2010年9月30日木曜日

「患者中心の医療の方法 ⑥」

今回は、患者中心の医療の方法の4番目の構成要素「患者-医師関係を強化する」について御説明します。これまで解説した3つの要素「疾患と病気の両方の経験を探る」、「地域・家族を含め全人的に理解する」、「共通の理解基盤を見出す」を実践していく全ての流れのなかで、「患者-医師関係を強化する」ことは満足のいく患者中心の医療が行われるために常に必要不可欠な要素であることは容易に想像できるでしょう。患者-医師関係が良好でなければ、患者さんは家庭医に自分の苦しみを話さないだろうし、せっかく患者さんが話しても家庭医に聴く耳(態度)がなければ理解は進みません。家庭医は、継続するケアとコミュニケーションによって、患者-医師関係を維持・強化するよう努めなければなりませんし、そのことの重要性は測り知れません。長期にわたり継続的に患者-医師関係を維持・強化していくために最も重要なことは、家庭医がいつもそこにいて、患者・家族とともに危機を乗り越え、互いに癒し合う関係を形成していくことだと思います。一般的に医療者が癒す者で患者さんが癒される者と考えがちですが、それだけでは良好な患者-医師関係を維持・強化していくことは困難です。医師自身もまた自分が患者さんから癒される存在であることを知ることで、自然と患者・家族に対する感謝の気持ちが湧いてきます。そして、医師が自身の仕事への価値を見出し、家庭医として生きていくことへの喜びを感じることができれば、自然に患者さんへの深い愛情と共感、思いやりをもってケアを継続していけるでしょう。こうした家庭医のケアは、更に患者・家族を勇気づけ、癒し、良好な患者-医師関係を維持・強化していきます。

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