2013年3月6日水曜日

暑苦しい指導医の重い思い・・・

 東日本大震災、および福島第一原子力発電所の事故により甚大な被害を受けた当地、福島県では、かねてからの懸案であった医師不足・医師偏在の構図が加速し、医療崩壊が社会問題として顕在化している。医療従事者が減少した地域の医療現場では、更に過酷な勤務体制が強いられ、まさに今の福島は県全体がこのような医療提供スタッフ減少の負のスパイラルに陥っている。そしてこのままでは、これは間もなく福島だけの問題ではなくなるであろう。
この崩壊した地域医療を再生するためには、既存のプライマリ・ケアのシステムを抜本的に改革する必要がある。医療システムは、電気・ガス・水道などのライフラインと同じく、日常生活の安定のために欠かせない、非常に公共性の高いものである。国民の生活がある限り、それは網の目のように隅々まで通っていなければならない。私は、医療が国民のライフラインとしての役割を果たすためには、この国においても家庭医の役割が最も重要であると確信している。そして、いまこの場で、この時を過ごし、この厳しい現実を目の当たりにしている私達が、このことを強く発信し、死に者狂いで日本のプライマリ・ケアを変えていかなければ、他に誰がやる?そんな熱い感情を抱いている。
私は生涯、福島において医療のライフラインとして生きていきたい。そして未来の日本のどこかで、医療のライフラインとして生き、その地で新たに家庭医療の種を蒔いてくれるであろう新しい家庭医、真の医療人を、情熱と使命感をもって数多く育てていきたいと強く願っている。そして、国民の誰もが家庭医が提供する質の高いプライマリ・ケアを享受できる日が来ることを信じている。

現職を拝命して以来、多くの医学生や研修医の教育に関わってきた。そして、医学生や研修医が自ら学び、家庭医の専門性や役割を正しく理解し、実践してくれた時、私は至極の喜びを感じることができることを知った。また、その体験を繰り返すことにより、私自身が家庭医療の専門性を再認識したり、新しい発想を得ることができたり、家庭医を育成することへの情熱を維持することができることも実感した。実際の教育を通して、学習者の学びが指導者の学びにもなるような「共に学ぶ文化」を経験することができた。
来年度からは、いわきに腰を据えて診療をしながら、いわき常駐の指導医として、学生・研修医を受け入れることになるが、これからも、学習者と共通の理解基盤を築き、「学習者中心の教育」を実践しながら、これまで以上に、私自身も共に学び、成長していきたい。

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