2014年8月6日水曜日

まさに災害医療! ~第26回 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー~

26 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーに行ってまいりました。
参加者が多すぎる熱い企画のためか?会場とは全然ちがうトトロが出そうな宿を確保し、まずは温泉でくつろいでからの出陣!



夜の懇親会熱い!勿論気温も暑い!そして、将来の家庭医層が厚くなることを確信できる素晴らしい盛り上がりでした。

さて、今回は、災害医療と家庭医療を絡めたセッションを1席設けて欲しいという、とてもありがたいご依頼をいただきました。
どんな内容がふさわしいか?
無い知恵絞って考える過程で、きっとこのテーマのセッションへの参加を希望してくれる若者は、災害時のトリアージを含む初期対応のシュミレーションとか、すぐに役立つスキルの伝授とか、そういう感じのものを期待するんだろうな~ ということは、早々に感づいていました。インタラクティブなやりとりを通して頭と体を動かし、既存の災害時マニュアル的なことを演習してみるのも悪くないし、そんな風に参加者のニーズを予測してセッションを組み立ていくのが王道! それが無難と考える自分がいる一方で、どうしてもその内容に最後までゴーサインを出さない本音の自分がいました。
それはなぜか?
地震・津波・原子力災害・風評被害・被災者同士の軋轢などなど、今まで経験のなかったような現在進行形の複合災害の中、僕らが直面している現実は、そんなに甘いもんじゃなくて、既存のマニュアルやシュミレーションがほとんど役に立たなくて、既存の災害医療支援体制も現状にうまくマッチせず、残酷なほどに思い通りにさせてもらえないことばかり、格好よく活躍できる状況もなく、むしろ無力感に苛まれ、そんなもどかしさの中、悩み苦しんでいる人たちがいること、それでも未来を見据えて地道に歩み続けている人たちがいること、しかし、それは家庭医療の発展と日本の未来を切り拓く「FRONTIER」そのものであること… このことを強く熱く伝えなければ、自分がこのセッションを任された意味が薄れてしまうと思っていました。

こうして実際にできあがったセッションは

大好きなアイスブレイク… させない どころかアイスメイク
災害医療のセッションなのに災害医療の知識やスキルを… 教えない
大好きな模造紙… 使わない
大好きなディスカッション… させない
演者は… 永遠にしゃべり続ける
参加者には… しゃべらせない
予定された内容を… 途中までしかやらない
質問は… 受け付けない

要約すると、演者が時間いっぱい言いたいことを言いまくって終了!!!といった感じ。

斬新すぎて はからずも
参加者の皆さんに「どうだ、世の中は自分の思い通りにならんだろ!」と言わんばかりに、いきなり冒頭のアイスブレイク(メイク?)から最後の瞬間まで一貫して良い意味でも悪い意味でも参加者の期待を裏切り続け、セッション全体を通して複合災害の恐ろしさを体験してもらうような内容となっていたのです。(これはやった本人も、やった後に気づいたことです)

ちなみに最近の学生さんは幸せ者だと思います。
とっつきにくい学問も、分かりやすく教えてくれて、楽しく学べるようなセッションを提供してくれるような指導者に恵まれている。
今回の夏期セミナーも、そんな親切なセッションばかり…
そういう意味では、今回の僕のセッションは異彩を放っていたかもしれません。
でも、もう一度ふりかえって欲しいのです。
そうやって楽して得られた知識やスキルが、本当に実際に役に立ったのか?いま役に立っているのか?これから役に立っていくのか?

斯く言うわたくしも、いつも「学習者中心の教育」とか言って、学習者のニーズを意識しようなんて心がけているので、今回のように、指導者主導で、ほぼ一方的な情報発信。つまり、言いたいことを力説する青年の主張的なセッションになったことには、とても違和感も感じていました。

参加者の皆さんへのアンケートを見ると、確かにその辺のところをちゃ~んと(ある意味あたり前に)指摘してくれていました。少数ではありましたが、最低ランクのキビシーご評価も頂戴し、しかしそれはまさに想定内でした。一方で、参加者のニーズとマッチしないセッションでありながらも、多くの皆さんがソコソコの評価をしてくれたことは意外でした。コメントを見ても、やはり報道や書籍などだけでは伝えきれない微妙なニュアンスが伝わった様子もあり嬉しかったです。
設計ミスが生んだ新しい建築様式?
こういった破壊的な挑戦を繰り返しながら、これからの新しい教育の形を模索していきたいと思います。

私のような変人の企画に付き合ってプレゼンしてくれた看護師の岡田聡子さんと家庭医療後期研修医の豊田喜弘君、そして参加者(被害者?被災者?)の皆さん、本当にありがとうございました。そして扱いにくい人間でどうもすいません。






あ、それと、セミナー期間中に、宿舎で捕えたカブトムシの入った虫かごと虫取り網と拳銃を所持したBOYに襲撃された被害者(被災者?)の皆様。
あれは私のヤンチャな末っ子でございます。
やんごとなき事情で、同伴しておりましたが、逃げ足が速く容易に目の届く逸材ではないので、多くの方々にご迷惑をおかけしたと思います。
申し訳ございませんでした。
そして、これぞまさに災害と捉え、ご容赦くださいませ。




参加者のディスカッションや質問の時間を奪ってでも伝えたかった内容のキースライドを共有します。







2014年7月16日水曜日

「終末期 とある家族の物語」~家族志向のプライマリ・ケアとともに考える~

先日の第94回いわき緩和医療研究会で、当講座の家庭医療後期研修医(かしま病院 総合診療科 渡邉聡子医師)が「終末期 とある家族の物語」~家族志向のプライマリ・ケアとともに考える~ と題して講演させていただいた。


患者さんが死に直面する時、つまり悪い知らせを伝える必要に迫られる時、患者さんやご家族とのコミュニケーションは難しくなる。そして、患者さんが「否認」や「怒り」の感情を表出した時、家族は勿論のこと、ケアにたずさわる医療スタッフの心をも激しく揺さぶる。こういった困難を克服するための方法論として、各種学会や研究会で様々なコミュニケーション技法が提案され、医療の現場で試行されているが、たとえ同じ終末期の患者さんであっても、その状況への受け止め方、悩みや苦しみ、病気の体験は千差万別で、患者さんの数だけ違った物語が存在し、更に共通の患者さんの家族であっても、その家族の数だけ別々の物語が創られていく。だから、既存のコミュニケーション技法や画一されたマニュアルを用いるだけで全てが上手くいくということはまず有り得ない。
今回の発表では、患者さんが治療不能な状況への怒りを表出されたことで、患者さんとそのご家族がそれぞれの立場で展開されていた個々の物語を深く探るきっかけになり、その中で本人もご家族らも互いに互いを気遣いながらも、絡み合って身動きがとれなくなってしまっていた事実を知り、患者さんとご家族らを結ぶそれら一本一本の糸を手繰り寄せ、ゆっくりと解いていくことで、患者さんへのケアの質を向上させるだけでなく、疎遠だった家族関係の修復という予期せぬ化学反応が生まれたという貴重な経験を参加者の皆さんと共有した。
演者の聡子先生は、スーツの腕をまくり終始熱血戦闘態勢で、力強くも丁寧な語り口で、患者さんとご家族が危機を乗り越えていくために、いかに家族志向のケアが有用で重要であるかを主張してくれた。歴史ある会で貴重な発表の機会を与えていただき、演者本人は勿論、私にとっても終末期のコミュニケーションの難しさと留意点、やりがいを再認識する深い学びの機会となった。



頑張ったらご褒美がお約束!

打ち上げではマグロの中落ちを自分でカリカリこそぎ取る幸せに包まれていた。

時を同じくして この会の当日に目出度くご入籍された別の後期研修医は、日帰りハワイ旅行を強行し、丁寧にお土産まで届けてくれた。


2014年7月6日日曜日

福島を横断して 第93回FaMReF@喜多方

昨夜の郡山からの~喜多方へ
通過点の猪苗代を高速道路で通過してしまうのはもったいない!
なぜなら、高速道路からだと猪苗代湖をちゃんと観ることができないから・・・
というわけで久々に一般道で行ってみた。
やっぱりいいね!
猪苗代湖と磐梯山のコラボは



自然を堪能しながらの贅沢な通勤の果てには
「ほっと☆きらり」喜多方市地域・家庭医療センター



家庭医療後期研修医たちの振り返りへの指導医陣からのアドバイス
学習者たちの学びのレベルが高すぎると感じるのは、オイラのレベルが微妙だから?
自分が一番勉強になっている気がするゼ!
まあ、気にせず頑張ろう!

続いて、研修医持ち回りのプレゼン
今回は、地域包括支援センターの活動に参加してみよう!というわけで、在宅連携カンファレンスに参加している北村先生からの報告。
介護苦を理由に親を殺害してしまった事件から、在宅ケアをしていくうえで、第二の患者ともいえる家族との関わりについての話し合いがなされたという。
その中から「認知症へのケアの困難さ」という問題を抽出し、利用できるサービスを知らずに孤軍奮闘で苦労している家族が潜在しているという指摘があり、そいうった方々が公的介護サービスを適切に利用できるように働きかけていることが、家族介護者の負担を軽減するために重要だろうという結論になったとのこと
一方で、公的サービスをうまく活用できない状況、例えば本人が「必要ない」と拒絶する場合などへの介入は非常に困難!
結局は認知症のケアに近道はない。
総合力と多職種協働・連携が問われるのは言うまでもない。

さて、昼休み。
そして今日は・・・

サラダ記念日

ですが、

もう一つ

講座主任教授の葛西龍樹先生の御生誕記念日なのだ!


そして締めはもちろん恒例の「Cinemeducation」
題材は「Amelia 永遠の翼(2009)」
女性初の大西洋横断飛行に成功したアメリアの成功と苦悩の日々を映画化した作品
幾多の成功をおさめつつも、最後は冒険中に消息を絶つという結末に対して様々な意見が出された。
いま我々にできることは、地味ながら夢に向かって地道に歩んでいくことか・・・

第9回聖医会福島支部総会

昨夜は郡山でお勉強!
第9回聖医会福島支部総会

特別講演
「抗血小板薬との併用は大丈夫? 〜長期投与ゆえに遭遇する続発症の治療薬〜」
聖マリアンナ医科大学 薬理学講座教授 松本直樹先生

抗凝固薬は、抗真菌薬、ピロリ菌除菌薬、抗血小板薬との併用に注意が必要というのは有名だが、学生の時に詳しく教わらなかった生物学的利用率と薬物相互作用について、明快に解説していただいたので、その理由が良く理解できた。

いずれにしても、多剤薬物併用のリスクは高いし、特に新しい薬ほど慎重に、与えられる情報も充分に批判的吟味を行ったうえで、適用を検討していくことの大切さをあらためて実感した。

使いにくいというイメージの強いワーファリンへの偏見を取り払い、基本にかえって古き良きこの良薬を使いこなしていきたい。


勉強の後は勿論、福島の地酒を楽しみながらの懇親会
年に一度しかお会いできない先生方が多いので、話が弾んでついつい午前様になるのでした・・・



2014年6月22日日曜日

「型」が身につくカルテの書き方 ~第19回 FACE~

磐梯熱海の源泉かけ流しと、宴会と並行した夜~翌朝未明までの部がセットとなった福島自慢の勉強会FACE

今回は、病院の家庭医として診療・教育に活躍されていて、週刊医学界新聞レジデント号の連載記事『「型」が身につくカルテの書き方』でご高名な北海道勤医協 総合診療・家庭医療・医学教育センターの佐藤健太先生をメイン講師にお招きしての開催

2日間かけて、臨床推論の「型」、カルテの書き方の「型」をたっぷりとご教示いただいた。
基本の「型」をしっかりと身につけることは、医師としての骨格を成すのに等しい。
それは、診療能力を高めることは勿論、多職種連携の助けにもなり、リスクマネジメントにもなる。
そんなことを深く実感できる貴重な学びの時間になった。
よくある疾患の管理だけでなく、地域の健康問題や健康増進、心理・社会的ケア、複雑性や不確実性をはらんだ困難事例などを扱うことが多い家庭医・総合診療医にとっても、最終的には基本の「型」が身についていることが最強の武器になる。
高齢者の複雑・混沌とした困難事例にも、その専門家としてのプライドをもって、果敢に関わっていこう!
そんな明日への勇気をいただいた。




新しい風 ~家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾~

震災から一定の時を経て、震災がもたらしたものが何なのかが浮き彫りになってきた。
殊に、医療に関して言えば、避難生活の長期継続を余儀なくされた新しいコミュニティーの形成、高齢者比率の上昇にともない、必要とされる医療の質と量が変化している。
単純に考えれば、医療を必要とする患者の実数、つまり医療需要は増加している。
一方で、医療の供給は?というと… この地はまるで陸の孤島… ほとんど援軍のない長期籠城ののようなもので、疲れ果てた兵士が「いつまで続くのか?」という想いを抱えながら皆歯を食いしばっている感じだろうか?

いまのいわきの状況を「悲惨」とか「崩壊」とかネガティブな言葉で表現をすることは容易だが、このような状況は、遅かれ早かれいずれ日本全国や世界各国で起きることが予測されているので、あえてポジティブな言葉で表現するならば、ここは紛れもなく「最先端」であり「先進地」なのである。

私たちは、多くのものを失ったが、失わなければ得られなかったであろう多くのものも手に入れつつある。

そんなことを実感できるようなエピソードがあった。

病院嫌いなどの理由から医療機関を受診することなく、けれど実は危機的な状況で自宅に潜伏している患者さんがいるとして、たとえ、地域包括支援センターの職員さんがその事実を認識していても、患者さん本人が積極的治療を希望しなかったりすると、包括の職員の方も手をこまねいてしまうものだ。
結果として、本人が拒否できなくなるほど重篤な状態になってはじめて、救急要請・救急搬送という事態を招いたりする。

しかし、ここは世界の先進地だけあって、すでに徐々に変わってきているようだ。
患者が希望しないから放置もしくは見守るだけ、ではなく早目に医師も巻き込んだ多職種が連携して対策を練っておけるように、包括の方が「こんな患者さんが病院にかかりたがらず自宅にひきこもっているんですけど…」と相談してくれたのだ。
私たちは、常日頃 患者さんやご家族が「医者にこんなこときいてもいいのかな?」と遠慮しないで済むように、「何でも相談していい」というメッセージをおくるようにしているが、それと同様に、ケアのスタッフにも、「困ったら、というよりなるべくひどく困る前に何でも早目に相談してほしい」というメッセージを地道におくり続けてきた。
そのことが一つの形になった瞬間であった。

「こんな良い機会はない」
当然、いわきで地域医療を学んでいる研修医君たちに出動するように指令を下したが、特に都心の大学病院からいわきに到着したばかりの研修初日の初期研修医にとっては、かなり混沌とした状況を目の当たりにして、衝撃体験であったし、途方にも暮れたようである。
しかし、そこからの彼らの学びが素晴らしかった。
患者中心の医療の方法や高齢者総合評価などを駆使しながら、医師が病院から地域に出ていく意義、患者さんや家族の物語:病気の体験だけでなくどう健康でありたいかという想い、多職種とのかかわりの中で困難な状況を打開するために知恵を出し合うという体験…



先日の実践家庭医塾では、これらの数えきれない学びの体験をまとめて発表してくれた。
発表と議論を通し、多くの先輩医師からのアドバイスももらえて、更に学びを深めたようである。
そして、ここでしかできない診療体験をしてくれた若者たちには、ここにしかない類のお店でのおもてなし!こうして夜が更けてゆくのであった。

「なんとかしたい!」福祉と医療と地域をまたにかけたチームプレー、若者の訪問と彼らの学び…

いま、私たちの周りでは新しい風が吹いている。


2014年4月10日木曜日

吸血鬼のような指導医


バタバタとした慌ただしい雰囲気の中、今年も無事新たな2014年度を迎えている。
しかし、何よりも嬉しいことに、当講座の家庭医療学専門医コースの後期研修医として4人、大学院博士課程1人の総勢5人の新人を迎えることができた。
確固たる信念と熱意をもって、今の福島の医療界に飛び込んできてくれた彼らは、就任早々大車輪の活躍をしてくれているのだが、そんな前途洋々な姿を見ていると、彼らの成長を心から願い、「ここを選んで本当に良かった」と思ってもらえるように「自分もいま一度ネジを巻きなおさなければ」という想いを強くするのである。

というのは、ややよそ行きの建前で、若者のエキスを頂戴し、自分のネジを若者の手を借りて巻きなおしてもらっているというのがホントのところである。
彼らは、そもそも私が向かいたかった方向を思い出させてくれるし、時にそこに向かうための新しい発想すら提供してくれる。
指導医とは名ばかりで、学ばせてもらうことの方が遥かに多い。

患者さんやご家族、地域の方々の日頃の臨床研修や・臨床実習に対するご理解とご協力、そしてこの一期一会の出会いに感謝しつつ、ともに学ぶ文化を更に発展させていきたいと思う。