いわきの医療はまさに危機的事態に直面しています。医療は、電気・水道・ガスなどのライフラインと同じように、市民生活に欠かせない必須のものです。これがなければ高齢者はもちろん、出産・子育てを控える若い世代が安心して住み続けることはできません。しかしながら当地いわきでは、震災前から医師のいわき市外への流出が続く一方、外部から赴任した医師がいわき市に定着しないという事象が発生していました。そして、その医師不足という現実が、震災後に一気に顕在化しました。医療従事者が流出する中、大規模な避難、廃炉・除染作業員の受け皿となった当地の医療需要は高まり、更に過酷になった医療現場は、疲弊した医療スタッフの流出という悪循環を生んでいます。
この事態を打開するためには、いわきが「医療・介護スタッフが働きたい場所」として、日本全国、更には世界中から選ばれる街に生まれ変わる必要があります。つまり、住民が、いわきで働く医療・介護スタッフをプロフェッショナルとして尊敬し、医療・介護スタッフが地域に溶け込めるようなサポート体制を整えることが重要です。
このような状況下、いわき市新条例が、2017年6月の市議会で可決されました。この条例は、救急医療をはじめとしたいわき市の地域医療が置かれている厳しい状況について、市や医療機関だけでなく、市民の皆さんにも充分に認識していただき、それぞれの立場で課題解決に取り組むため、市、市民及び医療機関が果たすべき役割を明らかにし、相互に連携・協力して、地域医療を守り育てるための様々な活動を行うことにより、将来にわたり、市民が安心して良質な医療を受けることができる体制を確保することを目的に制定されました。
条例では、地域医療を守り育てるための、市、市民及び医療機関の役割を明らかにしています。市の役割は、救急医療体制の維持及び強化、医師の確保、保健や福祉との連携などの基本的施策を策定し、実施すること。市民の役割は、かかりつけ医を持つこと、受診に当たっては、医師などの医療の担い手に信頼と感謝の気持ちを持ち、その指導と助言を尊重すること、夜間又は休日の安易な受診をしないことなどに努めていただくこと。医療機関の役割は、患者の病状に応じた機能分担と連携により地域医療を充実させること、患者との信頼関係を築くこと、保健や福祉との連携を図り、在宅医療に取り組むことなどに努めることと明記されています。
このような内容の条例は東北初だそうです。この条例は、いわゆる理念条例であり、罰則規定はありませんが、「オールいわきで危機を好機に変えよう!」という意識づけに寄与し、それぞれの立場で課題解決に取り組むきっかけになれば良いと思います。
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