2013年7月17日水曜日

僻地医療サポートの先進地、オーストラリアに学ぶ遠隔教育

先ほど、TVカンファの話題に触れて、2008年にオーストラリアを訪問し、家庭医療の実践と教育システムについて、ちょいと調査したのを思い出した。


その時点でのオーストラリアの家庭医療の教育・認定制度の概要としては、医学部6年間、インターン1年間、レジデント数年間を経てから、試験を受けオーストラリア家庭医療学会(The Royal Australian College ofGeneral Practitioners: 以下RACGP)に入会、そこから家庭医教育プログラムが開始され、認定試験に合格すると家庭医療専門医(Fellow of the Royal Australian College of General Practitioners: FRACGP)の認定を受ける。
地域・家庭医療に関する教育は、卒前は大学、卒後の専門教育はRACGP担当する。

オーストラリアでは各専門に学会は基本的に1つずつしかなく、スペシャリストの医療水準を維持し、社会的な評価を得るうえで学会の役割は大きい。
RACGPの役割は、オーストラリアにおける唯一の家庭医療専門医の集合団体として、家庭医療専門教育プログラム(卒後教育)、生涯教育、家庭医療の社会的アピールなどを行なうものであり、家庭医療の質を高く維持する目的で活動している。
RACGPの教育プログラムは他の専門教育と違い、診療所ベースで指導医のもとマンツーマン体制を基本とする。また診療所外教育として,週半日の小グループカンファレンスを実施している。更にRACGPはオーストラリア医師全体の5060%を占める家庭医に対し生涯教育を義務とし、教育リソースを提供している。RACGP付属の教育機関にGP Education Australia(以下GPEA)とGP Education and Training(以下GPET)があり、GPEAは主にオンラインによる教育リソースを提供しており、家庭医療専門医認定取得後の生涯教育や遠隔地への教育手段として有用性が高い。また、GPETは各地の指導医による主に直接的なトレーニングプログラムを提供しており、家庭医療専門医取得前の教育リソースとして活用されている。
専門医コースの期間は34年間。主に診療所レベルでの研修を通して、家庭医療の基礎、診療技術、コミュニケーション能力、カウンセリング能力、倫理問題などを含む家庭医を特徴づける能力を習得していく。
認定試験を受け、合格すると家庭医療専門医の認定を受けるが、この専門資格には3年に1度の更新義務がある。これに対し、GPEAを中心とした学会主導のバックアップ体制が充実しており、家庭医の診療の質の維持向上に役立っている。特に、オンライン教育の生涯教育や遠隔地の実地医家における教育効果は高い。しかも、オンライン教育の利用者は、一般家庭医だけでなく学生、研修中の医師、教育者、海外家庭医と幅広い層にわたっている。指導医は、自分の指導する研修者がどの分野に弱点を持つのかをチェックすることもできる。内容は、実症例を題材に多肢選択問題とEメール、チャットを使用するもので、解答だけでなく説明と意見交換も行なうことができる。質問は身体疾患と精神的問題、患者の生活環境を複雑に考慮させる実践的なものがほとんどである。
このように、オーストラリアの家庭医教育は、医師全体の5060%を占めるとされる家庭医の実地診療の高い質の維持・向上を目的とした生涯教育体制が充実しており、常にさらなる改善に取り組んでいる。

そこで、オーストラリアのいいところを日本に応用できるか?という疑問にぶち当たるのだが、オーストラリアでは、前述のごとく充分な教育を受けた数多くの家庭医らが、診療所・公的医療機関での診療を原則無料とした国民皆保険制度(Medicare)のゲートキーパーとして、オーストラリアのプライマリ・ケアを支えている。やはり、これらのシステムには、現在の日本で参考にするべき所が多いと思う。
学会主導の家庭医養成プログラムおよび生涯教育システムの充実や、プライマリ・ケア医に対する更なる教育の充実が急務であることを再認識した。
殊に、オーストラリア国内で充実しているオンライン教育システムは、日本の僻地においても診療・教育の実践のための有力なツールになり得ると考えられ、今後の日本の家庭医養成システム構築に向けて参考にすべきであろう。
当講座のオンラインの教育ツールを、日本でのモデルに発展・充実させていきたい。

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