2013年10月24日木曜日

エピペン再来! ~歪んだ地域包括ケアの現状~

再び、市内の小学校からエピペンを用いたアナフィラキシー対策についての、教職員向けの講演依頼があったのでその準備をしている。
個人的には本望な話であるし、お話をいただけるのは光栄であるのだが、今回は、決して「近くの学校」ではないだけに、私のところまでお話がたどり着いた経緯には腑に落ちない点がある。

本来、学校内の保健管理上のコモンな問題へのアドバイスは、学校医によりなされるべきであろうと思う。
しかし、専門分化された現在の日本のプライマリ・ケアの現場では、与えられた課題が学校医の専門外になると、必ずしも対応が可能でないこともあるという事情があるようだ。
たとえそれが、日常よくありがちな健康問題であっても…

今回のお話でも、講師が見つからずに、学校側では大変お困りの様子であった。
学校医の先生は「対応できない」との回答で、やむを得ず保健所に相談したら、関東のボランティア団体?を紹介されたとのこと。いわきはいちおう中核市なんですけどッ!
で、結局 巡り巡って小生のところまでお話が届いた次第…
そのお話を伺って、いま現場で困っている人たちを導くシステムがないことに愕然とした。

講演では、エピペンの使い方をマスターすること以上に、エピペンを打てる環境・組織作りの重要性。そして、すみやかに受け入れる医療機関が確保できることの意義をお伝えしようと思う。
そして、こういった企画の講師が見つかりにくい日本の事情を説明しつつ、倍返しというわけではないが、ちゃっかり家庭医療の宣伝もしちゃおう!と企てている。

高齢者医療の崩壊だけでなく、地域包括ケアをリードしていくべき学校医が学校保健の中で機能していない現状もまた、地域医療崩壊を垣間見るの1つの形であるし、これまでの日本の医学教育がもたらしている歪みそのものである。
プライマリ・ケアの利用者が、プライマリ・ケアの担い手を、必死に探さなければならないし、それでも見つかるかどうかわからないのが、今の日本の現状!
それなのに、「病院志向になるな!」「コンビニ受診するな!」「気軽に救急車を呼ぶな!」と広報したところで、「じゃあどうすればいいの?」と10倍返しされても当然の結末なのである。
だから、今回のことは、単なるエピペン講習の問題ではなく、これから地域医療を改革していくうえで、地域単位でプライマリ・ケアを担当する家庭医・総合診療医の役割を明示し、実践できるシステムを作ることがどれだけ重要かを強く示唆する大事件なのである。

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