今年度は、いわきで研修しているレジデントの「へき地での診療・教育・研究について学びたい」という要望を考慮して、オーストラリアの南の島タスマニアへの訪問となった。
そこで得た知見を踏まえた土産話を聴かせてもらい、彼が日本との違いを明確に理解してきたことが分かった。
情熱的な彼に刺激を受け、おいらも私見を述べてみたくなった。
プライマリ・ケアを担う開業医の多くがひとりで診療している日本に対し、タスマニアでは診療所はグループ診療が基本。
「ひとりなんだから夜間・日祝日は休診やむなし」というのが、日本の常識なのだが、そもそも全員同時に休んだらどうなるかは、学者さんじゃなくても容易に想像がつくだろう。
「出来ないからやらない」と言ったところで、誰かがやらないといけないわけで、日本ではその役割を、時間外でも医師が当直している病院や、時間外対応しているごく少数の診療所が担っている。
「出来ないからやらない」というのは医療を提供する側の事情であり、利用する側の患者さんを向いていない。
現状で「出来ない」のであれば、「やるためにはどうしたらいいのか?」本気で考えるのが筋である。
「ひとりなんだから夜間・日祝日は休診やむなし」というのであれば、ひとりでやらなければいい!
こんなに単純明快なことを本気でやろうともせず、何十年も放置してきた責任を誰かに問うつもりは毛頭ないが、少なくともこれからは放置することはできないと思う。
もしも、今後もこれまでと同様に放置していいというお考えの方がいるとすれば、申し訳ないけれど、その方には、国や地方自治体、医師会、関連学会など、これからの日本の医療制度を動かす責任ある立場には居座らないでもらいたい。
「ひとりでやらなければいい!」
と一言で戦略を語ってしまったが、そのためには信頼できるパートナーが必要である。
医師の立場になった時、どんなパートナーと組みたいか?
ちゃんとした信頼できる人(質の高いプライマリ・ケアが提供できる医師)と組みたいにきまってる。
つまり、ちゃんとしたプライマリ・ケアの専門医が大勢いれば、いま日本で起きている地域医療崩壊の波を食い止めることができるのだ。
つまり、総合診療医によるグループ診療が日当直業務に疲弊する病院勤務医を救うことになる。
グループ診療のメリットは医学教育や医学研究にもある。
日本で医学教育や医学研究といえば大学病院や大病院が中心であるが、タスマニアでは診療所も医学教育の多くを担っているし、診療所に勤務しながら研究もしている。
へき地であるのにもかかわらず・・・
しかし、診療所でなければ学べない地域医療があるし、診療所を受診する患者さんに適用できるエビデンスは、診療所からしか発信できない。
そう考えれば、教育・研究のフィールドを診療所に置くことは、質の高いプライマリ・ケアを提供するためにいかに重要か理解できるし、実に理にかなっている。
そしてそれは、グループ診療でマンパワーがあるから実行可能なようだ。
彼は、海外から見えた日本や福島の良さとこれからの展望も語ってくれた。
病院総合医という医師のニーズが高い環境の中で、救急医療や入院管理に長けたジェネラリストが多く存在するということは、日本の大きな強みだ!
彼らの多くは、自ら画像診断し、内視鏡やエコーのスキルもある。
そういえば、英国の家庭医がいわきを訪問した時、僕らが聴診器代わりというノリでエコーを活用している姿を見てとても驚いていた。
その国や地域のニーズに合わせて進化できることが総合診療医に必要な能力のひとつ。
他国の良いトコ取りをしつつも、日本の良いトコを更に伸ばして、これまでの世界のどこにも存在しないような、最もクールなプライマリ・ケアのシステム構築が、今の日本には求められている。
根がしつこいのでもう一度!
今後もこれまで通りでいいというお考えの方がいるとすれば、申し訳ないけれど、その方には、国や地方自治体、関係省庁、医師会、関連学会など、これからの日本の医療制度を動かす責任ある立場には居座らないでもらいたい。
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