2016年12月20日火曜日

「逃げるは恥だが役に立つ」に学ぶ家庭医の立ち位置

 

TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が年末の社会現象になりました。この番組のタイトルは、原作漫画の副題となっているハンガリー語のことわざ「Szégyen a futás, de hasznos.」を意訳したもののようです。「自分の戦う場所を選べ」つまり「自分の土俵で戦え」「自分の得意分野で勝負しろ」といった和訳が一般的に出回っています。
家庭医を名乗り、「何でも相談にのります」と言っている医師が、「専門外」と理由に診療を断る(逃げる)ことには勇気が要ります。症状の種類や疾患分野・患者さんの年齢や性別を問わずに対応することを使命としている家庭医にとって、診療を断ることはまさに、いわゆる「逃げ恥」そのものだからです。
しかし、家庭医が戦うべきでない土俵というものは確かに存在します。例えば、高次医療機関において可能な限り早期に緊急処置を要する患者さんのように、自身が診ることで、かえって患者さんの不利益になると判断される場合などです。「逃げるは恥だが役に立つ」ので、診たいけれど敢えて診ない方が良いと判断し、「断る」ことができることも、私たち家庭医にとって極めて重要かつ不可欠な能力のひとつなのです。

ところで、「自分の戦う場所を選べ」という「Szégyen a futás, de hasznos.」の邦訳が、タイトルの「逃げるは恥だが役に立つ」や、実際のドラマの展開と、いまひとつマッチしていないような気がしたので、試しにエキサイト自動翻訳で直訳してみた結果、「恥は、実行時に、役に立つ」と出ました。どうやら、語源には「逃げる」という意味は含まれていないようです。というわけで、調べれば調べるほど、この言葉の真相がますます分からなくなってしまいました。(もともと正解が用意されていないのかもしれませんが…)どうせ正解がないのなら勝手に思いっきり自分流に意訳してみました。「一時の些細な恥を恐れずに、患者さんの利益を最優先に考えて、それを実現するために前向きに突き進んで行けば、かならず成功を手にすることが出来る!」これまで通り、迷わずに邁進していく決意を新たにした次第です。

2016年12月18日日曜日

The 忘年会

忘年会…
1年の感謝の気持ちを互いに直接伝え合いながら、手抜きなく全力で馬鹿騒ぎをして、嫌な出来事もすべてを笑い飛ばしながら忘れてしまえる機会は、当法人にとっては何ものにも代えがたい最重要イベントに位置付けられている。
私の記憶が正しければ、2002年から現法人に所属して以来、14年連続で法人の忘年会には欠かさず参加させてもらってきた。
しかしながら、それは決して当たり前のことではなくて、病院に必ず要るお留守番部隊、つまり当直・夜勤スタッフの存在があってのこと…
で、遂に今年は自分に当直の順番が回って来たのである。
だよね。
これまで毎年忘年会に参加させていただいていた感謝の気持ちで粛々とお勤めしよう。
とはいえ、やはり何らかの形で忘年会に参加したい!
というわけで、各部署で忘年会の余興の稽古に励んでいるのを尻目に、私も独自に動画の前撮りをした次第である。




2016年12月15日、忘年会の当日。
事件です!

 当直医の代わりが見つかるのと同時に余興の代役のオファーが舞い込むという、状況を理解するのに戸惑うような、通常あり得ないことが起きたのである。

参加できるはずのイベントに突然参加出来なくなったのではなく、参加できないはずのイベントに突然参加出来るようになったのである。
しかも、全く準備していない役回り付きで…

もはや何が何だか分からないけれど、代わりに当直をしていただけることへの猛烈な謝意とともに、たとえ全然準備できていなくても全力のアドリブで余興の代役を務める覚悟を決めた。

お陰様で、本年度の職員の会の会長の大役を務める藤原学先生の雄姿を見届けることができ、何とか余興も乗り切ることが出来た。
ただただ、それぞれの発表を観て、審査結果に悔し涙すら流す職員もいる状況を見れば、各部署でどれだけ必死に余興の準備をしてきたのかは痛いほど理解できたし、そんな中に事前準備無しで混ざる後ろめたさと申し訳なさを感じもした。

来年こそ、忘年会の夜に当直医として過ごすのか? 忘年会の参加者として過ごすのかは分からないけれど、いずれにしても、手抜きなしで真剣勝負に挑むことだろう。



複雑に深まり続ける議論 ~第118回 FaMReF@コラッセふくしま~

2016年12月17日
晴天のいわき市から雪のチラつく福島市へ移動してのFaMReF

メインプログラムは、レジデント2名によるポートフォリオ発表会

今回の発表者は2名とも新人による初々しい生ポートフォリオ

いずれの事例も、1事例の中で 学びの機会が多く分野も広いものであるがゆえに、ポートフォリオとして提出する際のテーマの選択の段階から悩ましいところ…
しかし、それはそもそも当たり前のことで、患者中心の医療の方法を実践しようとするとき、家族志向型ケア、多職種連携、終末期のケア、高齢者のケア、コミュニケーション、プロフェッショナリズム、臨床倫理などに必要なスキルを絡み合わせながら駆使していくのが実際のところである

メンバーそれぞれが個々の個性と語彙を駆使してはりきって語りまくるので、グループディスカッションがやたらと白熱して、余裕をもって組んであるはずのタイムスケジュールが、結局はオシオシになった次第である


今年度ラストの「Cinemeducation」の題材は、「オデッセイ(The Martian)」 (2015)
ほぼ生還不可能という絶望的状況下で、人は何を思うのか?
火星に取り残されるということは実際には起きないだろうけれど、生きているのに相手に想いを伝える手段がないという状況は、現実でも起こりうるだろう
また、人は臨死状況でこの世をどう見るのか?
残された家族へのグリーフケアの裏側にある世界を垣間見ることができた



2016年12月4日日曜日

いわきで医療職を志す中学生達と戯れてみた ~医学教室 浜通り2016~

2016年12月3日、医療人を志す子供の夢応援事業「医学教室」のコンセプトに賛同し、法人総動員で中学生達を戯れてみました。
医学教室?
なんのこっちゃ?
これは、県保健福祉部の主催で、福島県の地域医療に貢献できる人材の育成を目的に医療人ネットワーク合同会社(ふくしま子供医科大学)が企画した福島県内の中学生を対象にしたイベントです。
2016年8月に県教育委員会が実施した「医療体験セミナー」に参加した南相馬・いわき両市の中学生13名が参加してくれました。
11月26日に、常磐病院で高度先進医療を見学し、その役割を学んできてくれたメンバーなので、今回は、医療のもう一方の側面 プライマリ・ケアの意義と役割を体感してもらうことに尽力しました。


先ずは、病院の各部署で多職種がどんな業務をしているか探検ツアーをしてもらった上で、直に多職種のスタッフから各職種の詳細な業務内容の解説とディープな進路相談!
嬉しいことに、医師を志す中学生も数人いたので、医師になるために必要な志について直伝し、最大限のエールを送りました。
そんなこんなで、あっという間に午前中が過ぎ去りました。


さて、気怠い土曜の午後も寝かせませんよ!
午後のセッションは、医師による急性疾患に対する治療は奏功したものの、それだけでは発症前の日常生活動作獲得にまでは至らなかった廃用症候群の患者さんのケアをどうするか?という「重~い」テーマに対して、グループ・ワーク形式でみんなに対峙してもらいました。
正直、ハードルが高いかな?と思いながら見守っていたのですが、中学生たちの発想は、凝り固まった僕等のつまんない発想とは一線を画し、斬新かつ大胆でありながらも、ひじょ~に利用者目線で、私たち医療従事者、特にベテランと呼ばれるほど経験年数を重ねたスタッフほど忘れがちな甘酸っぱくも情熱的な想い蘇らせてくれました。
で、最も驚いたことは、地域包括ケアシステムの要素(医療・介護・住まい・介護予防・生活支援)全てに関する解決策をグループ・ワークを通して捻出してくれたこと…

「医療は医学の社会的適応である」という武見太郎先生(元日本医師会会長)の名言のとおり、理系に分類される科学としての医学のプロフェッショナルという側面と、社会学 つまり 患者・家族・地域(時にスタッフ間)とのコミュニケーション能力を求められる医療人の特殊性と面白さ(旨み)を感じ取ってくれたものと期待しています。




2016年12月3日土曜日

うーんマンダン 「糖分は当分控えましょう!」 ~糖尿病教室~

2016年12月1日、かしまDMサポートチーム主催の糖尿病教室の講師を務めさせていただきました。

日々の診療では様々な制約があるので、なかなかできないけれど、絶対にやるべきこと・・・
それは、ひたすら聴くこと!
今回は、敢えてレクチャーを準備しませんでいた。
と言えば格好いいですが、準備する時間も能力も無かったのですが…
与えられた20分をほぼ全て質疑応答に充てることにしました。

で、出るは出るは…
患者さん達の素朴な疑問の蓄積の多さに驚愕しつつ、その想いの広さと深さを教えていただき、感謝感謝の35分間(予定の15分オーバー)でした。

後日、思いがけず ご丁寧なお礼状まで頂戴し、全然 準備していなかった後ろめたさと、聴くことの重要性を再認識した次第です。


2016年11月28日月曜日

「死」と「笑い」の融合 ~かしま病院 平成28年度 院内講演会「Death Education」~

社団医療法人 養生会 かしま病院 平成28年度 院内講演会の第2弾は…
埼玉県秩父郡 国保町立小鹿野中央病院の内田望先生による「Death Education」でした。

おもしろおかしく旅立つ
 ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~

日時:平成28年11月25日(金) 17時30分~18時45分
場所:社団医療法人 養生会 かしま病院 コミュニティーホール

よりよく生き、よりよく逝く ために、終末期医療に携わる医療関係者はもちろん、超高齢社会を生きるすべての皆さんに考えていただきたいテーマですので、最高に“おもしろおかしい”講師をお招きしました。



いきなり内田先生の特技であるマジックで幕を切った講演。
軽妙でユーモアあふれる語り口。
話が進むにつれて、私たちの日常で敬遠されがちな「死」と、対極にある「笑い」が、徐々に一つのものとして融合していくのを感じました。

思えば私は、医師として患者さんの看取りに関わる時、その患者さんにとって重要な役割を担うものと自惚れに近い感覚を持っていたかもしれません。
しかしながら、主役である患者さんの長い人生劇場において、所詮 医療従事者はほんの脇役でしかないことを認識することの重要性を教えていだたきました。

ところで皆さんは、自分の死について考えたことがあるでしょうか?

例えば、どんな病気で死にたいですか?
①癌
②心筋梗塞
③脳卒中
④老衰
⑤その他
⑥私は死なない

⑥を選択された方は、今すぐ病院に行った方が良いそうです。(笑)
賛否両論はあると思いますが、私は①で死にたいです。
最も計画的に人生の最期を迎え易いからです。
苦痛の緩和方法も他の死に方に比べるとある程度確立されつつあります。
お世話になった方々にちゃんとお礼の気持ちを伝えられる可能性も高いでしょう。
④も穏やかで捨てがたいし、内田先生の研究では一般的に一番人気らしいのですが、最期にずっと寝ていたり、多くは認知症をともないやすいため、お世話になった方々に「あんた誰?」ということも…

人は終末期に以下のことを願うようです。
①愛されていることを感じたい
②自分らしく生ききりたい
③希望をつなげたい
④惜しまれて死にたい
⑤苦しまないで死にたい
⑥心癒されて平安に死にたい

私見ですが、病院以外の住み慣れた環境で最期の時を過ごすことは、上記の⑤以外のすべてを叶えやすいように思います。

「Death Education(死の準備教育)」とは
自分に与えられた死までの時間をどう生きるかを考えるための教育
死に対して主体的に考えるための教育
        アルフォンス・デーケン「生と死の教育」岩波書店 2001

死の多くが病院という場所で起きる現代。
死が医療関係者以外の皆さんにとって一般的に身近でなくなった現代。
Death Educationは容易ではないかもしれません。

しかし、ご講演の中で、自宅や介護施設など、病院以外の場所で看取りを経験したり、Death Educationを受けた ご家族や介護スタッフは、看取り後に、人の死について肯定的に考えるようになり、人の死への恐怖心が緩和され、自分の死に方についても積極的に考えるようになるという研究結果が示されました。

「ああ、これでいいんだ!」
これまで通り、バンバン個々のご意向に沿った看取りをサポートし、いい看取りをたくさん経験していくことが、患者さん、ご家族、スタッフ、自分自身にとって、最高のDeath Educationになることを確信しました。
そして、そんな役回りが出来る医療・介護職に身を投じている私たちは最高にやりがいのある職業に就いていることを再認識しました。
勿論、主役ではなく、「笑い」に火を付ける名脇役としてですが…

深い悩みは深い学びの種 ~第 117 回 FaMReF @ 郡山~


月例のレジデント・フォーラム

人事異動による自身の転勤を、担当患者にどう伝えるか?
病状が不明確な中、病状説明に手間取った時どうするか?
独居患者の在宅看取りに必要なものは?
社会的問題に起因する精神的問題へのアプローチは?
地域包括ケアに関わる多職種ワークショップを企画・運営した成果をどう評価・報告するか?

指導医にとってもなかなか悩ましいテーマが続々…
しかし、深い悩みは深い学びの種
いかにも家庭医らしい学びの示唆に富んだ事例をもとに活発な意見交換がなされました。

その他、韓国、英国交換留学の報告と恒例のCinemeducationが行われました。


2016年11月7日月曜日

秘密結社が征服する地域医療 ~2016年度 第6回 いわき志塾「医療」~

2016年11月5日(土)、2016年度 第6回 いわき志塾が開催されました。

震災のあった2011年度から公益財団法人 東日本大震災復興支援財団の「福島こども力プロジェクト」の支援を受けて立ち上げられたいわき生徒会長サミット!
もともと「30年後のいわきのリーダーを育てよう!」ということで始まった企画でしたが、震災直後に大多数の子供たちが一時いわきを離れたという現実に直面した時、いわき市教育委員会の先生方は「これでは未来のいわきはない」と危機感を持ち、もっともっと、「いわきじゃなくちゃダメなんだ!」と、いわきを熱く愛する若者を育てていかなければならないと痛感し、ますます熱意をもってこのプロジェクトを推進しているそうです。
4期目に突入した2014年度から、生徒会役員でなくとも、志さえあれば参加は自由となり、いわきグローバルアカデミー「いわき志塾」と命名されました。
各界で働く大人を講師に招いて、小グループ9班に分かれて、計9名の講師のうち、2名の生き様についてレクチャーを受け、次のセッションでは、インプットされた情報から得た個々の考えを、医療人2名の共通点などを考慮しながらグループ内でアウトプットしていきます。
最後のセッションでは、各グループが参加者全員に向けて、たった7分間という限られた時間内で伝えたいことをプレゼンするという構成です。

今回のテーマは「医療」ということで、一昨年度に引き続き、講師として中学生達と絡ませてもらいました。


9名の講師陣。
日々医療に携わっているという共通点はあるものの、その職種や業務内容・経歴は、あまりにも多様です。


奇人変人の話にも真剣に耳を傾けてくれる、素直な子供たち。


パワーポイントや動画撮影、寸劇などを取り入れて、他の参加者に、自分たちが学んだことを、短時間で分かりやすく伝えるための準備。
当然、講義を終えて油断している講師陣にも容赦なく無茶振り的な協力要請が来ます。


子供たちの突飛な発想には感心させられました。
まさか、地域医療征服をたくらむ秘密結社の幹部として料理してもらえるとは・・・(感涙)



準備したはずのパワーポイントが消えてしまうトラブルにもめげずに、生の演技力だけで熱い想いを伝えきってくれたチームも・・・


セッション後に提出された子供たちのワークシートを見て、あらためて若者の瑞々しい感受性を認識し、わたくしの奇人変人ぶりが伝染しないことを祈るばかりです。
いずれにせよ、子供たちの活力や斬新な発想、エネルギーに毎年勇気をもらっています。


手荒な講師お見送り・・・


2016年10月30日日曜日

アレックスから学ぶ いわきの地域医療のあるべき姿

 2016年10月20日から11月11まで、メキシコからの交換留学医学生のJosé Alejandro Guerra(通称:アレックス)が福島に滞在し、県内各地に点在する地域・家庭医療学講座の教育拠点を見学・実習しています。勿論、かしま病院にも 10月25日から29日まで滞在し、私たちから多くのことを学び、私たちに多くのことを残して行ってくれました。
 彼の話によると、メキシコの医療システムは、日本と異なり、一次・二次・三次医療圏が明確に区分されているようです。一次医療圏では、予防医学を含む高頻度な状況に対する基本的な医療サービスが提供されます。扱われる健康問題は全体の80%程度に及び、国内全域の一次医療をカバーするべく、家庭医のみならず、アレックスのような医学生たちも、一次医療圏の戦力として第一線で活躍しているようです。二次医療圏は、一次医療を経て、循環器科、神経内科、腎臓内科、消化器科などのように、より専門的な診断・治療・ハビリテーションを必要とする患者に対し、総合病院や地域完結型の病院、小児専門病院や周産期医療センターなどで提供されます。三次医療圏は、国立医療センターや国立衛生研究所などに代表される先進技術を提供する特別に専門的な病院のネットワークです。 ここでは、二次医療圏の病院から紹介された、ごく稀な疾患の患者やハイリスク患者、より重症の患者の治療が行われます。メキシコでは学生も総動員で一次医療を支えているという事実と、アレックスの医学知識と医療技術の高さに驚かされました。
 しかし、アレックスとのやりとりの中で、私はあることに気づきました。私は学生であれ医師であれ見学(のみ)は認めない主義です。この地を訪れた以上、ただ見るだけでなく、いわきの地域医療に何らかの形で参加してもらっています。その考え方は、メキシコの医学教育や一次医療の現場に通じるものがあるように思いますし、「このまま続けていけばよい」と後押しされた気持ちになりました。
 よく呑み、家庭医療への熱い想いを語るアレックスに自分と同じ匂いを感じつつ、自分とは全く違い小顔でイケメンの彼の輝かしい前途を確信しました。
 




2016年10月16日日曜日

只見―いわき 往復6時間の距離を超えて… (第116回 FaMReF)



講座月例の Family Medicine Resident Forum(FaMReF)
本来は、月に一度 講座の指導医や研修医らが一堂に会して学ぶ機会です。
とはいえ、広大な福島県内ですから、西端に位置する只見と東端に位置するいわき間の移動は困難を極めます。
半日の勉強会への移動に半日かかるという状況を補うために、今回は通常の教育や打ち合わせ等に活用しているTV会議システムを活用して、只見開催のFaMReFに いわきから参加しました。
当日、かしま病院は電源システム点検のために停電という状況だったので、急遽バタバタと自家発電からTV会議システムに電源を引いて、なんとかフォーラム開始に間に合わせることができました。
協力してくださったシステム管理の皆さんに感謝!

直接参加が原則のFaMReFですが、県内各地の拠点では、留守番部隊も要るわけで、本来参加できなかったメンバーも、リアルタイムでフォーラムの内容を確認できて、ディスカッションに参加できることは、とても有用で、今後、この方法も積極的に取り入れていきたいと思いました。

2016年10月15日土曜日

超高速! 参勤交代 リターンズ ~東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修 2017年度地域医療研修説明会~

2016年10月14日の午後、臨床研修医の地域医療研修先として いわきを採用してくださっている東京慈恵会医科大学に、研修内容説明のために半日 日帰りの超高速 参勤交代を実行して参りました。
毎年恒例になりつつあるので、リターンズって感じです。
それにしても、同期の医師だけで40名以上って…
一堂に会すると壮観です。
「やはり都会は人口も医師数も半端ねぇ~な~」
でも、だからこそ、そうでない環境に身を置いて学んで欲しい!
そんな想いを熱く語りましたが、都会の若手医師から見ると、田舎のキモイおっさんですから、生温かいというか冷ややかな目線が痛いこと痛いこと…
それでも、いわきを選択してくれた先生方には、責任をもって濃厚な教育を提供します。
う~ん、やっぱキモイ…


2016年10月13日木曜日

おもしろおかしく旅立つ ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~ (院内講演会「Death Education」のお知らせ)


社団医療法人 養生会 かしま病院 平成28年度 院内講演会の第2弾は…
大好評を博した齊藤道也先生による第1回「禁煙のすすめ」に引き続き、
内田望先生による「Death Education」です。

おもしろおかしく旅立つ
 ~人生の最期に「よかった」と言える生き方~

日時:平成28年11月25日(金) 17時30分~18時45分
場所:社団医療法人 養生会 かしま病院 コミュニティーホール

よりよく生き、よりよく逝く ために、終末期医療に携わる医療関係者はもちろん、超高齢社会を生きるすべての皆さんに考えていただきたいテーマですので、最高に“おもしろおかしい”講師をお招きします。ご興味のある方はどなたでもお越しください。



2016年9月29日木曜日

複数の健康問題にどう対応するか? ~実践家庭医塾~

本日の実践家庭医塾のテーマは、「複数の健康問題」入院を契機に受診医療機関を整理した事例
専攻医の経験事例をもとに、参加者全員で家庭医の専門性や役割について省察した。
多種の既往疾患があり、日常生活動作能力の低下のある患者で、中心となるケアの担い手が不在である方が緊急入院した際に、入院を契機にケアの窓口を一本化した事例を通して、家庭医が介入することにより、医療過誤リスクの低減、医療費・ポリファーマシーの減少、入院リスクの低減、入院となった際の必要十分な情報提供、不要な検査や入院期間の短縮などの可能性が示唆された。
また、原因はともあれ、既に経口摂取困難、意思疎通困難、寝たきり状態と、日常生活動作のほとんどに介護を要する状態である場合、個々の疾患の診断・治療に関して、どこまでの医学的介入をするべきか?
こういった場合、多くの医学的問題が複雑に絡みあい、悪性疾患の有無に関わらず、臨床的に予後が悪い、つまり終末期にさしかかっていることがほとんどである。
ご本人・ご家族のご意向を鑑みて『患者にとって最善』と思われる終末期の意思決定をサポートしつつ、家族が肉親を看取ることを受容できるように支援していくことも私たちの重要な役割である。

2016年9月26日月曜日

ポートフォリオを用いた医学教育 (第115回FaMReF)

 2016924日 伊達市の保原中央クリニックで、第115回 家庭医療レジデント・フォーラムが開催されました。
 日本プライマリ・ケア連合学会では、家庭医育成のための医学教育の手法として、ポートフォリオを導入し、家庭医療専門医コースの専門医試験にも活用しています。
 ところで、ポートフォリオとは何でしょうか?
 ポートフォリオの本来の意味は「書類を運ぶ平らなケース」です。現在では、特に美術系の分野で「自分の能力を周囲に伝えるための自己作品集」という意味合いで使われ、これまでの仕事や活動の成果を自らの意志で1冊にファイルしたものを指します。
 福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座でもポートフォリオを用いた医学教育を実践しています。今回のフォーラムでも、家庭医療専攻医(家庭医療を学ぶ後期研修医)が作成したポートフォリオを題材に深い議論が加えられました。
 ポートフォリオを用いた学習とは、学習者が診療における断片的な経験を積み重ねていくという偶発的経験の蓄積のみに依存するのではなく、学習者が自らの意思に基づいて、あらかじめ研修すべき内容の全体(家庭医に必要なスキルとマインドなど)をおさえ、「何のために何をやりとげたいか?」「この研修で何を獲得したいのか?」という自らの目標を定め、自らの意思で前向きに学ぶことを援助する学習方法です。つまり、研修期間の終了間際に、研修経験を振り返りながら各項目の診療経験をまとめていく症例報告とは本質的に異なり、研修開始当初から、目標を設定し、エントリーできる事例を意識しながら研修を行います。したがって、学習者は「今のこの経験が、自分が目標とする家庭医になるために必要なスキルのうちの、この領域を学んでいる」ということを常に意識して診療にあたることになります。

 ポートフォリオを創る際に学習者は、その領域で自らが学んだことや獲得した臨床能力を明示し、自らの能力を周囲に理解してもらえるよう配慮します。ポートフォリオを通して、自身の思考過程や、診療において独自に工夫したこと、そして、今後も継続的に成長していくための方略が備わったことが他者に伝わるように記載・作成します。

2016年8月28日日曜日

いわき開催 「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2016」 (第114回 FaMReF)


2016年8月27日・28日、夏も終わりに近づいた週末の両日。
2006年から福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座の主催で毎年おこなわれている「家庭医療サマー・フォーラム in ふくしま 2016」が開催されました。
栄えある開催地となったのは、昨年に引き続き2年連続で我らがいわき市!
しかも会場はかしま病院。
遠くは長崎県からの訪問に、ホスト&ホステス一同 歓迎の舞で「おもてなし」
 
さあ、初日のメインプログラムの企画を任されたのは何を隠そう わたくし!
「どれだけチャレンジャーな主催者なの?」とぼやきつつ、無い知恵絞って考えたのが、

「プロフェッショナル 総合診療の流儀」

NHKの人気番組「プロフェッショナルの流儀」を参考に(決してパクってはいません 笑)、患者中心の医療の方法の実践など総合診療の流儀を貫いた結果、困難な局面から光が差し(明確なターニングポイントの実感)、その瞬間から未来への継続的成長を確信することが出来た 現指導医陣が経験した幾つかの事例を共有し、参加者に総合診療の専門性を深く学んでもらおうと目論みました。

「本当にケアするべきなのは母親だった」 (家族もケアの対象)

「本当の受診理由を見つめる」

ワン・フレーズにしてしまうと、総合診療医のピアコンピテンシーを学ぶ わたくしたちにとって見慣れた感じの教訓ではありますが、プレゼンに協力してくれた指導医らによる実体験を目の当たりにする臨場感と、もがきあがいた結果 たどり着いた省察が深過ぎて、結果として上級編に仕上がったかな~? と思い、今回参加してくださった医学生を含む初学者に どこまで伝わったかは不安が残るところではあります。

更に…

「診断は単なる手段の一つ、目的は何?」

などと、医師の仕事の核心を爆破しかねない過激な内容で締めてしまったわたくし。
益々わけの分からない内容になりました。
しかしながら、診断にはじまり診断に終わる医師の仕事を見つめ続けてきたからこそ見い出せた小生の「診断」というものへの気づき、そして「診断」の意味合いと深さと重さと、しかも「診断」には柔軟な軽やかさも求められることが、少しでも参加された皆さんに伝わったなら嬉しいです。




「家庭医は夜つくられる」
というわけで、会場を勿来海水浴場至近の宿舎に移し懇親夕食会。


二次会は「土曜だから夜更かし💋」と題して、司会に「マ〇〇デラックス」が登場!
熱くて暑くて、ぶ厚い夜は更けていくのでした。



さて、どこからが2日目なのかは定かではありませんが、朝起きると週明けに台風が接近予定の勿来海水浴場の荒々しい波を眺めながら ちょっとだけ砂浜を全力疾走。
しかし、このぐらいの波は それほどでもないことを後に思い知ることになるのでした。


さて、2日目のメインプログラムは 「家庭医の頭のナカ」
家庭医の頭のナカ つまり思考回路を丁寧に深みまで解剖し、理解を深めるレジデント渾身企画のワークショップ!
それぞれの役割に気合が入り、参加者のレベルの高さ故、鋭い意見の連発に深酒による眠気も吹っ飛びます。




最後のセッションは葛西主任教授によるCinemeducation
今回の題材となった映画は「マーヴェリックス/波に魅せられた男たち」
今朝の勿来の波とは比較にならないぐらいの巨大な波に挑む主人公の姿に、息を飲んで純粋に観入ってしまいました。
「人は何故、挑み続けるのか?」
「自分は何故、ずっとテキトーなのか?」
それでいて 「つらい! 死ぬほど つらい!」と文句を言いながらも「何故 走り続けるのか?」
あらためて考えながら、サマー・フォーラムのエンディングを迎えるのでありました。


全国から足を運んでくださった参加者の皆さんの目に「いわき」がどのように映ったのか?
少しでも楽しんで、学んでいただけたのであれば本望です。