インフルエンザ関連のCMが話題となっているそうですが、私はまだそのCMを拝見したことがありません。
CMを拝見する前の医療従事者の立場で、インフルエンザをはじめとする急性感染症への対応に関する私見をまとめておきたいと思います。
本文とはなんら関係ありません!
風邪やインフルエンザ・感染性胃腸炎など、ほとんどの患者さんが合併症や後遺症なく自然治癒する疾患で、今すぐ医療機関を受診しなければいけない場合はどれだけあるでしょうか?
また、すぐに受診することで、なんらかのメリットを得ることができる患者さんはどれだけいるでしょうか?
どちらもほとんどないであろうと私は考えています。
また、すぐに受診することで、なんらかのメリットを得ることができる患者さんはどれだけいるでしょうか?
どちらもほとんどないであろうと私は考えています。
例えば、基礎疾患の無い普段元気バリバリの会社員が、夜間に急な38℃台の発熱を理由に時間外受診したとします。
確かに、全身の倦怠感や節々の痛みも強く、喉の痛み、咳を認め、インフルエンザ流行期でもあったため、迅速検査をしたとしましょう。
結果はA型・B型ともに陰性。
患者さん「ああ、良かった~。明日会社に行ける!」
医師「?」
患者さん「いや、インフルエンザだと会社に来るなって言われるんで…インフルエンザじゃなくてホントに良かったっす!(笑)」
残念ながら、この結果から この患者さんのような解釈はできません。
この迅速キットでの診断は、インフルエンザであることを証明(確定)する目的には向いていますが、インフルエンザではないことを証明(否定)する目的には向いていません。
例えば、この状況で検査結果が陽性になれば、ほぼインフルエンザであると断言できますが、そもそもこの検査は、インフルエンザの患者さん10名全員にこの検査をしても、概ね6~8名しか陽性にならないことが分かっています。しかも、発症直後であれば更に陽性率は下がることも知られています。
つまり、インフルエンザ迅速キットによる結果が陰性であっても、インフルエンザである可能性は充分あるわけです。
そもそも、この方がインフルエンザであろうとなかろうと、急性の感染症である可能性は非常に高いですし、翌日出勤すれば、会社で同僚に伝染させる可能性があることには変わりありません。
社内での感染拡大に万全を尽くす方針であれば、インフルエンザ・非インフルエンザ、もしくはノロウィルス・非ノロウィルスなどと、区別して管理すること自体ナンセンスですし、そもそも実際の臨床現場では、これらを確定的に区別することは不可能です。
一方で、仮に感染が拡大したとしても、ほとんどの場合、自然治癒することも事実です。
それなのに、インフルエンザやノロウィルスだけを、あたかも殺人ウィルスとして過剰に特別視する風潮には違和感を感じます。
今、抗ウィルス薬耐性のインフルエンザの出現が話題になっています。
結果「耐性が確認されていない新しい吸入薬や点滴を使いましょう!」という動きがあることを私は懸念しています。
繰り返しますが、インフルエンザに感染した方のほとんどは自然治癒します。
稀に重症化することがありますが、そのほとんどは赤ちゃんか高齢者・基礎疾患をお持ちの方です。本来、抗ウィルス薬は、これらの方を救うための薬であり、感染者全員に投与すべき薬ではありません。
確かに、インフルエンザ治療薬は、平均して治癒をおよそ1日早めるという効果があることが分かってきました。
一方で、大勢にこの抗フィルス薬を投与するデメリットは無いでしょうか?
大ありです。
まずは、薬価。
抗ウィルス薬の薬代だけで、だいたい1人3,000円~4000円しますし、点滴に至っては6000円以上。
そして薬の副作用。
例えばタミフルの副作用については、報告があるだけで以下のものとの関連が示唆されています。
・肺炎
・ショック、アナフィラキシー様症状、蕁麻疹、顔面浮腫、 喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下、劇症肝炎、重篤な肝炎、 著しい肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群、 Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、 Lyell症候群、皮膚障害、急性腎不全、白血球減少、 血小板減少、精神・神経症状、意識障害、異常行動、譫妄、 幻覚、妄想、痙攣、出血性大腸炎、血便、血性下痢
・腹痛、下痢
・発疹、蕁麻疹、紅斑、多形紅斑、皮膚そう痒感、皮下出血、 口唇炎、口内炎、潰瘍性口唇炎、潰瘍性口内炎、血便、メレナ、吐血、消化性潰瘍、興奮、振戦、しびれ、嗜眠、
上室性頻脈、心室性期外収縮、心電図異常、ST上昇、 動悸、血尿、気管支炎、咳嗽、眼の異常、視野障害、霧視、複視、眼痛、疲労、発熱、低体温、浮腫、不正子宮出血
・嘔気、嘔吐、腹部膨満、便異常、口内不快感、食欲不振、頭痛、傾眠、不眠症、眩暈、肝機能障害、 蛋白尿陽性、好酸球増加、血中ブドウ糖増加、背部痛、胸痛
・異常行動、嘔気、嘔吐、眩暈、浮動性眩暈、糖尿病が増悪、糖尿病悪化、高血糖、死亡
リレンザの副作用についても同様に多彩な報告があります。
・口腔咽頭浮腫、アナフィラキシー様症状、気管支攣縮、呼吸困難
・過敏症、発疹、下痢、悪心、嘔吐、嗅覚障害、失神、視力障害、喘息、気道出血、味覚障害、欝状態、激越
・顔面浮腫、蕁麻疹、頭痛、手指のしびれ感、不眠症、咽喉乾燥、口渇、口内炎、舌荒れ、食欲不振、胃部不快感、嗄声、咽喉刺激感、鼻道刺激感、喘鳴、鼻出血、鼻漏、痰、耳鳴、動悸、発汗、発熱、頚部痛、背部痛
・異常行動、精神神経症状、気管支攣縮、呼吸機能低下、失神、ショック症状
抗インフルエンザ薬による副作用に関しては、死亡に至る副作用の有無が問題となり、現在でも因果関係が議論されています。特に、抗インフルエンザ薬タミフルの副作用として話題となった異常行動については、薬の服用に関わらず報告されているため、タミフルとの因果関係があるとは断定出来ないものの、タミフルの使用にあたっては、この様なリスクの可能性を踏まえて慎重に利用する必要があるでしょう。
・肺炎
・ショック、アナフィラキシー様症状、蕁麻疹、顔面浮腫、 喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下、劇症肝炎、重篤な肝炎、 著しい肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群、 Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、 Lyell症候群、皮膚障害、急性腎不全、白血球減少、 血小板減少、精神・神経症状、意識障害、異常行動、譫妄、 幻覚、妄想、痙攣、出血性大腸炎、血便、血性下痢
・腹痛、下痢
・発疹、蕁麻疹、紅斑、多形紅斑、皮膚そう痒感、皮下出血、 口唇炎、口内炎、潰瘍性口唇炎、潰瘍性口内炎、血便、メレナ、吐血、消化性潰瘍、興奮、振戦、しびれ、嗜眠、
上室性頻脈、心室性期外収縮、心電図異常、ST上昇、 動悸、血尿、気管支炎、咳嗽、眼の異常、視野障害、霧視、複視、眼痛、疲労、発熱、低体温、浮腫、不正子宮出血
・嘔気、嘔吐、腹部膨満、便異常、口内不快感、食欲不振、頭痛、傾眠、不眠症、眩暈、肝機能障害、 蛋白尿陽性、好酸球増加、血中ブドウ糖増加、背部痛、胸痛
・異常行動、嘔気、嘔吐、眩暈、浮動性眩暈、糖尿病が増悪、糖尿病悪化、高血糖、死亡
リレンザの副作用についても同様に多彩な報告があります。
・口腔咽頭浮腫、アナフィラキシー様症状、気管支攣縮、呼吸困難
・過敏症、発疹、下痢、悪心、嘔吐、嗅覚障害、失神、視力障害、喘息、気道出血、味覚障害、欝状態、激越
・顔面浮腫、蕁麻疹、頭痛、手指のしびれ感、不眠症、咽喉乾燥、口渇、口内炎、舌荒れ、食欲不振、胃部不快感、嗄声、咽喉刺激感、鼻道刺激感、喘鳴、鼻出血、鼻漏、痰、耳鳴、動悸、発汗、発熱、頚部痛、背部痛
・異常行動、精神神経症状、気管支攣縮、呼吸機能低下、失神、ショック症状
抗インフルエンザ薬による副作用に関しては、死亡に至る副作用の有無が問題となり、現在でも因果関係が議論されています。特に、抗インフルエンザ薬タミフルの副作用として話題となった異常行動については、薬の服用に関わらず報告されているため、タミフルとの因果関係があるとは断定出来ないものの、タミフルの使用にあたっては、この様なリスクの可能性を踏まえて慎重に利用する必要があるでしょう。
また、インフルエンザ迅速検査自体のコストも無視できません。
検査料金+検査キット代でおよそ3000円也!
1回で確定できずに翌日再検査しようものなら、2倍のコスト。
高~い抗ウィルス薬を投与すれば…
更に初診料も加わると…
1人のインフルエンザ患者さんに、言うなればほとんどの患者さんに不必要な治療費として10000円以上の膨大な医療費が使われることになります。
ほとんどの方が、自然治癒する疾患に対して1日早く治すために…
インフルエンザが日本で年間100万人程度の報告があり、推計で1000万人程度発症していることを考慮すると、社会全体として莫大なお金が浪費されていることになります。
確かに、国民皆保険のおけげで個人レベルの窓口負担は軽減されるかもしれませんが、社会保障費として前払いしている事実を忘れてはいけません。
最後に、抗フィルス薬の集団投与による耐性の問題です。
「耐性ウイルスが出てきているので、インフルエンザ治療薬は必要な方だけに投与すべきである」というのが私の意見です。
私が知る限り、インフルエンザに対して日本ほど高頻度に抗ウィルス薬を投与する国はありません。結果、日本で耐性ウィルスを増やせば、世界から大ヒンシュクを買う(既に買っている?)わけです。
これまでのノリで片っ端から抗ウィルス薬をバンバン投与し続ければ、折角の優秀な新薬すら効かない耐性ウィルスが生まれるでしょう。
これまでのノリで片っ端から抗ウィルス薬をバンバン投与し続ければ、折角の優秀な新薬すら効かない耐性ウィルスが生まれるでしょう。
世界中の重症化を回避しなければならない患者さんを、薬剤耐性フィルスの脅威から守るためにも、抗ウィルス薬の投与対象を制限すべきだと思います。点滴薬の使用は更に点滴薬でしか投与できない虚弱高齢者や乳幼児・精神疾患患者などに限定すべきだと思います。
繰り返しますが、夜中に急に熱を出しても、患者さん自体わりとケロッとしている場合、患者さんを夜中にたたき起こして時間外受診させ、寒い中長時間待たせ、不快な検査をし、副作用のリスクのある高い薬の投与を急ぐよりも、ほとんどの場合、そのままゆっくり寝かせておいた方がいいです。なぜなら、そのほとんどが安静にしていれば自然に治る病状だから…
例外は、命にかかわる合併症や他の重篤な疾患を示唆する兆候がある場合。例えば、咳や喉の痛みがひどくて息苦しい、増悪する今まで経験のないような頭痛もしくはその他身体のどこか一部(胸・腹・背中など)の今まで経験のないような痛み、意識朦朧としているなどです。
皆さんの冷静な判断は、時間外診療に従事し疲弊する医療従事者をも救うことになるかも知れません。
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