2012年11月6日火曜日

診る前に「専門外」とはいかに?

患者さんを、疾患の領域で区別するという発想が無い家庭医にとって、専門外という概念はしっくりこない。

だから、

「専門外なので診れない」

プライマリ・ケアの現場にもかかわらず、患者を診もしないでそう発言する医師が存在することに愕然とする。
もちろん、専門の科が明確で、その主張が妥当な場合はあるが、
少なくとも、
「私は地域のプライマリ・ケアを担っている」
日頃そのように発言されている先生方には、患者を診る前に「専門外なので診れない」とは言って欲しくない。

そもそも、専門外かどうか?(自分に対応できるかどうか?)
軽症かどうか?
軽症に見えるが実は重篤な疾患の可能性が否定できないのか?
そこで対応が困難なのであれば、どこの何科に行けばよいのか?
そういったことを患者を診て判断するのがプライマリ・ケアを担う医師の重要な役割であり、求められる能力であり、たとえ他科専門医の治療が必要な状況であっても、かかりつけ医として果たすべき役割は、その治療前にも治療中にも治療後にも必ず存在する。

当然、仮に診察したとしても、

「私には分からないので、どこか大きい病院に行ってください」

これもプロとして診たとは言えない。
プライマリ・ケアを担う医師は、診断や治療が自分の守備範囲を超えると判断しても、その患者が適切な医療が受けられるための水先案内人という重要な役割を持っているからだ。
そうでなければ、急病患者さんの多くは、途方にくれながら直接病院に殺到し、病院の各科専門医の先生方に、プライマリ・ケア医の役割をも日々強いることになる。
(残念ながら、時間外診療の現場は既にそうなっているが・・・)

自分はどうか?

まだまだ未熟者で、自分で治療を完結できる範囲はとても狭いけれど、少なくとも
「どうしたらいいの?」
という疑問には、どの医学的領域であっても、適切にアドバイスし、適切な治療が受けられるように誘導したいし、そのように行動しているつもりである。

昨今、国や地方自治体などで、地域医療を担う医師の増員を誘導する動きが盛んであるが、具体的に「どこで、どんな役割をする医師を どれだけ増やせば良い」というビジョンがあるのだろうか?
病院の各科専門医の先生方が、その専門領域の医療に専念でき、その専門性をいかんなく発揮できる環境を創出するためには、質の高いプライマリ・ケアを提供できる医師を確保することも不可欠であるということを強く訴えたい。

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