「痩せたいけれど、美味い肴と晩酌だけは譲れない!」
「ついでに、定期的かつまとまったエクササイズの時間は確保しにくい」
これがオイラの(今のところの)結論。
このポリシー(といえば格好いいが)というか、悪しき習慣は、生涯変わりようがない気がする。
ああそれなのにそれなのに
「痩せるにはどうしたらいいか?」
オイラの切なる思いへの周囲からのアドバイスは・・・
「簡単ですよ!大酒飲みをやめれば絶対痩せますって!」
「単なる運動不足っすよ!」
「はいはい、ヤブでも一応医者なんで、そんなこたぁ~百も承知ですよ~!・・・でも、酒は絶対やめませんし、運動だッて無理っすよ~!!!」
っていう感じにいつもめでたくまとまるわけです。(全然まとまってない)
人が行動を変える(行動変容する)場合は「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」の5つのステージを通ると考えられています。
これは、1980年代に禁煙の研究から導かれたモデルですが、その他、ダイエットなど健康に影響する生活習慣などの行動について、幅広く応用され、研究と実践がなされています。
オイラの場合、晩酌や断酒関しては、見事に変容ステージモデルの「無関心期」を貫き、そこから前に進めないでいるわけですが、痩せたいという思いに関しては、少なくとも「関心期」に入っているわけです。
つまり、この強固な無関心の壁を打破して前に進むには、晩酌と肴を犠牲にせずに実行できて続けられる方法を編み出せばよいわけです。
そこで目をつけたのが、自分が「甘党」ではないという事実。
言いかえれば、美味いお酒が飲めて、それに合うツマミさえあれば、それ(酒やビール)以外の糖質への執着はあまりないのです。
つまり、日本酒やビールは我慢できなくても、その他の糖質を制限することはオイラにとって、それほど自制を強いるものではありません。
そこに、晩酌と肴を犠牲にせずに痩せる突破口を見出したいと考えました。
では、糖質はどこまで制限して良いものなのでしょう?
「糖質(当時は炭水化物)は脳の栄養として不可欠だから適度にとりましょう」
「特に、朝は十分に脳が働くようにしっかりご飯を食べてきましょう」
なんてことは、小学校の時から口を酸っぱく教育されてきました。
まるで、主食や甘いものをしっかり摂らないと脳が働かないかのような言いようですね。
しかし、たっぷりと体内に蓄えてある脂肪を燃焼させるためには、そこに優先的に消費される燃料である糖質を注ぎ込むのは非合理的。
オイラが知るかぎり、体脂肪を減らす有効な手段は、有酸素運動をするか、それが無理なら普通に活動(基礎代謝)しながら糖質制限することで、代わりのエネルギー源として蓄積している脂肪を利用するよう誘導するかです。
有酸素運動を生活習慣に取り込むことが難しいという事情を考慮して、「超低糖質食評価研究から見えてきた食事指導の問題点」J. Lipid Nutr. Vol.19, No.1 (2010)という論文を見てみました。
以下、その内容を紹介します。
2008年度から開始された特定健診は、メタボリックシンドロームの人を特定して、将
来の糖尿病を予防して、心筋梗塞や脳卒中といった心血管系疾患の発症を防ぎ、高齢化
により増大する医療費を抑制することを目的としています。
厚生労働省.標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)、2008年4月。
複雑な階層化により特定されたメタボおよびその予備群に対して、特定保健指導と名付けられた生活指導が行われます。この時の食事指導として食事バランスガイドが使われています。
厚生労働省.食事バランスガイド http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html
(2009.12.02)
しかし、その内容は全体で 17~22 単位に対して、主食 5~7 単位、副菜(いも類を含む)5~6 単位、主菜(大豆を含む)3~5単位、果物2単位となっています。それぞれの摂取エネルギーに占める炭水化物の比率は、主食が約90%、芋類が約95%、大豆が約30%、果物が約45~90%と、非常に多くの炭水化物を含んでいます。日本人成人の1日摂取エネルギーが女性約 1,700kcal~男性約 2,000kcal ですでの、1 単位が約 90~100kcal に相当します。これから計算すると1日200~300gの炭水化物摂取でバランスの良い食事としていることになります。これは国民健康栄養調査での炭水化物摂取量が成人女性平均242.3g~男性平均296.8gとほぼ一致しています。
厚労省 平成19年国民健康・栄養調査の概要 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0302-8i.pdf
(2009.12.02)
朝・昼・夕の摂取エネルギー比率を1.0,1.5、2.0とすると、夕食では100~130gの炭水化物を摂取することになります。現代人が摂取している主食とされている食材では炭水化物のほぼ 98%が糖質なので、正常人でも糖質 1g 当たりが食後のピーク血糖値を1mg/dl上昇させるので、夕食後の血糖値が100mg/dl以上上昇する食事を勧めていることになります。夕食後に運動する人は少なく、忙しい日本人では就寝までの時間が短く、これが夜間高血糖にもつながっていることが考えられます。糖尿病患者に対しても、摂取エネルギーの55~60%を炭水化物で摂取するようにとされています。
日本糖尿病学会編.2008-2009糖尿病治療ガイド第4刷、文光堂、2009.
カロリーを1,500kcalに制限しても、夕食で炭水化物を70~90g摂取することになります。糖質1gに対して 2 型糖尿病患者では食後血糖値が約 3mg/dl 上昇するため、夕食後の血糖値は200mg/dl以上上昇することになります。糖尿病発症を予防するには膵臓ベータ細胞への負担を減らすことが最も重要です。これには糖質摂取量の削減が最も効果的です。また、糖尿病患者では食後高血糖を無くすことが合併症の予防となり、ベータ細胞の疲弊を防ぐことになります。欧米では糖尿病の予防と治療で糖質制限食の流れが出来つつあります。
Atkins RC. Dr. Atkins' new diet revolution, Harper, New York,
2002.
American Diabetes Association. Life with Diabetes Third Edition.
American Diabetes Association,
Alexandria, 2004.
Bernstein R. Dr. Bernstein's diabetes solution Newly revised &
Updated. Little Brown and Company, New
York, 2007.
しかし、日本では厳しい糖質制限食に対しては体に悪い影響を与えるのではないかとの懸念を抱く人もいます。この研究は、長期にわたり超低糖質食(very
low- saccharide diet:VLSD)を実践している人を対象とした調査です。
主な結果として、糖質制限食は厳しい糖質摂取制限にも関わらず、最も懸念されるアシドーシスが起きていないことがわかりました。血糖値の上昇は抑制され、脂質がエネルギー源となっていることが分かりました。
世界で100万人が実践したとされるアトキンス式ダイエットは、VLSD ですが、短期的な安全性は実証されています。
Atkins RC. Dr. Atkins' new diet revolution, Harper, New York,
2002.
日本でも、必須栄養素は、9種のアミノ酸、6種の脂肪酸、14種のビタミン類、14種の無機質であり、糖質は必須栄養素に含まれません。
脳は糖質を優先的にエネルギー源にするが、糖質が少ない時にはケトン体が主たるエネルギー源となります。
Manninen AH. Metabolic effects of the very-low-carbohydrate diets:
Misunderstood "Villains" of human metabolism. J Int Soc Sports Nutr,
1(2):7-11, 2004.
ところがです!
極端な炭水化物制限「生命の危険も」...学会警鐘
<2012年 7月27日(金)読売新聞>
主食を控える「糖質制限食(低炭水化物食)」について、日本糖尿病学会は2012年7月26日、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示した。
同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した。
というわけです。
ですが、学会の公式見解にしては、ざっと調べた限りその根拠がはっきりしなかったので、深刻には受け止めていません。
それ以前に、自身を現状の体重のまま放置することが危険であることは明白だと自己責任で判断したわたくしは、比較的厳格な糖質制限を断行したのです。
糖質制限は、少なくとも2年間は安全(アメリカ糖尿病学会)
これを信じることにして・・・
で、どうなったか知りたいですか?
知りたいですよね。
少なくとも健在です。
ていうか、むしろ短期的アウトカムは極めて順調です。
続報は後日・・・