関わってきた患者さん一人ひとりが、多くの学びを与えてくれていた。
疾患の診断そのもの、一人患者さんに潜む多彩なプロブレム、患者さん自身の想い、家族背景への配慮、患者医師関係・コミュニケーション…


これまでの研修では、疾患管理一本槍なところがあったらしく、ここで求められる多彩な能力に戸惑いつつも、その感動を味わいながら精力的に取り組んでくれた。
その中で、これからの日本に必要な医療の提供の形を、彼なりに見出したようだ。
彼の前途に期待しつつ、ご褒美(慰労会)の旅に繰り出すのであった…

2015年1月25日日曜日

目指せ!偉大なるお節介症候群

樋野興夫先生(左)と私

2015124日、順天堂大学の樋野教授を招いて、いわき市医師会 44回市民公開講座「がん哲学外来・カフェ」開設記念講演会が開催されました。

天候がよい土曜の午後、絶好の行楽日和にもかかわらず、多くの市民の皆さんが、会場に足を運び、熱心に聴講してくださいました。

前半の基調講演では、いわき市内でご活躍中で、がん患者さんへの関わりの深い専門職の方々にご発表いただきました。
担当理事の私が座長を務めさせていただきました。
看護師の立場からは、地域がん拠点病院として歴史のある、福島労災病院 がん化学療法看護 認定看護師の金澤かつみさんから、がん拠点病院としての取り組み、緩和ケア認定看護師を中心に行うカウンセリングの仕組みづくりや緩和ケアへの取り組み、看護師としてのがん患者さんへのかかわりについて紹介してくださいました。
そして、金澤さんから患者さんへ、正しい知識を得て欲しい、がんの診断と当時に緩和ケアを開始してもらって欲しい、スタッフとたくさん話して欲しいというメッセージがありました。
薬剤師の立場からは、この度、新たに地域がん拠点病院に加わった、磐城共立病院 がん薬物療法認定薬剤師の草野元さんから、抗がん剤を安全に使用してもらうための取り組みや、注意点などについてお話いただきました。
最近では優れた内服の抗がん剤も増えてきて、院外の調剤薬局で薬を受け取るケースも増えてきているので、医師と薬剤師・患者間の情報共有が重要になってくるというメッセージをいただきました。
行政・政策の立場からは、いわき市平地区保健福祉センター保健係指導保健技師の飯塚てい子さんから、いくつかの困難事例が紹介され、多職種連携によるチームケアの重要性と、行政にしかできない役割・仕組みづくり、地域包括ケアシステムの構築への意気込みが示されました。

後半はいよいよ、順天堂大学 医学部 病理・腫瘍講座 樋野興夫教授(一般社団法人「がん哲学外来」理事長)による特別講演
「がん哲学外来 ~医療の隙間を埋める~」
チャウチャウ犬のもしくは森本レオさんのような風貌と独特のマイルドな語り口で、がん哲学外来の歩みを紹介してくださった。
がん哲学外来の提供に適するのは、偉大なるお節介症候群を呈している人間だそうだ。
偉大なるお節介症候群の3徴候は、暇げな風貌(たとえ忙しくても歯を食いしばって人を褒めるこ)、他人の必要に共感する(自分を押し付けない)、速効性と英断(いいと思ったらすぐ実行)だそうだ。
偉大なるお節介と、余計なお節介との違いは、原動力が、前者が他人の必要で、後者が自分の価値観ということ。
返答に困るもしくは会話に沈黙があれば、まずは黙ってお茶を飲めばよい。
診療でも相談でも、はたまた患者の会でもないこのがん哲学というものを少しは理解できた気がした。

さて、演者・講師を交えた打ち上げ懇親会。
いわきのがん哲学外来・カフェはどのように運営していくか議論がなされた。
医療機関や患者会、大学など全国各地で様々な組織が主導して運営されているそうだが、私はかねてからいわきのがん哲学外来・カフェでは、医療機関間、患者会間などの垣根をとっぱらって、誰もがぷらっと立ち寄れる空間を創りたいと思っていた。
「それなら医師会が主催すればいい」
樋野先生からありがたいアドバイスをいただいた。
「じゃあ、医師会でやりましょう!」
がん哲学外来を医師会が主導するのは日本初とのことで、がん哲学外来自体が日本発祥の概念なので、自動的に世界初の試みとなる。
こういう場合、言いだしっぺが担当することになるわけで、即決で がん哲学外来担当理事を拝命することに…
これが、速効性と英断なのか?
すこしだけ、偉大なるお節介症候群を発症しかけている自分を感じる宵であった。

2015年1月23日金曜日

がん哲学外来 ~医療の隙間を埋める~ 「がん哲学外来・カフェ」開設記念講演会(いわき市医師会 第44回市民公開講座)のお知らせ

いわき市医師会 44回市民公開講座
「がん哲学外来・カフェ」開設記念講演会

2015年1月24日(土)
午後2時開演
いわき芸術文化交流館「アリオス」音楽小ホール
入場無料


皆さんは「がん哲学外来」という言葉を耳にしたことはありますか?
多くの方は、自分自身又は家族など身近な人ががんにかかった時に初めて死というものを意識し、それと同時に、自分がこれまでいかに生きてきたか、これからどう生きるべきか、死ぬまでに何をなすべきかを真剣に考えるでしょう。
一方、多忙を極める医療現場では患者の病状や治療の説明をすることに手一杯で、がん患者さんやその家族の精神的苦痛までを軽減させることが充分にできていないのが現状です。
そういった医療現場と患者との間にある「隙間」を埋めるべく、「がん哲学外来」が生まれました。科学(疾患)としてのがん学を学びながら、がんに哲学的な考え方を取り入れていくという立場です。この考え方はとても新鮮なようにも感じつつも、実はごくあたりまえのことのようにも思えます。
「どうしてだろうか?」
よく考えると、ある一つの結論にたどり着きました。
がんという疾病の治療をしつつ、一人ひとり異なる患者さん固有の体験(喜びも悲しみも)にもフォーカスする…
「これって、私たちが日々トレーニングしている患者中心の医療の方法の実践例そのものではないか?」
このことに気づいてから、私は一気にがん哲学の考え方に親近感を覚えました。
がん哲学外来は、医療現場と患者との間にある「隙間」を埋めるために、病院や医療機関に限らず、集まりやすい場所で、立場を越えて集う交流の場を作ることから始まったようです。そしてこの活動を全国へ展開をしていくことを目指し、2009年に順天堂大学 医学部 病理・腫瘍講座 樋野興夫教授を理事長に、NPO法人「がん哲学外来」(2013年から一般社団法人)が設立されました。また、「隙間」を埋める活動を担う人材の育成と活動の推進をするために、2011年「がん哲学市民学会」が市民によって設立し、「がん哲学外来コーディネーター」養成講座が始まりました。
こうして「がん哲学外来」が、「対話の場」であるメディカルカフェという形で全国に広がり、現在ではメディアで取り上げられるほど注目されるようになっています。
この度、いわき市でもがん哲学外来が始動することになりました。明日、2015124日には、順天堂大学の樋野教授を招いて、いわき市医師会 44回市民公開講座「がん哲学外来・カフェ」開設記念講演会が開催されます。

いわきでも、「がんであっても尊厳を持って人生を生き切ることのできる社会」の実現を目指し、より多くのがん患者さんが、垣根を越えた様々な方との対話により、「病気であっても、病人ではない」安心した人生を送れるよう寄り添っていける社会をつくっていきましょう。

2015年1月18日日曜日

遂にここまできた 第99回 FaMReF@郡山



相変わらず いわきは快晴ながら県内各地は吹雪。
久々の雪道の運転にドキドキしながら郡山に到着!
年頭にあたり各自の抱負などを語りながらスタート。

まずは、研修医の日々の活動の報告と、そこから生まれた疑問や課題の提示。
フロアから活発に意見が出て、独りでは思いつかないような発想も生まれる。
やはり、環境も経験年数も様々な人材が一堂に会するこの月例の研修会の役割は大きいと実感。
今回興味深かった課題は、限られた医師やスタッフで膨大な業務をこなしていくためにはどうしたらよいか?ということ。
実際に、慢性的な人手不足の中にいる私たちがずっと求められている課題である。
効率的で、しかも抜けがないケアを提供するための工夫について議論した。
手帳などにチェックリストを盛り込んだり、患者さんを巻き込んだり、複数人がカルテのチェックを行うなど・・・
レジデントからの報告で共通していた点は、日々の研修で ただ単に診療スキルを磨くということだけでなく、与えられた環境の中にある様々な問題に対して、みんな既に独自の取り組みを始めているということ。
四の五の言わずに動くこと。
スピード感を持って改善への試みをしている若者たちに敬意を表する。

本日のメインは、「高齢者のこころ」
後期研修医1年目の豊田先生からのプレゼン
統合と絶望を共存させながら英知を獲得し、ようやく長い人生を振り返りながらまとめることが出来た後、更に襲い来る身体の衰弱。
その先にあるもの・・・それは老年的超越。
死を前にした こころ の変化に対応するための「全人的介護」というキーワードを紹介してくれた。利用者の身体的側面だけでなく、身体と精神、その人の生きてきた歴史、人間関係や社会にまでケアの対象を広げ、そこから生ずるさまざまな生活障害に対するニーズにこたえるためには、介護者と被介護者との間の良好なコミュニケーションが求められる。
私たちが日々研鑽し改善に努めている患者中心の医療の方法の実践自体が、高齢者のこころをつかむ近道なのかもしれない。