最近、当直の度に一晩に救急車5~6台受け入れというのは普通で、10台近いこともまれではなくなっている。
当然、時間外に緊急検査体制を敷く人的余裕はない弱小病院であり、医師・看護師それぞれ1人の軟弱な当直体制で対応している。
いわき市内の救急車出動台数は、大雑把に年間10,000台前後で、当院は年間1,000台前後、つまり、10分の1程度の受け入れで推移してきた。
2次輪番病院が確か17病院ぐらいあることを考えれば、弱小病院の割にはまずまず身の丈程度に頑張っている方だと見積もっていた。
しかしそこで、ある疑問が・・・
最近よく見られる一晩で5~6台となると、ざっくり計算すれば市内全体の一晩の救急車出動台数の3分の1程度に相当する。
例年よりも救急車出動台数が増加しているのか?
全体に対しての当院での受け入れ比率が上昇しているのか?
それとも、その両者なのか?
救急車受け入れ依頼照会内容は多彩だが、当院が発生場所から直近でないのに依頼が来る場合のほとんどは、当直医師の専門外・入院病床が満床・他の患者の処置中などの理由で現場近くの医療機関から受け入れを断られたケースである。
ところで・・・
そもそも「専門外」「満床」「処置中」で断っていいんだっけ?
医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければこれを拒んではならない」と規定している。
つまり原則断ってはいけないのだが、詳細は「正当な理由」とは何かにかかってくる。
関連通知文として、医発第752 号「病院診療所の診療に関する件」、日医収第755 号「所謂医師の応招義務について」の記載を参考にすると・・・
【正当な理由にならないもの】
・お金を払わない患者の診療拒否
・診療時間外の急遽を要する患者の診療拒否
・緊急の治療を要する患者であって,その近辺に他の医師がいないのに、特定の場所の人々を診る医師だからと診療拒否
・単なる天候の不良を理由とし往診拒否
・標榜診療科以外に属する疾患であるが、患者がそれでも診て欲しいと求めているのに診療拒否
・単に軽度の疲労を理由とする診療拒否
【正当な理由に該当するもの】
・診療時間外であって,軽度な患者の診療拒否
・地域で休日夜間診療体制が敷かれており,かつ軽傷である患者の診療拒否
・医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合
・標榜診療科以外に属する疾患であり,患者が了承した場合
つまり、専門外であっても、患者がそれでも診て欲しいと求めていれば診療拒否できないことになる。
つまり、専門外であっても、患者がそれでも診て欲しいと求めていれば診療拒否できないことになる。
逆に、診療時間外の急を要さない患者さんは診療拒否できる。更に、地域で休日夜間診療体制が敷かれている場合の軽傷患者は診療を拒否してもよい。
処置中というのも、本当に急患がたてこんでいれば、医師の不在・病気で事実上診療が不可能な場合に準じるので正当な理由のように思われる。
ただし、満床に関しては、初期治療を断る正当な理由にはならないかもしれない。
事実、実際に診療してみなければ、入院が必要かも、専門外(専門医でないと対応できない状況)かどうかも判断できないことも多い。
いずれにしても、各医療機関の実情を考慮すると、この法律を遵守することは、困難になってきている。もしも、遵守を強要するような圧力が強まれば、細々と出来る範囲で何とか頑張っている医療機関や職員らが次々に崩れていくに違いない。
こういった地域医療の歪みの多くは、最終的には、やめるにやめれない、断るに断れない地域の基幹病院にシワ寄せがいくことになる。
しかし、そんな中でも、日々必ずどこかで誰かが個人レベルの努力で何とか対応しているということを忘れてはいけないと思う。
そういった使命感に燃え決壊を食い止めている人達の心身が折れてしまう前に、いまの状況を何とか変えなければいけないことも忘れてはいけない。
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