2010年10月14日木曜日

「家族志向型ケア ⑤」

前回は「家族志向型ケア」の1番目のコンポーネントである「 病気を心理社会的な広がりでとらえる」ことが、本人と家族の機能に変化をもたらし、危機を乗り切りながら、より良いケアを生み出すパワーにつながった具体例をお示ししましたが、このことは、実は2番目以降のコンポーネント「家族という大きな枠組みの中にある患者の立場に焦点を当てる」「患者・家族と医療者はいずれもケアのパートナーである」「 医療者が治療システムの一部として機能する」「 家族もケアの対象である」にも直結してきます。
 今回は、2番目の「家族という大きな枠組みの中にある患者の立場に焦点を当てる」について解説していきます。これは、家族という全体像から、個々の問題とそれを持つ患者のこと考えることが大事だということです。
 現代の日常診療の多くの場面では、患者さんは家族という全体像を伏せた状態で受診します。しかし、その隠された全体像に目を向けた時に、その人の抱える問題が目から鱗が落ちるようにより良く理解できるようになることを私たち家庭医は数多く経験しています。具体的には、①家族が患者さんの健康についての考え方や行動に大きな影響を与える。②ファミリー・ライフサイクルの移行期のストレス(例えば、独立や結婚・老化や死への悲嘆など)が体調の変化をもたらす。③疾病の発生が家族の行動に変化をもたらし、患者を支える資源となる。ということが挙げられます。①の例としては「高齢者は何かあればすぐに入院させるしかない」と考えている家族がいれば、在宅ケアの導入は困難になりますし、③の例としては、今まで家のことには無関心だった父親が、子供の喘息発作をきっかけに、家事に協力するようになったり、親の認知症をきっかけに、疎遠だった家族親戚がコミュニケーションを再開したりします。では次回は②の「ファミリー・ライフサイクル」についてご説明します。

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