「家庭医療専門医」ってなんでしょう?
今更ながら、
日本プライマリ・ケア連合学会が作成した一般の方向けの資料を紹介します。
http://www.primary-care.or.jp/public/primarycare_iryo.pdf
ここでは、いま求められる新しい医師として家庭医療専門医を分かりやすく解説しています。
以下のような状況で、みなさんはどこに足を運びますか?
・何科にかかればよいか分からないとき
・お腹が痛くなったとき
・高血圧や糖尿病など生活習慣病になったとき
・インフルエンザなど予防接種を受けたいとき
・頭痛と肩こり、腰も痛く、背中もかゆいとき
・“じんましん”が出たとき
・タバコをやめたいと思ったとき
・自分がガンじゃないか心配なとき
・子どものおねしょで悩んだとき
・更年期障害で悩んでいるとき
・身体がしんどくて何もやる気がでないとき
・夜,目が覚めて眠れない日々が続くとき
・包丁で手をザックリと切ってしまったとき
・背中の痛みが続いていて,大きな病院を受診した方がよいのかどうか悩むとき
・おじいちゃんの介護に手がかかるようになり,主治医意見書を書いてほしいとき
・がんの末期だが,住み慣れた自宅で余生を過ごしたいと思ったとき
・おばあちゃんが認知症でだんだんと食べられなくなり,寝たきりになって往診が必要なとき
・内科と眼科と整形外科,皮膚科,泌尿器,すべての受診が困難になったとき
実は、これらはすべて家庭医の仕事(守備範囲)の具体例です。
日常的な健康問題は多種多彩ですが、このようなとき安心してかかれる医師や医療機関があれば心強いですね。
しかも、いろいろな問題を一緒に相談して解決できれば、素晴らしいと思いませんか?
具体的にこんなシチュエーションをどう思われますか?
<80歳男性:家入磐衛門さん>
・大腸がん手術後にて、3 ヶ月毎に隣の市(車で45分ほど)の消化器病センターを受診
・血圧とコレステロールの薬と胃薬をもらいに1 ヶ月毎に町内(車で15分ほど)の診療所(内科)を受診
・腰痛と膝の注射に町内(車で5分ほど)の整形外科クリニックを2 週間毎に受診
・6 ヶ月に1度、町内(車で25分ほど)の眼科医院で白内障のチェック
・最近、尿の出が悪くなり、町内(車で15分ほど)の泌尿器科クリニックに、月に1~2回の通院をはじめた
随分大変そうですね~
腰痛と膝の問題があるので、自力での受診は難しそうですし、通院の介助ができる家族はいるのでしょうか?
いろいろな医療機関を受診し、各専門家の治療を受けています。
我が国でよく見られる状況です。
このような患者さんが、あなたの周囲にもいるのではないでしょうか?
本当にこれでいいのでしょうか?
腰痛や膝の治療(痛み止め)が、胃の病状を悪化させることがあります。
また、それぞれの症状に対して異なる医師を受診すると、検査が重なったり、治療や薬が重複したりします。
お薬手帳の活用や医師同士の連携である程度は対処できますが、磐衛門さんのように5 か所の医療機関を受診している場合、全体を把握することは至難の業です。
病気の原因は、単に臓器の異常だけとは限らず、生活や仕事、家族や友人との関係なども関わります。
治療を受けるのは、心と体と固有の社会背景を併せ持った「あなた」という人間であって、「胃腸」や「膝」だけではありません。
家庭医は、症状のある臓器だけを治療しても、根底にある本来の問題を解決しなければ効果は限定的であることを知っているので、社会的背景を含めて総合的に治療します。
次に、例えばあなたが「腹痛」や「頭痛」などの理由で医療機関を受診するとき、同時に何らかの「思い」や「考え」を持たれているのではないでしょうか?
体の問題と同様に、あなたの気持ちや置かれた状況、ご希望なども重要です。
家庭医は、あなたの心に抱く思いを大切に考えます。
「患者中心の医療の方法③」をご参照ください。
家庭医が持つ視野はとにかく広角です!
そもそも、処方している薬はちゃんと飲めているのか?
認知症や嚥下障害など複合的な問題が絡んでくると、決まった時間に正しく服薬できない患者さんは少なくありません。
薬を飲ませてくれる家族がいるのか?
逆に、元気な働き盛りの人は、多忙で薬を飲み忘れてしまうかもしれませんし、そのことが後ろめたくて、薬が余っていることを医師に告げることができない人もいます。
その他、大事な視点として、高齢者の方の多くは、受診に付き添いまたは送迎が必要です。
そのことで、ご家族が時間的・経済的な負担で、生活を犠牲にしていませんが?
強引に本人が単独で受診し、移動中に危険な目に会ってないでしょうか?
訪問診療の必要性などを含め、ケアマネージャーさんと相談しながら、介護など各種医療補助の手続きや経済面の検討なども行います。
疾患の予防に対しても積極的で、
インフルエンザワクチンを毎年接種していますか?
車に乗るときはシートベルトをしていますか?
癌健診をいつも受けていますか?
疲労がたまりすぎていませんか?
気分が落ち込んで、何もやる気がしないと感じることはありませんか?
現在わずらっている病気に対する治療を続けていくだけにとどまらず、今後あらたに病気にならないように、予防医学や健康増進も考慮しながら、あなたの生活をサポートしていきます。
そして、避けては通れない、誰にも必ずいつかおとずれる死。
最期のお別れの時まで、できるだけ通常どおりの生活を送ったり、痛みなどの苦痛をできるだけ取ることをサポートしたいと、家庭医は考えています。
誰もが、長年にわたり、あなたやあなたの家族、地域のことをよく理解した真のかかりつけの町医者である家庭医が提供する医療が受けられる社会の実現を願っています。