2010年10月14日木曜日

「家族志向型ケア ⑥」

今回は、「家族志向型ケア」の2番目のコンポーネントである「家族という大きな枠組みの中にある患者の立場に焦点を当てる」なかで必要な「ファミリー・ライフサイクル」について解説します。
家族の抱える問題は、家族の在り方が発展していく過程を段階別にとらえることでより見えやすくなります。若者が家を出て独立し、カップルとなって結婚。妊娠して子供が生まれ、小さな子供のいる家族となり、やがて子供は思春期を迎え、独立し、両親は熟年期に入っていく。子供の出て行った家庭では年老いた夫婦が死と悲嘆を経験していく―。そして、それぞれの段階の移行期に多くのストレスが発生することが、さまざまな研究によって明らかになっています1)。それぞれの段階には家族の乗り越えるべき課題があり、それがうまく解決出来ない時に、さまざまな症状に表れることがあります。この中にはいわゆる不定愁訴と呼ばれるものも含まれ、そのような場合には往々にして医師を受診しても「なんでもない」「気のせいだ」と言われたり、次々と別の医師を受診して回るドクターショッピングを繰り返したりしがちです。
家庭医療では、その人がファミリー・ライフサイクルのどの段階にいるのかを考え、そこでの課題をうまく乗り越えられているのかをチェックすることが重要になります。例えば、青年期では、家族や地域社会で良い人間関係を築けているか、社会人として仕事にうまく順応できているかということが問題になってくるし、子供が巣立った後の夫婦では、自分たちの今後の生活について再考すべき時期でもあり、病気や死について気持ちの準備が出来ているかも問題になってきます。これらの課題が解決できないために、ストレスとなってしまうことが多いのです。

1)家庭医療 ~家庭医をめざす人・家庭医と働く人のために~ 葛西龍樹著 ライフメディコム社より

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