家庭医を名乗り、「何でも相談にのります」と言っている医師が、「専門外」と理由に診療を断る(逃げる)ことには勇気が要ります。症状の種類や疾患分野・患者さんの年齢や性別を問わずに対応することを使命としている家庭医にとって、診療を断ることはまさに、いわゆる「逃げ恥」そのものだからです。
しかし、家庭医が戦うべきでない土俵というものは確かに存在します。例えば、高次医療機関において可能な限り早期に緊急処置を要する患者さんのように、自身が診ることで、かえって患者さんの不利益になると判断される場合などです。「逃げるは恥だが役に立つ」ので、診たいけれど敢えて診ない方が良いと判断し、「断る」ことができることも、私たち家庭医にとって極めて重要かつ不可欠な能力のひとつなのです。
ところで、「自分の戦う場所を選べ」という「Szégyen a futás, de hasznos.」の邦訳が、タイトルの「逃げるは恥だが役に立つ」や、実際のドラマの展開と、いまひとつマッチしていないような気がしたので、試しにエキサイト自動翻訳で直訳してみた結果、「恥は、実行時に、役に立つ」と出ました。どうやら、語源には「逃げる」という意味は含まれていないようです。というわけで、調べれば調べるほど、この言葉の真相がますます分からなくなってしまいました。(もともと正解が用意されていないのかもしれませんが…)どうせ正解がないのなら勝手に思いっきり自分流に意訳してみました。「一時の些細な恥を恐れずに、患者さんの利益を最優先に考えて、それを実現するために前向きに突き進んで行けば、かならず成功を手にすることが出来る!」これまで通り、迷わずに邁進していく決意を新たにした次第です。