2012年10月20日土曜日

「かかりつけ薬局」の役割

「かかりつけ医」という言葉なら聞いたことがあるが、「かかりつけ薬局」という言葉には馴染みが無いという方が多いかもしれない。

しかし、専門科開業の多い日本では、1人の医師が1人の患者さんのすべての健康問題に責任を持っていないことも多いため、悲しいことに「かかりつけ医」の役割と責任性が不明確である。恐ろしいことに、長期にわたりずっと診ている患者さんが、普段自分が処方している薬以外に、他の医療機関の他の科(時に同じ科)の医師から、飲み合わせが悪かったり、治療している疾患の病状を悪化させる可能性がある薬を処方されていたり、時に全く同じような薬が重複して出ていても、全く気付いていないということがある。

事実、そういった患者さんが体調が悪くなって入院した際、普段飲んでいるお薬の現物を全部見せてもらったところ、常用薬だけで20種類を超えていることもまれではなく唖然とする。
しかも、常用薬を最低限必要を思われる数種類に減らしただけで、病状が改善することもしばしば経験する。
このようなケースは恐らく氷山の一角で、潜在的な薬害はかなり多いのではないかと懸念している。

これは、家庭医療が発展していない日本特有の問題であり、心の底から悲しく、恐ろしい現実である。

このような現実が展開される限り、当面 日本では「かかりつけ薬局」の役割が非常に重要にならざるを得ない。

「かかりつけ薬局」を持つメリットとして、薬の重複,飲み合わせによる副作用を未然に防ぐことができるという点が挙げられる。
「かかりつけ薬局」を一か所に決めておけば,薬剤師が患者ごとに「薬歴管理」をしてくれるので、もしも患者さんが複数の医療機関にかかっていても,同じ成分を含んだ薬が重複して処方されていないか、飲み合わせによる副作用の心配はないかをチェックすることが可能となり、薬による事故を未然に防ぐことができる。
また、薬についての詳しい説明が受けられるし、処方された薬に関する「ちょっと心配なこと」や医師に聞きそびれた疑問も、顔見知りのかかりつけ薬局があれば気軽に質問しやすいだろう。さらに、調剤薬局では「処方薬」だけでなく,市販薬との飲み合わせや普段服用している健康食品、サプリメント類などとの飲み合わせについても相談にのってくれる。

日本には、これらのメリットを最大限に発揮するため「お薬手帳」という、素晴らしく有用なものがある。
震災急性期、かかりつけ医、かかりつけ薬局ともに機能不全に陥ったものの、お薬手帳のおかげで、普段の処方内容はもとより、その内容から原疾患をわりだすことができたケースが数多くあった。
複数の診療科や複数の医療機関を受診する場合も、薬局だけは是非一か所にまとめて欲しい。
やむを得ず、複数の薬局を利用する場合も、せめてお薬手帳を一冊にまとめて、普段受診している医師に、他の医師から処方されているお薬を見せることをお勧めしたい。

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