今回は、「家族志向型ケア」の残りのコンポーネント「患者・家族と医療者がケアのパートナーになる」「医療者が治療システムの一部として機能する」「家族もケアの対象である」について一気に解説します。
「患者・家族と医療者がケアのパートナーになる」については、患者・家族と医療者がお互いに一方通行にならずに、両者が同じ理解基盤に立って信頼関係を持つ必要があります。医療者が一方的に治療を施そうとするのも、逆に総てのケアを家族に放任してしまうのも、パートナーシップとは言えません。もちろん、このようなパートナーシップはすぐに確立できるものではなく、皮肉にも、患者さんの容体が悪化して家族と医療者が「一緒に危機を乗り越えよう」と頑張った時に強化されやすいようです。
次に、「医療者が治療システムの一部として機能する」とは、いろいろな職種のスタッフがケアに関わるときに、ケアのシステム全体がより良く機能するために自分に何ができるかを考え、行動することが重要だということです。ケアにかかわるすべての人々が協力し、ケアのシステムを構築していくことで、「自分のみがケアの主役だ」と思いこむことも、「指示されたことだけをすればよい」と思うことも避けられます。それぞれが、それぞれの視点から問題をとらえ、評価し、みんなで相談して計画を立て、責任を持って自分の仕事を遂行し、その成果を評価し、改善計画を立てることの繰り返しが求められます。
最後の「家族もケアの対象である」ということは非常に大事なことでありながら、しばしば見過ごされています。しかし、患者の危機を乗り越える時、家族と家庭医はパートナーであり、そのパートナーが傷ついていれば、そのことを見逃してはいけないのです。例えば、配偶者や親の介護にともなう不眠や疲労などを訴える家族のケースが増えています。家庭医の強みは、担当できる問題の広さゆえ、どんな家族の問題にも耳を傾け、対応してケアできることです。介護からくる疲労、心痛によって発生する疾患の予防や早期発見にも努めていきたいと思います。未曽有の災害のために、避難の規模も期間も過去に例がなく、ケアが非常に難しい状況が頻発しています。
でも、こんな時だからこそ、利用できるすべての介護・医療資源を総動員して、危機を乗り越えていきたい。