この度、日本で初めて開催された英国Royal College of General Practitioners(RCGP/英国家庭医療学会)主催の指導医養成講習会に参加させていただきました。
英国における総合診療・家庭医療の歴史は長く、医療制度にしっかりと根ざした形で外来診療・訪問診療・地域包括ケアに多くのGeneral Practitioner(GP/家庭医)が従事し、医学生・研修医の間でもGPは大変人気のある診療科となっています。また、指導医資格の取得には教育に関する学習歴や実地での教育歴などの審査もあり、高いステータスと位置付けられています。
こうした、総合診療教育の厚い基盤のあるRCGPの指導医養成講習会に参加することができたことは、日本で家庭医療の教育に関わっている私にとって、滅多に得られない機会でしたし、実際に多くの気づきと学びが得られた貴重な日々となりました。
講習会には英国から教育に熟達した2名のGP指導医と上級指導医を目指す1名の若手GPが来日し、日本全国から集まった熱心な指導医ら約30名が合宿形式で5日間に渡って、総合診療における成人教育、教育手法、評価法、学習環境の整備、生涯学習、困難に直面した学習者の支援、リーダーシップなど数多の興味深いテーマで、参加者も活発に意見を出し合う対話形式の講義と少人数のグループワークが提供されました。
講習会会場と宿泊施設が一体化していたので、移動や食事などに気を遣わず、まさに缶詰状態の環境で研修に集中することができました。
特に、小グループに別れたロールプレイでの光景はとても印象的でした。先ず、一人の先生がプレゼンテーションを行い、その内容について別の先生が指導医としてコメントし、更に別の先生が指導医のコメントの内容や伝え方について指導医の指導医としてコメントし、更に更に英国の上級指導医から全体へのコメントが貰えるという、通常では有り得ない贅沢な状況が目の前で展開されていてとても痛快でした。
質も量も膨大な内容で使用言語も英語でしたので、シャイな私にとってとてもハードルの高いものではありましたが、親切で情熱ある講師陣とフレンドリーな参加者の皆さんのおかげで、最後まで楽しく受講することができました。
今は脳内が飽和状態で情報の整理が追いついていませんが、今回の講習会で学んだことは、工夫次第では実際の日本の医学教育の現場にも取り入れることができるほど、英知溢れるものでした。講習会に送り出してくれた仲間への感謝の気持ちを忘れず、得たものを現場に還元して教育の質を高めていきます。