講座月例の家庭医療レジデント・フォーラム
県内各地の診療・教育の拠点持ち回りで開催されるわけだが、いわきから時間的にも距離的にも最も遠く風土も異なるのは・・・只見である。
せっかくの長旅なので、前泊。
会津磐梯山で有名な猪苗代も、会津若松をも素通りし、一気に奥会津へ突入!
只見川沿いの川辺の文化を感じながらクネクネ南下していくと、水清き自然首都「只見」へ
只見川と合流する伊南川の支流の中で釣り人に人気が高い澄んだ水の黒谷川のほとりを散策すると、只見を肌で感じることができる。
そして、明日の会場、朝日診療所。
新しい建物とはいえ、風雪に耐え、毎年越冬している風格がある。
夜には、地元のファカルティ、レジデントらが前夜祭的なウェルカム・パーティを企画してくれた。
会場は、これまで多くの講座メンバーや、医学生、臨床研修医、国内外からのゲストの舌を唸らせ、胃袋を満たしてきた居酒屋「もとじ」
残念ながら、今月で閉店とのこと。
名物「ユビヌキ(大動脈)」もひとまず食べ納めさせていただいた。
只見町の朝は「牧場の朝♫」の町内放送で始まる。
高地トレーニングを兼ねた朝ランも とても快適である。
さて、ようやく本題のFaMReF開始
本日、町内で駅伝大会が開催されるなどご多忙の中、目黒吉久町長さんがご挨拶に駆けつけてくださった。当講座の診療・教育活動に深いご理解とご協力をいただきありがたい限りである。
本日の研修医の振り返りでは、様々なテーマが挙がり、議論が膨らんだ。
外国語の名著をいかに活用しやすい形で日本語翻訳するか?
文化や背景が異なると、直訳しても著者の意図は理解できないことは多いが、過度に意訳してしまっても正確には伝わらない。
語学力だけでは成し得ない、患者中心の医療の方法を深く理解した者にしかできないプロジェクトであることを再認識し、レジデントはその責任と役割を自覚した様子だった。
診療外に医療相談を受けたらどうするか?
それは、職員かも知れないし、家族かも知れないし、知人や行政の方かもしれない。
個人的には、勤務中であろうと、プライベートであろうと、医療資源として気軽に利用してもらいたいという思いが強い。
しかしながら、それが通常診療の妨げになってはいけないし、プライベートを侵食するものになっても困る。
だから「勤務以外の医療相談は一切応じない」と決めてしまうという方法もあるだろう。
でもそれでは、地域に生き、地域で働くことができる医師の育成に携わる者としては、とても寂しく物足りなく感じる。
当講座で学ぶレジデントには、そこのところをバランスよく対応できる人材に育ってほしいと強く思う。
多忙の中、どうやって振り返りの機会を確保するか?
人材が潤沢でない現状の切実な問い。
しかし、そんな中でも逞しく学び育っている先輩・同僚からの具体的なアドバイスの数々は、きっとマニュアルのない世界なんだろうと思う。
「忙しい」を言い訳にしない質の高い診療・教育の場を構築していけるように、現場で自身のゼンマイのネジを巻いて無い知恵を絞ってみよう。
患者本人への癌告知を拒む家族・・・
未だ日本では多いシチュエーション。
もちろん、必ずしも告知するのが正しいとは限らないけれど、主治医として告知がケアに有用と判断される場合に、そのことを上手に家族に伝え、理解していただけるかは根気強い関わりに尽きると思う。
そして、もしも どうしても告知に至らない場合でも、個々の条件下で可能な限り患者中心であるように、あきらめずにマネジメントを続けていくことが、私たちに求められることなのだろう。
それにしても、会場の窓から見える景色には、いちいち癒される。
まるで切り取った絵画のようである。
そして、差し入れのトマト!
形がいびつで売り物にないもの ということだが、とても甘くてシャリッという歯ごたえがたまらない。
本日のメインの振り返りのテーマは、高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)をいかに診療に活かすか?というもの。
ともすれば、CGAを行うことが目的になってしまいがちだが、CGAがケアの内容を決定するための有効な判断材料になり、その結果が良いものになってこそ意味がある。
現場での疑問をもとに、CGA自体を批判的に吟味することも重要であろうという議論にまで至った。
いずれにしても、高齢者を総合的に機能評価してみよう! という発想は、高齢者のケアにおいて絶対に必要なプロセスであると思う。そこには必ず多職種連携への道筋が付帯してくるし、疾患への単なる医学的介入だけでは決して太刀打ちできない近道のない世界が存在することを教えてくれるから・・・
診療所から見える浅草岳
さて、一泊だけでは堪能しきれない只見。
参加者の安全な移動を考慮して冬場のFaMReF開催は自粛されているが、個人的に今度は 冬(豪雪)の只見を訪れてみたい。
(丸坊主なので実際は無い)後ろ髪を引かれながら只見をあとにした。