2015年10月4日日曜日

連携して取り組む ケアの質の向上 ~第5回 日本プライマリ・ケア連合学会 東北ブロック支部 学術集会 in ふくしま~



2015926日・27日の2日間
5 日本プライマリ・ケア連合学会 東北ブロック支部 学術集会が、福島市で開催されました。
まだまだ歴史が浅く、来年度でようやく東北6県ひとまわりとなる小ぢんまりとした地方会ですが、今回は初の試みである一般公開講座も企画され、その参加者も含めると過去最大の200名規模の催しとなりました。
西日本や首都圏・北海道等に比べると、東北地方でのプライマリ・ケアにおける診療・教育・研究は、質・量ともに発展途上ではあるけれど、それだけに敢えて東北の地でこの分野で活動を続けている人間は、良い意味で変人で熱くて萌えている気がします。

さて、今回のメインテーマは「連携して取り組む ケアの質の向上」ということで、多職種連携をテーマにしたシンポジウムが用意されました。
シンポジウム「のぞいてみよう、他職種のアタマの中 〜考え方の違いをケアに活かす〜」
多職種が円滑に連携していくためには、まず他職種の方の思考回路を理解しつつ、互いの発想の違いを活用して、単職種では見出しにくい突破口を探す必要があるだろう。
ということで、このシンポジウムは、各シンポジストが、自職種が何をどうアセスメントしているかを解説し、他職種への要望を伝えていく形式で進められました。
医師の視点だけでは気付かない多くの示唆を与えていただけて、とても学びが多かったです。
特に印象的だったのは、認知症のケアにおいて、ただ単に介護保険で利用できるサービスを提供するだけでなく、認知症をきっかけに、患者さん本人の能力や役割を見直し、家族機能を再構築するチャンスと捉えるという地域包括支援センターの方からのメッセージでした。
ところで、多職種連携における医師の役割とは何でしょう?
もちろん、医師には「医学的追求」という役割があります。
しかし、実際のケアにおいては、その「医学」を「医療」に変換しなければなりません。
武見太郎氏の『医療とは医学の社会的適応である』という名言のとおり、医師には「医学的追求」だけでなく、患者が置かれた個別の家族・背景などの社会的事情をも考慮して「医学を社会的に適応させる(ほどよい医療を提供する)」という大切な役割があります。
ここには、常に不確実性が付きまとう中での総合的な判断力が求められ、マニュアルやガイドライン通りにやれば良い単純作業ではないので、医師は何年やっても全く飽きませんし、いつまで経っても学びと反省の日々です。

熱い集会は懇親会でヒートアップしていきます。
司会を仰せつかったものの、迷司会で困ったものでしたが、皆さん勝手に盛り上がっていただけたので、良しとしましょう。
その証拠に、わたくしも含め、どう見ても若手とは言えない人間も多数若手の二次会に参戦し、プライマリ・ケアの教育への熱い想いを共有し、「東北でプライマリ・ケアを充実させるためには?」という作戦会議をしたりしていました。






2日目は、市民向けの一般公開講座の設営と司会を仰せつかりました。
「あなたやあなたの家族が病気になったらどうしますか」
福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座 主任 葛西龍樹 教授から、プライマリ・ケアの教育が立ち遅れた日本の歴史と現状を踏まえ、総合診療専門医の紹介、医療の賢い利用の仕方などが解説され、身近でありがちなエピソードを交えた分かりやすい説明に、方々で、時に「ある、ある」 時に「うん、うん」とやわらかい空気が流れていました。



 2日間を通して、細々ではあるものの芯は強く確実に、そして熱い努力を続けている同志と触れ合うことができたことが、なによりの収穫でした。
まだまだ道は険しくても、拓いた道は必ず役に立ち、後から来る人が道を拡げていくことでしょう。
かつては田んぼの畦道だったという鹿島街道が、気づけば4車線の幹線道路になり、スタバを招くことができるようになっていたように…

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