2010年9月30日木曜日

「家庭医療の専門性って何ぞや?」

 「プライマリ・ケアって何ぞや?」ということで、既に少し詳しく解説しました。また「家庭医療は進化したプライマリ・ケア」であることを述べました。進化したプライマリ・ケアを実践するために、家庭医には、前回解説したプライマリ・ケアに必要な5つの理念、つまり近接性、包括性、協調性、継続性、責任性に加えて、以下に挙げる家庭医を特徴づける能力が求められます。それは、患者中心の医療の方法を実践できる能力、家族志向型ケアを実践できる能力、包括的・継続的かつ効率的な医療を提供する能力、地域を包括してケアする能力です。
 これだけの深く幅広い能力をバランスよく発揮するためには、健康問題の心理・社会的アプローチ、共感できる人間関係の維持・強化を常に意識的に実践していくことが不可欠で、それぞれの知識・技術だけでなく態度・価値観を含めて身に付けるトレーニング(専門研修)が必要です。そこで、平成18年3月、福島県立医科大学に地域・家庭医療部が新設され、大学としては全国に先駆けて本格的な家庭医療学専門医コース(日本家庭医療学会認定 後期研修プログラム)がスタートしました。特に医師不足が顕在化している福島県において、地域で発生する多くの健康問題に対応することができる家庭医の養成はまさに急務です。地域・家庭医療部が提供する研修プログラムは、いままでの日本には存在しなかった非常にスケールの大きなプロジェクトです。それは、大学のみならず広大な県内全域の多数の医療機関・地域住民・行政の強力なバックアップに支えられ、県ぐるみで「地域に生き、地域で働くことのできる質の高い家庭医を育成しよう」というコンセプトのもと誕生した夢のあるカリキュラムだからです。

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