2023年7月22日土曜日

「より良く生きる」を支援する ~令和5年度 第1回「在宅医療推進のための多職種研修会」~

 7月15日、令和5年度 第1回「在宅医療推進のための多職種研修会」が、いわき市地域医療課、いわき市医師会の協力のもと、コロナ禍以降初となるリアル(現地)&オンラインのハイブリッドで開催されました。

 リアルとオンラインで合計120名を超える方が参加し、これからピークを迎える超高齢社会&多死社会において、一人ひとりがその人らしい人生の最期を過ごすことができるようにするにはどうしたらよいか?本気で考え、本気で議論する、当日の猛暑に負けない熱い作戦会議が展開されました。

 研修のメインセッションは、患者さんの自宅での担当者会議を想定した「ロールプレイ」でした。慢性閉塞性肺疾患や認知症が進んでも住み慣れた自宅で暮らし続けたい本人と、独居の本人を案じ施設に入ってもらいたい家族。対立するそれぞれの想いに、参加者が6グループに分かれ、それぞれ多職種チームを組んで果敢に挑みました。基本設定のみでシナリオがないため、チームごとの議論展開や行きついた結論も様々でしたが、いずれのチームも仕事さながら(もしくはそれ以上に)真剣そのものでした。

 私は、ロールプレイに先立ち、人生の最終段階における意思決定に関する全体講義を担当しました。人生の最終段階の類似語に終末期がありますが、終末期は死を前提とした生命維持の限界を示す表現です。一方、人生の最終段階は最期までその人らしく生き抜くことを前提とした表現で、「より良く生きる」を支援する多職種の取り組みにおいてよく用いられるようになりました。参加者の皆さんには「死の話題に触れることをタブー視せず、人生の花道・クライマックスをどう飾るのかを、いつでもどこでも誰とでも、好きなように語ることができる土壌づくりをしていきましょう」というお話をしました。



2023年4月20日木曜日

「つぶれない店」に学ぶ「つぶれない病院」

2023416()TBSの人気番組「坂上&指原のつぶれない店」で、日本食糧新聞社主催の「ファベックス惣菜・べんとうグランプリ2023」(国内最大級の総菜・弁当のスペシャリストにより構成されたコンテスト)において「デリカ総合金賞」(企業として日本一)を獲得した、いわきが誇るローカルスーパー「マルト」が紹介されました。番組をご覧になった方はお分かりと思いますが、視聴率が重要な民放テレビ特有の大げさな演出もありましたが、マルトさんの一貫した地元愛が余すところなく紹介されていて、個人的には感動すら覚えました。

創業時、弱小企業で素材仕入れに難渋していた際に、見るに見かねた地元の生産者さんが新鮮な食材を提供してくれたおかげで今があること、そのことへの恩義が地元の生産者のサポートにつながる地産地消の美味しい総菜開発の原動力になっていること、これまで多くの人たちの血の滲むご苦労があったかと思うと、本当に心に刺さりました。

さて、かしま病院はどうでしょうか? 開院時、弱小病院が故に様々な苦労があったことは、先代の理事長や院長、看護部長、事務部長らから伝え聞いています。そんな際に見るに見かねた地元住民の皆様、商工会の皆様、金融機関の皆様、地域診療所の皆様が、法人の理念である「地域医療と全人的医療の実践」のために手を差しのべてくださったおかげで今があること、そのことへの恩義をこれまでよりも もっともっと地元住民の皆さんへお返しする必要があること、これまで多くの人たちが血の滲む苦労をしてきたと思うけれど、もっと効果的な苦労の仕方がなかったか? 本気で考える機会を得ることができました。

 突き抜ける地元愛で日本一の称号を獲得されたマルトさんは、まぎれもなく いわきの希望です。僭越ながら、かしま病院もマルトさんに負けじと、日本一の地元愛あふれる病院、つぶれない病院として成長してまいります。


2023年4月1日土曜日

遂に発表! 福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座 新主任教授

 福島県立医科大学は、2023年4月1日 医学部 地域・家庭医療学講座 前任の葛西龍樹氏の後任となる 新主任教授を公表した。

新主任教授に選任された 〇沢●弘氏は、福島県立医科大学の臨床教育協力関連施設である 同県いわき市のKSM病院において、前任の葛西氏の教授就任当初から同氏の影武者として大車輪の活躍をしており、更に「国内外の猛者から教授交代に伴う福島藩内の混乱を悟られないだろう」と、前任の葛西氏の風貌を忠実に再現した 〇沢氏の 影武者としての高い能力が高く評価され、同大学の教授会 全会一致での選出となった。

詳細はこちら

左から 葛西前教授、石井KSM病院長、〇沢新教授



2023年3月23日木曜日

リュージュの伝言 ~第143回 家庭医療セミナー in いわき「実践家庭医塾」~

私が研修医だった頃、総合診療の研修のプログラムは、ありませんでしたが、幸いなことに、偶然、私は、シニアレジデントの時に、母校の聖マリアンナで総合診療を学ぶ機会に恵まれました。そして、21年前に地元に戻って、総合診療の普及のための活動を始めました。

それから4年後、日本の総合診療教育の第一人者である、葛西先生が、県立医大の教授に就任され、まるい頭の2人が、運命的な出会いを果たしました。

早速、総合診療実践のためのセミナー「実践家庭医塾」を開講しました。

教授と酷似した風貌の持ち主、医療連携室の井沢さんが、事務方として陰で支えてくれました。

以後、コロナ禍に入っても、オンラインで継続して、16年間で受講者は延べ2600名を超えています。

2023年3月16日 葛西教授退任前の最後の実践家庭医塾となりました。

幸い、久しぶりの現地(リアル)開催することができました。

メインプレゼンテーションでは、はえぬきの塾生である おざかクリニック 小坂博美先生から、緩和ケアにおける医療連携の問題点について鋭い指摘と提案がなされ、活発な意見交換の場となりました。

各科がん治療のエキスパートと、患者のトータルケアのエキスパートである家庭医は、もっともっと互いの考えや立場を理解し協働することが大切だと思いました。


セミナーの最後に、長年セミナーのスーパーバイザーを務めてこられた葛西教授からの「リュージュの伝言」

医師は「癒すもの」でありながら、実はその行為により、逆に「癒されるもの」となり、続けていくことができる。

患者さんから力をいただきながらこの仕事を長く続けて、多くの人たちの Well-being に関わっていきたいと思います。


ひとりで途方に暮れていた私に沢山の仲間と学びをもたらしてくださった葛西教授への、言葉にできないほどの謝意を、熱い「法要」じゃなくて「抱擁」で表しました。


丸い頭の「団子3兄弟」
 

多職種連携の力とは? ~第179回 家庭医療レジデント・フォーラム~

2023年3月5日の家庭医療レジデント・フォーラムのテーマは「多職種連携」でした。

どんな時に連携すればいいか?

それは、結局「いつでも」ですが、やはり、独居高齢者の在宅ケアのように、問題が難しい時ほど、より力を発揮するものということを再認識することができました。

ワークでは、それぞれの職種の立場から出される意見のコンテクストを探りながら、よりよい判断・方針決定に結び付けるためのトレーニングを行いました。同じ医師という立場からも様々なアイディアが飛び出すので、更に職種が変われば、意見が違って当然です。これらを紡いでいくことができたら、バランスの良いケアができそうですね。


 

2023年2月23日木曜日

13人の怒れる専攻医と すっかり丸くなった指導医たち ~第178回 家庭医療レジデント・フォーラム~

 2023年2月19日開催の家庭医療レジデント・フォーラムは、専攻医のH先生が、ホストとして大車輪の活躍を見せてくれました。

患者さんのことを想うあまり、患者さんのご家族の言動が許せずに激高してしまったというH先生。

その経験をきっかけに、指導医AIとのやり取りから、アンガー・マネジメントを学ぶことになり、深い自己省察・ある極意にいたりました。

今回は、H先生ご自身の気づきを共有し、教育セッションを企画・実施し、見事に大盛会となりました。

どんなに努力をしても、怒りという感情は無くせません。

自身の怒りを認め、いかに上手に付き合うか。改めて考えなおす良い機会を提供してくれたH先生に感謝します。




2023年2月3日金曜日

禁煙は最強の介護予防

 いわき市主催の介護予防教室の講師を務めさせていただきました。

メインセッションの講師のおはからい=盗撮(笑)のおかげで、出張と称して油を売っていない(町中華で飲んでない)ことの証拠写真を残していただけました。
「介護予防のための生活習慣について」というめちゃくちゃ広いお題を頂戴したので、実際の参加者のご様子を確認しない限り、ニーズにマッチするお話はできないと察しましたので、事前準備は諦めました。
結果、よりよく生きるためにどうしたらいいか?
医学というよりは哲学的なテーマで、台本なし、スライドなしのぶっつけ本番の楽しい時間を過ごさせていただきました。
自分が変われば何かが変わる。
とはいえ、理想的な行動をし続けることができる人は、ほぼいないでしょう。
個々の事情を考慮して、始めることができること、取り組み続けることができることを、それぞれ考えていただきました。
石井の場合「酒と肴は我慢できなくても、スイーツや締めのラーメンは我慢できるし、うまい酒を飲むためならガシガシ走ることは苦でない」とか。
本日の最大の成果は、参加者のお一人に禁煙宣言してくださった方がおられたことです。
これは最強の介護予防効果が期待できますので…。
既成の介護予防のパンフレットに、そのことが記載されていなかったのは残念でした。