今回は、患者中心の医療の方法の2番目の構成要素「地域・家族を含め全人的に理解する」について御説明します。健康問題が人々に及ぼす影響を完全に理解するためには、個人的な、家族的な、そして地域・社会的な背景にまで視野を広げ、そこから重大な問題に焦点を当てて検討する必要があります。医療者側が直接的に見ている患者さんの姿を、家庭医はよくジグソーパズルの一片に例えます。ジグソーパズルの一片を手にしても、その一片が何を意味するのかは分からない。絵の一部が印刷されているので表か裏かぐらいは分かるけれども、パーツによっては上下左右どういう向きなのかすら全然分からないこともあります。しかし、その一片だけを欠いてそれ以外は完成しているジグソーパズルを想像してみてください。そして、その未完成のジグソーパズルの唯一空いている場所にその一片をはめ込んでみると・・・たちどころにその一片が全体の絵の中で何を意味しているのか明確に理解できるでしょう。このジグソーパズルの一片を患者さんの抱える健康問題と考えると、健康問題だけでなく患者さんの全体像と患者さんを取り巻く社会環境を知ることが、その健康問題の持つ本当の意味を探るために必要不可欠であるということが理解できるでしょう。これが健康問題を持つ人を「地域・家族を含め全人的に理解する」ということです。
現代医療の多くの現場では、患者さん自身も壊れたジグソーパズルの一片だけを持参して医療機関を受診し、医師にその修理を依頼します。医師もその一片だけを懸命に眺め、時にその一片を精密検査して診断名と治療法を導き出そうとします。しかし、ジグソーパズルの全体像を見ることができれば、壊れた一片の意味を理解するのはずっと容易な筈です。ちょうど、クイズ「アタック25」でパネルの殆どを獲得してその週のトップに輝いた挑戦者が、最後に海外旅行を賭けて臨むフィルムクイズに似ています。テレビっ子にしか分からないですね!(笑)
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