2018年10月18日木曜日

キューバしのぎも継続すれば結実する

 2018年10月16日~18日の3日間、キューバ家庭医学会会長のLilia González Cárdenas先生(通称Lili先生)がいわきに滞在し、かしま病院を視察されました。いささか唐突な出来事のように感じられるかもしれませんが、今回の訪問前からLili先生と当院との間には既に深い縁と絆が存在していました。福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座では、例年新任初年度のメンバーを対象に、家庭医療先進地視察を行っています。実は当院の渡邉聡子医師、藤原学医師も、家庭医療先進地視察として2015年2月にキューバを訪問しました。その時に大変お世話になった人物の一人が、Lili先生というわけです。
 キューバの人口は約1,100万人で国土は日本の約1/3、社会主義国として知られていますね。1人当たりのGDPは日本の1/6程度でありながら、平均寿命や乳児死亡率は先進国並みです。「えっ、そうなの?」と意外に思われる方もおられることでしょう。なぜ、お金がないはずのキューバで高い医療水準が実現できるのでしょうか?
 キューバのヘルスケアシステムは、全国民を対象に患者負担は全て無料!4万人近くの家庭医がいて、地域ごとのコンサルトリオ(家庭医と看護師がペアで働く診療所)を基盤に、ポリクリニコ(各科専門医、歯科医、臨床心理士と統合医療を含めたプライマリ・ケアを提供する24時間外来診療施設)と円滑な連携をとり、更に高次医療機関(大学病院・研究施設)を持つピラミット型システムです。コンサルトリオでは、家庭医と看護師1人ずつがペアとなって、担当地域380世帯、約1,200名の住民を対象に家族単位の医療サービスを提供しています。診療録には、病歴のみならず、経済状況、家庭関係、生活環境の評価も記載され、また予防に重点をおいて、検診やワクチン接種の受診状況および結果をすべてテータ管理しています。健康教育や医療費節約の喚起、年2回の家庭訪問による生活・衛生環境の指導も行われ、まさに地域密着型の医療サービスが展開されています(渡邉聡子医師による視察報告から抜粋・編集して記載)。
 さて、かしま病院はLili先生の目にどう映ったのでしょうか?訪問診療同行で、海外でもお馴染みの「おしん」に出てきたような日本家屋を訪問できたことが最も印象的だったらしいことはさておき、地域密着型の「めんどうみのいい病院」を目指してコンサルトリオとポリクリニコの役割をハイブリットで担いながら、多職種が力を合わせてそれぞれの能力を発揮し、超高齢社会の急場をしのいで生き抜いている様にとても感銘を受けられたようでした。私たちのキューバしのぎがいつか実を結び、家庭医療を基盤とする医療と介護が融合したヘルスケアシステムが円滑に機能し、地域住民の皆さんに定着・貢献できることを夢みて歩み続ける覚悟を固めた出来事となりました。



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